新型コロナウイルス感染拡大は、企業の採用・雇用施策にどのような影響をもたらしたのか?
新型コロナウイルス感染が2020年初頭から急拡大し、はたらく障害者を取り巻く環境や、企業の障害者雇用に対する取り組みに様々な影響が生じました。
そこで本調査では、新型コロナウイルス感染拡大直後の2020年6月に、企業の障害者雇用施策に生じた影響がどうなっているのか、企業の今後の対策を探るとともに、 2021年4月に実施された法定雇用率の引き上げや、労働市場が変化していた2020年の段階において、企業に求められていたこと、および障害者雇用の方向性を探るために実施しました。
- ※調査を実施した2020年6月時点での民間企業の法定雇用率は2.2%です。
- ※本記事は、2020年6月19日に発表した調査結果をもとに執筆されたものです。
調査概要
調査名称 | 新型コロナウイルス感染拡大による障害者の採用・雇用施策への影響調査 |
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調査手法 | 自社会員を用いた、インターネットによるアンケート調査 |
調査対象者 | 障害者雇用を実施している企業の人事担当、雇用担当者 355名 |
調査対象者の内訳 |
|
調査期間 | 2020年6月2日~6月5日 |
実施主体 | パーソルダイバース株式会社(旧パーソルチャレンジ株式会社) |
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所記載例:パーソルダイバース「新型コロナウイルス感染拡大による障害者の採用・雇用施策への影響調査」
調査結果
目次
1.コロナ禍における、企業の今後の採用活動
新型コロナウイルスによる障害者の採用計画への影響を聞いたところ、「影響はあったが、計画通りに採用を進めている」(28.4%)と「新型コロナウイルスによる影響はほぼなかった」(29.5%)と回答しており、全体の6割弱の企業は採用を継続していることがわかった。
また採用計画への影響について聞くと、「従来の採用活動ができなかったため」影響を受けたとの回答の割合が最も多かった。
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※配属、マネジメント、合理的配慮の提供、業務創出・アサイン、教育・研修、健康支援の提供等
今後の採用活動については、「採用手法の見直しや変更の必要があると思っている」(27.8%)、「求める人材要件や募集要項の見直しや変更の必要があると思っている」(12.6%)と、4割強の企業が採用の見直しが迫られていることが伺える。
一方で、従来通りの採用活動を行いたい企業は、全体の4割強になり、採用の見直しが迫られる企業と、従来通り採用活動を行う企業の両者に分かれているのが分かる。
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2.見直しの具体的な内容
採用手法の見直しや変更の内容において、最も多かったのは「企業説明会やセミナー、採用面接のオンライン活動」(22.8%)で、「企業説明会やセミナーなどのイベント実施・参加の見直し、または取りやめ」(7.3%)が続く。コロナウイルス感染拡大により、採用活動そのものの変更が検討されていることが分かる。
人材要件、募集要項の見直しにおいては、上位3つが「職務能力、専門知識、経験の有無、内容」(7.0%)、「募集職種」(4.2%)、「勤務場所、勤務時間」(5.0%)であり、テレワークや在宅勤務導入による影響も考えられる結果となった。
採用手法の見直しや変更の内容(MA) | 回答数 | 比率 |
---|---|---|
企業説明会やセミナーなどのイベント実施・参加の見直し、または取りやめ | 26 | 7.3% |
企業説明会やセミナー、採用面接のオンライン活用 | 81 | 22.8% |
採用プロセスの短縮、簡素化 | 21 | 5.9% |
採用チャネルの変更 (有料職業紹介業者から、ハローワークへ切り替える、など) |
16 | 4.5% |
その他 | 3 | 0.8% |
人材要件、募集要項の見直しや変更の内容(MA) | 回答数 | 比率 |
---|---|---|
職務能力、専門知識、経験の有無、内容 | 25 | 7.0% |
勤務場所、勤務時間 (在宅勤務、短時間勤務、オフィス勤務日数の短縮等) |
18 | 5.0% |
募集職種 | 15 | 4.2% |
障害種別、障害特性 | 12 | 3.3% |
働く姿勢や志向、モチベーション | 9 | 2.5% |
募集人数 | 8 | 2.2% |
入社時期 | 7 | 1.9% |
雇用形態(正社員・契約社員・アルバイト等) | 3 | 0.8% |
給与 | 1 | 0.2% |
その他 | 1 | 0.2% |
3.雇用施策変更、特別措置の具体的な内容
新型コロナウイルス感染拡大による雇用施策変更、特別措置の具体的な内容では、「テレワークを導入し、在宅勤務とした」企業が最多となった27.3%だった。
他には時差出勤や時短勤務を導入した企業が26.4%、勤務ではなく自宅待機をさせた企業も18.5%存在した。
障害のある社員への対策の具体的な内容(MA) | 回答数 | 比率 |
---|---|---|
テレワークを導入し、在宅勤務とした | 97 | 27.3% |
時差出勤や時短勤務を導入した | 94 | 26.4% |
有給の自宅待機をさせた | 66 | 18.5% |
部門や社員の交代出社制を導入した | 50 | 14.0% |
在宅勤務に必要なソフトウェアや通信環境の導入、通信費の補助等を行った | 23 | 6.4% |
雇用管理やマネジメント方法(業務進捗や健康状態の確認、把握など)の見直し・変更を行った | 22 | 6.1% |
