新型コロナウイルス感染拡大は、障害者の“はたらく”にどのような影響をもたらしたのか?
新型コロナウイルス感染が2020年初頭から急拡大し、はたらく障害者を取り巻く環境や、企業の障害者雇用に対する取り組みに様々な影響が生じました。
そこで本調査では、新型コロナウイルス感染拡大により、障害者の就業や就職・転職活動にどのような影響が生じたのか、また、“はたらく”に対する考え方の変化、今後の障害者雇用施策のヒントを探るために実施しました。
※本記事は、2020年7月16日に発表した調査結果をもとに執筆されたものです。
調査概要
調査名称 | 新型コロナウイルス感染拡大による障害者の就業、就職・転職への影響調査 |
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調査手法 | 自社会員を用いた、インターネットによるアンケート調査 |
調査対象者 | 全国の障害のある男女で、就職・転職検討中、または就業経験のある方 763名 |
調査対象者の内訳 |
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調査期間 | 2020年6月23日~7月1日 |
実施主体 | パーソルダイバース株式会社(旧パーソルチャレンジ株式会社) |
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所記載例:パーソルダイバース「新型コロナウイルス感染拡大による障害者の就業、就職・転職への影響調査」
調査結果
目次
1.新型コロナウイルスによる就業変化の不安について
新型コロナウイルスによる就業変化の不安について聞いたところ、社会情勢への不安と同時に、「生活、収入面の不安が30.5%、「就業継続の不安」が30.3%となっており、6割以上が実生活に直結する不安を感じていることがわかった。障害者雇用では、非正規の雇用も多いことなどから、より実生活への不安を感じた障害者が多かったと思われる。
また、「体調、健康面の不安」が36.7%、「コミュニケーション、人間関係の不安」が24.7%となっている。これは、感染への不安だけでなく、就業の環境への不安も増していると考えられる。
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N=531 ※就業中の方
2.就業先でのコロナ対策について
就業先でのコロナ対策について、8割超が「問題はない」と評価している。一方で、16.4%が「問題がある」と回答。
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就業先でのコロナ対策について (N=531 SA) | 回答数 | 比率 |
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十分な対策が取られており、問題はない | 221 | 41.6% |
十分とは言えないが、概ね問題はない | 222 | 41.8% |
一部、問題があると感じるところがある | 61 | 11.5% |
十分とは言えず、大いに問題がある | 26 | 4.9% |
わからない、答えられない | 7 | 1.3% |
3.テレワーク・在宅勤務の導入について
コロナ禍における就業形態について聞いたところ、半数以上(51.6%)が、在宅勤務で就業していることがわかった。弊社が実施した企業への調査※でも、障害のある社員に実施した特別措置として「テレワークを導入し、在宅勤務とした」と答えた企業が最も多く(27.3%)、次いで「時差出勤や時短勤務を導入した」(26.4%)が続いた。新型コロナウイルスによって、テレワークの導入・活用が進んだ様子がうかがえる。
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※パーソルダイバース(2020)「新型コロナウイルス感染拡大による障害者の採用・雇用施策への影響調査」
【その他回答】
- 複数班に分かれての自宅待機と勤務のシフト制になった(身体)
- 会社全体が休業になった(精神)
- テレワークは以前より導入、月の取得回数制限を解除し原則テレワーク勤務(身体)
- 在宅勤務の要請があったが、自宅にネットワークが無いため不可能(身体)
- 欠勤扱い(身体)
- 2日置きのオフィス勤務となったが、セキュリティ上の問題でテレワークは出来なかった。(身体)
- 現場勤務なので、ちゃんと、仕事してました(知的)
4.これからの理想のはたらき方
これからの理想のはたらき方として、「在宅勤務ではたらけること」が50%の半数に上っている。
また、「自宅から近いオフィスや事業所ではたらきたい」(16.6%)、「今まで就業していたオフィスに出社してはたらきたい」(8.9%)など、はたらく場所に関する声も多く上がっている。これらから、コロナ禍において、はたらき方、職場環境の選択肢や柔軟性が求められていると考えられる。
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N=763
5.「はたらく」に求めることや優先順位
コロナの発生前後で、はたらくに求めることや優先順位が「変わった」と回答した人が、約4割に上った。
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N=763
障害者が“はたらく”に対して重視することについて、新型コロナウイルス発生前と現在・今後に分けて聞いた。
