雇用ステージごとの障害者雇用の課題と取り組みおよびその成果を調査

企業が障害者雇用に取り組むにあたっては、最初に、障害者雇用に取り組む目的や方針を明確にしておくことが重要です。経営層を含めた会社としての方針や意思を決定し、その方針に沿って全社で進めることで、法的義務の達成だけでなく、定着や戦力化、企業全体への貢献などの価値創出に繋げることができます。 一方で、障害者雇用に取り組む企業においては実際雇用の検討段階から課題を抱えている企業は少なくありません。
そこで、今回は、社内意思決定~受け入れ環境や定着ステージ、と障害者雇用におけるステージごとの課題を明らかにし、それらに対して企業が具体的にどのような取り組みを行っているか、そして取り組みによって得られた成果を調査しました。

調査概要

調査名称 障害者雇用の取り組みと成果に関する調査
調査手法 自社取引先に対するインターネットリサーチ
調査対象者 障害者雇用を実施している全国の企業担当者
【有効回答者】389名
調査対象者の内訳
役職:
経営者・役員(5.4%)、本部長・事業部長・部長(12.6%)、課長(25.2%)、係長・主任(21.6%)、一般・その他(35.2%)
役割・立場:
採用担当(障害者採用兼務)(56.3%)、障害者採用選任担当(13.1%)、雇用管理者(8.5%)、ダイバーシティ推進(5.7%)、現場マネージャー・教育係(4.6%)、社内カウンセラー等(2.3%)、定着担当(1.9%)、人材開発(1.7%)、その他(5.9%)
従業員規模:
100人以下(8.2%)
101人以上~200人以下(14.1%)
201人以上~300人以下(8.2%)
301人以上~500人以下(10.0%)
501人以上~1000人以下(20.1%)
1001人以上(39.3%)
業種:
メーカー(24.2%)、IT/通信(13.6%)、金融(10.5%)、建設・プラント・不動産(9.8%)、商社(6.9%)、その他(35.0%)
調査期間 2022年8月22日(月)~8月28日(日)
実施主体 パーソルダイバース株式会社(旧パーソルチャレンジ株式会社)

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所記載例:パーソルダイバース「障害者雇用の取り組みと成果に関する調査」

調査結果

1. 障害者雇用におけるステージごとの課題

雇用ステージを「社内意思決定ステージ」、「採用ステージ」、「受け入れ・定着ステージ」の3つに分けたところ、8割の企業が雇用の検討段階から課題を抱えていることがわかった。雇用方針が決まれば、実際の採用ステージに移るが、「障害者採用時に何らかの課題がある」企業が9割と、その割合がさらに大きくなっている。業務の創出や求める人材を採用する段階において、課題を抱えている様子がうかがえる。続いて、採用活動の前後に並行して行われる「受け入れ環境の整備」や、「定着段階に何らかの課題がある」企業は7割に上った。障害のある社員の入社時や就業において、職場定着や活躍のための環境作りなどで様々な課題が顕在化し、頭を悩ませている様子がうかがえる。

項目 人数 割合(%)
1.社内意思決定ステージに課題がある 314 80.7%
2.採用ステージに課題がある 355 91.3%
3.受け入れ環境や定着ステージに課題がある 283 72.8%

n=389

2.ステージごとの課題における具体的な内容

障害者雇用におけるステージごとの課題における具体的な内容をまとめたものである。

1.社内意思決定ステージに課題がある(n=314)
選択肢(複数回答) 人数 割合(%)
配属先の受け入れや管理上の負担増 185 58.9%
会社全体の雇用理解促進 181 57.6%
雇用目的・役割の整理、方針の作成 85 27.1%
雇用にかかるコストの増加 39 12.4%
2.採用ステージに課題がある(n=355)
選択肢(複数回答) 人数 割合(%)
採用時における適性や能力の把握 219 61.7%
新たな職域、業務の創出 178 50.1%
障害者人材の量的・質的確保 116 32.7%
採用対象の拡大 62 17.5%
人材要件の明確化 61 17.2%
採用経験・リソースの不足 35 9.9%
3.受け入れ・定着ステージに課題がある(n=283)
選択肢(複数回答) 人数 割合(%)
職場の安全面の配慮 83 29.3%
人事制度(雇用条件、評価指標、キャリアパス) 76 26.9%
健康支援、マネジメント 70 24.7%
業務改善、効率化、標準化など 64 22.6%
職場適応・定着 61 21.6%
はたらき方の多様化への対応(テレワークなど) 36 12.7%
設備・施設・機器の改善 32 11.3%
社員の高齢化への対応 31 11.0%

