新型コロナウイルス感染拡大はどのような影響をもたらしたのか?
新型コロナウイルス感染拡大が長期化している中、はたらく障害者を取り巻く環境や、企業の障害者雇用に対する取り組みに様々な影響が生じました。
本調査では、新型コロナウイルス感染拡大は、障害者の就業や“はたらく”に対する考え方に、対してどのような影響や変化が発生したのかを調査しました。
調査結果から、はたらく上での不安のほか、テレワークなどによるはたらきかたの柔軟性・選択肢を求める様子が伺えます。本調査の内容が、これからの新たなたらき方の在り方や、多様な価値観を持った個人が活躍できる社会の実現へのヒントとなればと思います。
※本記事は2021年9月16日に発表した調査結果をもとに執筆されたものです。
調査概要
調査名称 | 新型コロナウイルス感染拡大による障害者のはたらくへの影響に関する調査 |
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調査手法 | 自社会員を用いた、インターネットによるアンケート調査 |
調査対象者 | dodaチャレンジに登録する、全国の障害のある男女で、就業中の方 471名 |
調査対象者の内訳 |
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調査期間 | 2021年8月19日~8月23日 |
実施主体 | パーソルダイバース株式会社(旧パーソルチャレンジ株式会社) |
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所記載例:パーソルダイバース「新型コロナウイルス感染拡大による障害者のはたらくへの影響に関する調査」
調査結果
1. 新型コロナウイルス感染拡大による障害者の就業に対する不安
「体調、健康面への不安」が最も高く、実生活に直結する「生活、収入面の不安」が続く。
2020年実施の調査と比べて最も増加したのは、「障害に対する配慮の不安」(+13.6%)であった。
一方で、「今後の社会情勢に関する不安」に関しては、2020年実施の調査と比較すると減少した(-8.2%)。
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- ※N=471/カッコ内は回答数
- ※複数選択式 当てはまるもの全て/小数点第2位以下は切り捨て
- ※グレー部分が前回調査結果(2020年7月発表)
2.障害者が“はたらく”に重視すること
障害者が“はたらく”に重視することで最も多かったのは「収入、給与」(67.3%)で、2020年7月発表の前回調査と比較すると、10.2%上昇した。
この結果を障害別(身体障害、精神障害)でみると、身体障害および精神障害の両者ともに最も多いのは「収入・給与」で同様だが、精神障害者の場合、二番目に「障害上必要な配慮、健康支援」が高い(40.8%)結果となっている。
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- ※N=471/カッコ内は回答数
- ※複数選択式 当てはまるもの全て/小数点第2位以下は切り捨て
- ※グレー部分が前回調査結果(2020年7月発表)
順位 | 身体障害(N=337) | 精神障害(N=98) |
---|---|---|
1位 | 収入・給与 66.2%(223) |
収入・給与 68.4%(67) |
2位 | 業務内容 52.8%(178) |
健康上必要な配慮・健康支援 40.8%(40) |
3位 | 継続してはたらけること 45.7%(154) |
業務内容 52.8%(178) |
- ※N=471/カッコ内は回答数
- ※複数選択式 当てはまるもの全て/小数点第2位以下は切り捨て
- ※グレー部分が前回調査結果(2020年7月発表)
3.今後のはたらき方に望むこと
「今後のはたらき方に望むこと」で最も多かったのは、「在宅勤務とオフィスへの出社の併用」(35.0%)で、続けて「在宅勤務ではたらきたい」(14.6%)と、約半数が在宅勤務のはたらき方を希望しているのが分かる。
今後においても、テレワークやはたらき方の選択肢・柔軟性が求められている。
「今後のはたらき方に望むこと」を、2020年実施の前回調査と比較すると、「仕事と家庭を両立させてはたらきたい」が前年比で最も増加した(9.6%、前回比+3.4%)。
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- ※N=471/カッコ内は回答数
- ※複数選択式 当てはまるもの全て/小数点第2位以下は切り捨て
- ※グレー部分が前回調査結果(2020年7月発表)
今後のはたらき方に望むこと | 今回 (%、カッコ内は人数) |
前回(%) |
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在宅勤務とオフィスへの出社の両方ではたらきたい | 35.0%(165) | 35.0% |
在宅勤務ではたらきたい | 14.6%(69) | 15.1% |
自宅からより近いオフィスや支店、事業所ではたらきたい | 14.0%(66) | 16.6% |
わからない、何とも言えない | 10.0%(47) | 8.9% |
仕事と家庭を両立させてはたらきたい | 9.6%(45) | 6.2% |
副業・兼業したい | 6.6%(31) | 5.0% |
今まで就業していたオフィスに出社してはたらきたい | 6.4%(30) | 8.9% |
サテライトオフィスではたらきたい | 1.3%(6) | 1.3% |
今の居住地や就業場所のある地域以外の場所ではたらきたい | 1.3%(6) | 1.2% |
その他 | 1.3%(6) | 1.8% |
調査結果考察
新型コロナウイルス感染拡大によるはたらく環境の変化は、チャンスでもある
新型コロウイルスの感染拡大は、社会全体のはたらき方や生活様式に変化をもたらした。例えば在宅勤務が広がったことで満員電車で通勤する頻度が減少し、下肢障害者や精神障害者の心身の負担が軽減される等のメリットが生まれた。その一方で、聴覚障害者にとってはマスクで口元が読めない不都合などが生まれる等の課題もみられた。
新型コロナウイルス感染拡大がもたらした環境の変化は、感染拡大が終息した後のはたらき方にも大きな影響を残しているが、個人と組織の成長に必ず繋がるきっかけを生み出したとも考えられる。
今後も、在宅勤務など柔軟なはたらき方への対応、環境整備が求められる
新型コロナウイルスの感染拡大によって、当社が運営する障害者の転職・就職支援サービス「dodaチャレンジ」では、部分在宅勤務からフル在宅勤務まで対応可能な求人数が急増した。
多くの求職中の障害者も、在宅勤務が可能な環境を企業に強く求めており、その傾向は感染拡大が終息した後も続いている。はたらき方、はたらく価値観が変化するなか、はたらき方に選択肢や柔軟性のない企業は、より優秀な人材から選ばれなくなりつつある。例えば心身共に様々な基礎疾患を有する障害者にとっては、はたらきやすさの観点を踏まえ、オフィス出社と在宅勤務のメリット・デメリットを上手く組み合わせたハイブリット型のはたらき方を用意することが効果的であると思われる。また在宅勤務においては、マネジメントの工夫や体調管理、新たな業務の創出にも取り組む必要があるだろう。
調査レポート資料
※調査結果をまとめた資料を提供しています。下記よりダウンロードいただけます