発生前にポイントの高かった「業務内容」は、発生後は15.9ポイント減少し26.6%、「自己成長・キャリアアップ」も4.3ポイント減少している(18.1%)。一方、最も増加したのは「オンライン活用・業務体制」で13.1ポイント上昇(20.1%)、次いで「はたらく場所」で6.3ポイント上昇(27.7%)という結果だった。新型コロナウイルス感染拡大により、「はたらく」の在り方が変化していることがうかがえる。
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N=763、3つまで回答
6.新型コロナウイルスによる就職・転職活動への影響
新型コロナウイルス感染拡大により、就職・転職活動に「影響があった」のは、全体の53.2%と、半数を超えた。
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【わからない、の内容】
- 活動していない
- 就労支援に通っているため不明(精神)
- 転職したいが時期をずらそうと考えた(精神)
- 職業訓練校が休みになった(身体)
影響の具体的な内容(抜粋) ※カッコ内は障害種別/現在の状態
- 面接日程が中々決まらなかった。求人数の減少。(身体/休職・離職中)
- 実習選考が決まっていた企業の実習が延期になり、3か月後に実習も選考も中止になった。(精神/休職・離職中)
- オープンかクローズかを見極めるため公的機関を利用する予定で進めていたが、コロナの影響で公的機関期間を利用することが出来なくなったため、安全を取ってオープン就労を目指し就職活動開始。オープンでは自分の経験を活かした求人が少ない。また、電話恐怖があるため対面で面接出来ない状況は十分にアピールする事が困難と感じている。(精神/休職・離職中)
- 合同面接会がなくなりました。一概には言えませんが就職活動自体に動きが鈍くなり書類選考など進まないです。(精神/休職・離職中)
- コロナのせいで病気の為ステロイドを服用しているので免疫がさがっているので感染リスクが高いと会社が復職を認めなかった。(身体/休職・離職中)
- 他府県移動ができない上にコロナに感染するリスクを考えて転職活動ができなかった。(精神/休職・離職中)
- 合同企業説明会が開催されない。企業情報や就活情報が入手しづらい。相談がしづらい(身体/学校に在学中)
- 転職活動前に一ヶ月程度の生活訓練を行う予定だったが、数ヵ月遅れで始めることになり、四ヶ月近く無収入で生活することになった(精神/休職・離職中)
- エージェントから来る一般求人のハイクラス求人が増え、一般求人の年収300から400万クラスの求人は極端に減った。ハローワークの県内の障害者求人は、変わらずパートの時給900円台のものが多い(精神 在職中)
- 勤務が全部無くなりました。再開の目処もまだたたないとのことでした。仕事が見つからないです。(身体/休職・離職中)
- 応募した企業の6割が募集停止や、選考中であったがコロナウィルスの影響で中止になってしまった。また、大企業でも一次面接と見学予定が延期になり、いまだに再開の連絡が来ていません。エージェントの方とは、テレワークでも変わらず連絡が出来ています。(身体/休職・離職中)
- 面接がスマホなど端末を介するようになってきたので、新たなマナー(カメラを少し見上げる角度に調節する、面接時の視線はカメラではなく画面の相手に向ける…など)が生まれて失敗も増えた。(不明/休職・離職中)
- コロナ禍の対策期間中はdodaさん紹介でリモート面接で採用面接が受けれて良かったが、今後また対面の面談に戻ってしまう懸念があり、コロナ禍の対策期間中だけでなくリモート面接が可能な企業が多くなることを望みます。一次面接はリモート面接か対面面接か選択できるようになる事を望みたい。(身体/在職中)
- リモートでの面談となったが、PCやスマートフォンを所有していなかった為、面接に積極的に活動できなかった。(身体/在職中)
- また企業様の募集案件の有無や活動状況が担当エージェントより今後どうなるか判断が難しいと伝えられ不安と焦りから内定を受理し転職するも現在、マッチングミスとなってしまい後悔しています。(身体/在職中)
- 子供が保育園に行けなくなり、活動がまったくできなかった。また、外に出るのも控えていた。そろそろ再開する予定。(精神/休職・離職中)
- 採用するにあたって教育ができないといわれた(精神/休職・離職中)
調査結果考察
はたらき方やはたらく価値観の変化に対応するために
新型コロナウイルスの感染拡大は社会全体で生活やはたらき方、はたらく価値観に影響を与えたが、障害者雇用においても同様の変化をもたらした。
本調査ではコロナ禍以降「在宅勤務」で就労した方が50%を超えた。これからの理想的なはたらき方でも、「在宅勤務ではたらきたい」や「在宅勤務とオフィスへの出社の両方を組み合わせてはたらきたい」といった、柔軟なたらき方を希望する回答が多かった。
この調査結果は、障害特性に応じた就業場所の選択、就業場所に応じた業務内容の調整など、障害者雇用のために必要な合理的配慮施策への示唆を与えるものである。
はたらき方の多様化や価値観の変化は、感染拡大が終息した後も続くことが見込まれる。障害者を雇用する企業にとっては、はたらく障害者が職場に定着し活躍することを第一に、この変化に対応した環境整備や必要な業務の創出、成果を発揮するためのマネジメント手法がより求められるだろう。
調査レポート資料
※調査結果をまとめた資料を提供しています。下記よりダウンロードいただけます