3.障害者雇用課題に対する取り組み

障害者雇用における課題に対する取り組みについて様々な回答を、採用から就業から定着までの過程ごとに、「1.採用活動における工夫」、「2.業務やプロセスについての工夫」、「3.定着支援・マネジメントの工夫」、「4.柔軟なはたらき方のための環境整備」の4つのグループにまとめたものである。

項目 人数 割合(%)
1.採用活動における工夫 264 67.9%
2.業務指示やプロセスについての工夫 320 82.3%
3.定着支援・マネジメントの工夫 255 65.6%
4.柔軟なはたらき方のための環境整備 168 43.2%

n=389

4.取り組みにおける具体的な内容

障害者雇用の課題に対する具体的な取り組みをまとめたものである。

1.採用活動における工夫(n=264)
選択肢(複数回答) 人数 割合(%)
障害者雇用専門のエージェント活用 148 56.1%
所属部署上長や教育係の面接同席 107 57.6%
インターンシップ、職業体験の実施 73 27.7%
採用コストを管理部門が負担 59 22.3%
採用可能枠の事前確保 45 17.0%
面接の質の担保と面接フロー標準化 41 15.5%
2.業務指示やプロセスについての工夫(n=320)
選択肢(複数回答) 人数 割合(%)
業務上の配慮(内容、量など) 226 70.6%
業務指示内容の明確化 188 58.8%
能力が発揮できる業務や機会の創出 132 41.3%
作業工程の単純化・業務の見える化 119 37.2%
体調や業務状況による柔軟な配置転換 85 26.6%
コミュニケーションツールやシステム等の導入 67 20.9%
3.定着支援・マネジメントの工夫(n=255)
選択肢(複数回答) 人数 割合(%)
定期面談の実施(体調・業務・要望など) 166 65.1%
D&Iに対する社内理解促進 100 39.2%
外部支援機関との連携 96 37.6%
メンター、ジョブコーチ等の配置 94 36.9%
健康管理等の相談支援体制の確保 59 23.1%
雇用管理に対するマニュアル等の整備 30 11.8%
4.柔軟なはたらき方のための環境整備(n=168)
選択肢(複数回答) 人数 割合(%)
労働時間の配慮(短時間勤務、フレックス制など) 110 65.5%
休暇取得への配慮 88 52.4%
休憩や仕事に集中できるスペースの確保 38 22.6%
柔軟なはたらき方を実現するインフラ整備 37 22.0%

5.障害者雇用の取り組みによる成果

障害者雇用の取り組みが「企業活動に貢献しているか」については、7割が「そう思う」と回答。

n=389人、障害者雇用を実施する企業担当者

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「企業活動に貢献している」と思う理由
(n=272人)
選択肢(複数回答) 割合(%)
多様な人材の採用拡大 52.6%
D&Iの浸透・理解促進 34.9%
企業のイメージアップ・価値向上 29.8%
助け合いの風土醸成 23.9%
業務最適化・効率化 22.4%
戦力となる人材の確保 22.4%
業務アサイン、業務指示の改善 19.1%
サステナビリティ経営(SDGs/ESGなど)の評価 11.8%
会社への満足度・仕事に対する意欲向上 10.7%
従業員がいきいきとはたらいている 10.7%

調査結果考察

障害者を雇用することの意義および負担を想定することがまずは重要

雇用ステージにおける社内意思決定ステージに課題を感じている企業は8割にものぼる。
企業が障害者雇用に取り組むにあたっては、最初に、障害者雇用に取り組む目的や方針を明確にしておくことが重要であると考えられる。経営層を含めた会社としての方針や意思を決定し、その方針に沿って全社で進めることで、法的義務の達成だけでなく、定着や戦力化、企業全体への貢献などの価値創出に繋げることができるだろう。

障害者雇用を推進するための取り組みは企業活動に貢献している

約7割の企業が障害者雇用を推進するための取り組みが企業活動に貢献していると感じていることがわかった。
これまでは特定の障害特性や能力、雇用形態などに採用ニーズが集中し、偏りが見みられたが、採用対象を拡大すると同時に、障害者が持つ多様な能力や個性を活かそうとする動きが出てきているといえよう。
さらに、障害者への作業工程の単純化・業務の見える化やコミュニケーションツールやシステム等の導入などの業務改善や業務体制の整備をより積極的に進めることで、障害のある社員だけではなく、会社全体の業務の最適化・効率化への効果も一層期待できるだろう。

調査レポート資料

※調査結果をまとめた資料を提供しています。下記よりダウンロードいただけます

障害者雇用の取り組みと成果に関する調査[PDF]