社会や企業の変化が、障害者個人のはたらく意識に与える影響は?

2023年に改正された障害者雇用対策基本方針にて、事業主は雇用の「質の向上」に取り組むことが明記されました。2024年8月に障害者雇用に取り組む企業に対して実施した、企業の雇用目的に関する調査においても、雇用の方針や目的が変化しつつあることがわかっています
そこでパーソルダイバースでは、障害者雇用を取り巻く社会や企業の変化が障害者個人のはたらく意識にも影響しているかを明らかにするため、本調査を実施いたしました。

パーソルダイバース(2024)「障害者雇用方針の変化と展望」

調査概要

調査名称 2024年 障害のある方の転職・就職に関する意識調査
調査手法 自社会員を用いた、インターネットによるアンケート調査
調査対象者 dodaチャレンジに登録する、全国の障害のある就業者 359名
調査対象者の内訳
障害内訳:
身体障害者300名/精神障害者:31名/発達障害者:28名
就業状況:
現職325名/離職中33名/就業経験なし1名
雇用枠:
障害者雇用枠247名/一般雇用枠78名(※現職の方のみ)
居住エリア:
北海道・東北24名/北陸3名/関東(一都三県除く)38名/首都圏(一都三県)156名/中部40名/関西62名/四国0名/九州・沖縄:31名
年代:
~20代23名/30代88名/40代108名/50代139名/60代1名
調査期間 2024年8月19日~8月23日
実施主体 パーソルダイバース株式会社

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所記載例:パーソルダイバース「2024年 障害のある方の就業や転職・就職に関する意識調査」

調査結果

1.「現在」と「今後」のはたらく際に重視する価値観

本調査においては、dodaチャレンジ自社会員に対して、はたらく際に重視する価値観について調査した。結果、今現在、及び今後において、“はたらくことに対して特に重視すること” としては、「収入の向上」(31%)及び「障害や体調への配慮を重視し、無理せずはたらき続けること」の両者が高い結果だった。
2020年/2021年に当社が実施の調査においても「収入、給与」、「継続してはたらけること」が重視されており、前回の調査時点から、障害者の就業への意識の変化は見られなかった。

グラフ:障害者の意識:「現在」と「今後」のはたらく際に重視する価値観

(N=359)

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現在特に重視することの回答内訳:収入の向上31.0%、障害や体調への配慮を重視し無理せずはたらき続けること29.9%、はたらき方を柔軟に選びはたらくこと19%、自己成長・キャリアアップ13.4%、仕事や就業を通じて企業や顧客・社会へ貢献すること6.7%。今後特に重視することの回答内訳:収入の向上29.2%、障害や体調への配慮を重視し無理せずはたらき続けること32%、はたらき方を柔軟に選びはたらくこと17%、自己成長・キャリアアップ14.5%、仕事や就業を通じて企業や顧客・社会へ貢献すること7.2%。

2.今後のはたらくことへの価値観 はたらく上で最も大切だと思う行動

1.であげた「今後大事にしたい、はたらく上で大事にしたいこと」を実現するために大切だと思う行動では、上位3つが「周囲との良好な関係性の構築」、「勤怠の安定」、「障害や体調安定を第一に無理のないはたらき方で就業」など、就労安定要素の項目が選ばれた。

グラフ:重視するはたらく価値観を実現するために、最も大切だと思う行動

(N=359)

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回答内訳:周囲と円滑にコミュニケーションをとり良好な関係を構築すること61.8%、自身の体調を管理し勤怠を安定させてはたらくこと57.7%、障害や体調安定を第一に無理のないはたらき方で就業すること54.9%、任された業務をミスなく確実にこなすこと54.3%、勉強や研修などで必要な知識・スキルを積極的に習得すること44%、期待や目標以上の成果を出すこと28.1%、顧客や企業の収益に貢献できるより難しい仕事や課題に挑戦すること19.2%、その他3.1%、わからない・答えられない1.9%

3. 就職・転職活動の不安や悩み

1.であげた「今後大事にしたい、はたらく上で大事にしたいこと」を実現するために、企業に求めたいことでは、「障害に対する部署や会社の理解、配慮」と「はたらき方を柔軟に選べられること、用意されていること」の両者が高い結果となった。

グラフ:重視するはたらく価値観を実現するために、企業に求めたいこと

(N=359)

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回答内訳:障害に対する部署や会社の理解・配慮66%、はたらき方を柔軟に選べること、用意されていること59.3%、適切な人事評価・給与アップの機会54%、知識習得のための研修や勉強を受ける機会37%、昇進や様々な仕事を担う機会30.6%、企業や顧客に貢献できる仕事に従事できる機会18.7%、わからない・答えられない3.3%