ICTインフラや、ハードウェア機器(スマートフォン、ノートパソコンなど)の整備、導入を進めた | 19 | 5.3% |
業務の見直しや、別の業務に従事させる等を行った | 18 | 5.0% |
人事評価制度や労務管理のシステム・仕組みを見直し、変更した | 5 | 1.4% |
その他 | 2 | 0.5% |
無給の自宅待機をさせた | 1 | 0.2% |
4.今後も当面、継続する見込みのある措置
調査を実施した、2020年6月以降も継続する見込みのある措置としては、「テレワーク、在宅勤務」、「時差出勤や時短勤務」の両者が多い結果となった。
一方で3番目に多かった「有給の自宅待機」の回答数は、18.5%から7.6%に減少している。その代わりに「部門や社員の交代出社制」の順位が浮上しており、自宅待機ではなく、勤務を前提に考えていることが分かる。
今後も当面、継続する見込みのある措置(MA) | 回答数 | 比率 |
---|---|---|
テレワーク、在宅勤務 | 93 | 26.1% |
時差出勤や時短勤務 | 90 | 25.3% |
部門や社員の交代出社制 | 35 | 9.8% |
有給の自宅待機 | 27 | 7.6% |
業務の見直しや、別の業務への従事 | 21 | 5.9% |
雇用管理やマネジメント方法(業務進捗や健康状態の確認、把握など)の見直し・変更 | 19 | 5.3% |
ICTインフラや、ハードウェア機器(スマートフォン、ノートパソコンなど)の整備、導入 | 17 | 4.7% |
在宅勤務に必要なソフトウェアや通信環境の導入、通信費の補助等 | 12 | 3.3% |
人事評価制度や労務管理のシステム・仕組みを見直し、変更 | 4 | 1.1% |
その他 | 2 | 0.5% |
無給の自宅待機 | 1 | 0.2% |
5.今後、見直しや再精査が必要と考える雇用課題
新型コロナウイルスにより不確実性の高い状況が続き、はたらき方が変化しつつある中で、主に「雇用管理の課題」(48.1%)、「業務の課題」(39.7%)、「社員同士の人間関係・コミュニケーション」(35.7%)、「就業場所の課題」(34.9%)への対応に迫られている。
今後、見直しや再精査が必要と考える雇用課題(MA) | 回答数 | 比率 |
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雇用管理の課題(勤怠状況、健康状態の確認・把握、不安や問題発生時の対応など) | 171 | 48.1% |
業務の課題(業務を与えられない、業務性質上、就業環境が用意できない等の対策) | 141 | 39.7% |
就業場所の課題(在宅勤務に移行できない、在宅勤務を継続できない等) | 124 | 34.9% |
業務マネジメント上の課題(業務指示や進捗確認のコミュニケーションがうまくとれない等) | 100 | 28.1% |
部署やチーム内の社員同士の人間関係、コミュニケーション | 127 | 35.7% |
障害のある社員の就業意欲・モチベーション/th> | 100 | 28.1% |
離職、休職への対応 | 17 | 4.7% |
通信環境整備(ICT環境やハードウェア機器、手当などの整備・提供) | 87 | 24.5% |
オフィス、ファシリティ面の環境整備(安心して働ける設備導入や座席、備品配置など) | 60 | 16.9% |
教育、研修等の機会提供 | 60 | 16.9% |
評価や制度面の課題(人事制度の見直し、目標設定の立て方など) | 60 | 16.9% |
わからない、答えられない | 12 | 3.3% |
新型コロナウイルスの影響による課題は特にない(課題はあるが、新型コロナウイルスによるものとは言えない) | 51 | 14.3% |
その他 | 7 | 1.9% |
6.障害者の採用や雇用上の課題は、今後どの程度続くか
新型コロナウイルス感染拡大による、採用、雇用上の課題がどの程度続くか、という設問に対しては、全体の83.9%の企業は今年度から来年度以降も続くと考えているというのが分かった。
(※「今年度(2021年3月末)まで」+「来年度(2021年4月以降)も続く」+「わからない、答えられない」の合計値)
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- ※その他の具体的な内容(一部)
- ・特に課題はない
- ・ 国の終息判断が出され、業界の新型コロナ対応が解除されるまで
- ・ ワクチンが普及するまで
調査結果考察
新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、企業の採用活動や雇用施策が大きく変化している
2020年初頭からの新型コロナウイルスの感染拡大は、企業を取り巻く環境や障害者雇用への取り組みに、大きな影響をもたらした。
新型コロナウイルス感染拡大によって採用活動に影響が出ながらも、法定雇用率引き上げを控え、6割弱の企業がコロナ禍でも引き続き採用活動を継続させていることがわかった。
多くの企業が採用活動に取り組む一方で、採用プロセスそのものや雇用施策に変化が生じていることもわかり、社会情勢によって、採用活動や雇用施策を変化させていることがわかった。
今後見直しが特に必要となるものは、「雇用管理」と「業務」、他には「就業場所」や「チーム内のコミュニケーション方法」もあげられる
この社会情勢の変化によって、今後特に見直しを図る必要があるものは、「雇用管理」や「業務」があげられる。新型コロナウイルス感染拡大によって、オフィス就業から、在宅勤務等にはたらき方が広がったことで「雇用管理」や「業務」が喫緊の課題となった。今後も、はたらき方の多様化に対応した環境整備や制度設計、職場内でのコミュニケーションのあり方が求められるだろう。
調査レポート資料
※調査結果をまとめた資料を提供しています。下記よりダウンロードいただけます