4.就職・転職活動を行う際の不安や悩み、課題

就職・転職活動を行う際の不安や悩み、課題においては、「給与・待遇面など自分の条件と合致するか」(58.5%)及び「自分が希望する(特性や適性に合った)求人数が少なかった」(43.7%)の両者が高い。

就職・転職活動において感じる(過去の就職活動で感じた)不安や悩み、課題

(N=359)

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回答内訳:給与・待遇面など自分の条件と合致するか58.5%、自分が希望する(特性や適性に合った)求人数が少なかった43.7%、自分が希望するサポートや配慮を受けることができるか39%、自分に合う仕事はあるか・それが何なのかわからなかった35.4%、自分のスキルを活かした業務を担えるか35.1%、障害の有無に関わらず対等に接してもらえるか34.5%、そもそも障害者雇用や就職・転職に関する情報が少なかった30.1%、将来性や昇進・昇給などの評価制度があるか29.5%、1人で就職・転職活動ができるかどうか19.8%、障害のことをどこまで伝えるべきか迷った18.9%、その他3.9%、不安や悩み・課題に感じたことはなかった2.8%、わからない・答えられない1.7%。

5. 就職・転職支援サービスに期待することや望むこと

就職・転職支援サービスに期待することや望むこととしても、上位3つが「自分の希望や条件、特性に合った仕事を紹介してくれる」(78.8%)、「転職/就職先を選ぶ際の情報量と選択肢が多い」(58.2%)、「障害者に対する理解や知識が豊富で任せられる」(55.4%)であり、自身の希望する条件に合致した求人を第一に求めていることが分かった。

グラフ:就職・転職活動を行う際、支援サービスに期待することや望むこと

(N=359)

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上位3つ以外の回答内訳:仕事紹介・面接対策・入社後(定着)など細部までフォローしてくれる48.5%、職場環境や必要配慮・待遇改善などの交渉や支援をしてくれる42.1%、企業に対して自信の障害や特性に合った求人の提案をしてくれる40.1%、職種・業種に関係なく支援してくれる27%、就職活動のスケジュール管理や進め方を管理してくれる22%、就業先の紹介だけでなく生活面の支援や相談もできる7.5%、採用面接に同行してくれる6.4%、わからない・答えられない3.3%、その他2.5%

調査結果考察

障害当事者の意識は一貫して、「収入面」及び「障害配慮・勤怠安定」を求めている。

冒頭述べたように、「障害者雇用対策基本方針」 の2023年の改正において、障害者の“雇用の質向上“が事業主の債務として明記されました。この社会変化の流れを受け、パーソルダイバースでは2024年8月に企業の障害者雇用に対する意識の変化について調査を実施した所、企業は法定雇用率の達成のみならず、障害者の活躍を見越した採用へと意識が変化していることが読み取れました。

一方で、今回の2024年9月実施の障害者当人へのアンケート調査では、2020年実施の調査から意識の変化は見られず、一貫して「収入面」及び「障害への配慮、勤怠の安定」を求めていることが分かりました。 また就職活動を行う際の不安や悩み、課題においては「給与・待遇面など自分の条件と合致するか」、就職・転職支援サービスに期待することや望むことにおいても、においても、「自分の希望や条件、特性に合った仕事を紹介してくれる」が高く、上記のはたらく上で重視したい価値観が反映された結果となっています。

グラフ:【企業の意識】:障害者の採用活動をする際に【現在、最も重視する方針】と【今後、最も重視したい方針】

N=178、企業の人事担当者

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現在の雇用方針:法令順守の範囲内で雇用するため70.8%、自社の社会貢献活動で活躍してもらうため4.5%、自社やグループ会社のユーティリティ業務で貢献してもらうため12.9%、自社の収益業務に貢献してもらうため11.8%。今後の雇用方針:法令順守の範囲内で雇用するため50.6%、自社の社会貢献活動で活躍してもらうため8.4%、自社やグループ会社のユーティリティ業務で貢献してもらうため15.7%、自社の収益業務に貢献してもらうため25.3%。
グラフ:【障害者の意識】:【今現在】及び【今後】のはたらく上で重視したい価値観

(N=359)

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現在特に重視することの回答内訳:収入の向上31.0%、障害や体調への配慮を重視し無理せずはたらき続けること29.9%、はたらき方を柔軟に選びはたらくこと19%、自己成長・キャリアアップ13.4%、仕事や就業を通じて企業や顧客・社会へ貢献すること6.7%。今後特に重視することの回答内訳:収入の向上29.2%、障害や体調への配慮を重視し無理せずはたらき続けること32%、はたらき方を柔軟に選びはたらくこと17%、自己成長・キャリアアップ14.5%、仕事や就業を通じて企業や顧客・社会へ貢献すること7.2%。

調査レポート資料

※調査結果をまとめた資料を提供しています。下記よりダウンロードいただけます

2024年 障害のある方の転職・就職に関する意識調査[PDF]