障害の有無にかかわらず、
多様なメンバーが活躍できる
真のダイバーシティを目指して
CASE 07 |
NTTコミュニケーションズ株式会社 |
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NTTコミュニケーションズ株式会社
ヒューマンリソース部 ダイバーシティ推進担当
佐伯勇人様、河島千佳様、安田彩衣様
※パーソルチャレンジ株式会社は、2023年4月1日付でパーソルサンクス株式会社と統合のうえ、「パーソルダイバース株式会社」となりました。
障害の有無にかかわらず、多様なメンバーが活躍できる真のダイバーシティを目指す「NTTコミュニケーションズ株式会社」では、特例子会社や集合配置部署を設けず、障害のある方も各部署で採用し障害者雇用を推進しています。全社的な環境づくりを進める中で、どのような課題に対峙してきたのでしょうか。
ヒューマンリソース部にて障害者雇用を担当される佐伯様と、ダイバーシティ全般を担当される河島様に、障害者雇用における課題や気づき、パーソルダイバースの支援、今後の展望などについて語っていただきました。
※NTTコミュニケーションズ株式会社では「障がい者」表記を採用されています。ご承知おきください。
一人ひとりの能力を発揮できるよう、
各部署にてはたらく場を創出
はじめに御社の障害者雇用の状況についてお聞かせください。
佐伯様:当社では、ダイバーシティ、ノーマライゼーションの観点から、障害の有無によって採用部署を分けることはせずに、各部署の現場にて障害のある社員を雇用し、はたらく場を創出しています。現在、身体障害者111名と精神障害者41名の計152名が勤務しており、2022年7月時点の法定雇用率は2.38%です。
近年は精神障害者を中心に採用を進めていましたが、コロナ禍によりリモートワークなどのはたらき方が広がったこともあり、2020年の後半からは、あらためて身体障害者の採用にも注力しています。
河島様:一般雇用と同様に、障害者雇用でも職種を限定せずに採用しているのが特徴です。一つの部署で100名以上の規模となるケースも多いため、各部署の担当者と、障害のある方の受け入れポストを協議しながら採用活動を進めています。私たちが所属するヒューマンリソース部は、障害のある社員と周囲の社員の双方を支援し、一人ひとりの能力が最大限に発揮できる職場環境の整備に取り組んでいます。
受け入れポストとのマッチングと
定着支援で離職者ゼロへ
御社でのパーソルダイバースによる支援内容をお聞かせください。
佐伯様:パーソルダイバース(旧社名:パーソルチャレンジ)とのお付き合いが始まったのは2015年で、私の前任者の頃からです。
2015年度は障害者雇用のコンセプトや方針などについてご提案いただき、組織コンサルティングの支援を受けました。
そのうえでテストマーケティングを経て、2016年度から本格的にプロジェクトを始動しました。
その当時、精神障害者の採用を進める中でご提案いただいたのは、実技選考を取り入れること。2016年に精神障害者3名を受け入れ、2017年4月に4名を採用できました。同時期に各部署へのヒアリングやトライアル制度の活用、定着支援などの取り組みでも支援いただいていたと聞いています。
佐伯様がご担当になられてからは、どのような取り組みが進められましたか?
佐伯様:現職を引き継いだのが2019年です。パーソルダイバースには障害のある方の人材紹介をはじめ、採用選考支援や定着支援で伴走いただいています。
障害者雇用では採用と同じくらい定着支援が重要です。特に精神障害のある方の採用では、職務や現場とのミスマッチにより離職してしまうことも多く課題となりました。
「当社の業務調査」「障害のある社員が行う業務内容の選定」「採用に向けた人材要件の確定」などの膨大なタスクを成し遂げられたのは、パーソルダイバースの的確なアドバイスがあったからだと思います。
パーソルダイバースの支援のもとマッチングの精度を高めるために取り組んだのが、「受け入れ部署に対する説明と理解の促進」、「受け入れポストのヒアリング」、「配属先への受け入れ研修」などです。受け入れポストの切り出しは、受け入れる側の担当者と一緒に取り組んでいます。
現在は安定した運用が継続できており、定着支援を目的として二ヶ月に一度の「相談窓口業務」にて支援をいただいています。
河島様は障害者雇用についてどのようなお考えをお持ちでしょうか?
河島様:2022年8月から現職にて、性別、年齢、出身地、国籍、宗教、障害の有無、性的指向や性自認などを問わず、多様なメンバーが活躍できる環境の実現を目標に、社内のダイバーシティ全般の推進を担当しています。障害者雇用のみならず、女性活躍、育児や介護などとの両立支援、若手育成など、どの立場の人でも自分らしくはたらける環境づくりを担っています。
佐伯の話にもありましたが、定着支援では「障害のある当事者へのサポート」と「周囲の理解」をどのように両立させるかが重要です。障害のある社員本人へのサポートはもちろんのこと、周囲の理解促進のために、社内でダイバーシティをテーマとしたホームページも活用して情報発信を続けています。また、双方向なマッチングの実現も大切です。入社後に個別で相談があった際は、その人が本来の力を発揮できる場を模索し、受け入れる側の担当者と相談しながら解決を図っています。
取り組みによる成果を実感されることはありますか?
佐伯様:採用選考のプロセスに「実技選考」を加えてからはミスマッチがなくなり、離職者は出ていません。現在は安定就労の継続に向けて、先述のとおりパーソルダイバースの担当者に2カ月に1度のペースで「障害者相談窓口」を開設してもらっています。障害のある社員が安心して長くはたらける環境づくりの一環として、大変心強く感じています。私たちだけではノウハウも限られるため、採用戦略から定着支援までワンストップでサポートいただけるのは非常にありがたいです。
マッチング精度を高めるために
重視するのは「人柄」と「障害受容」
御社では障害のある社員と各部署との双方向のマッチングに注力されています。
マッチングの精度を高めるポイントとは?
佐伯様:障害のある社員にもそれぞれの得意分野で力を発揮してもらうことが大切です。配属先とのマッチング精度を高めるために、必ず受け入れる側の担当者にも面接に参加してもらっています。
私個人としては、候補者の「人柄」にも注目します。パーソルダイバースからの情報に目を通し、面接で確認するのは「当社とマッチする部分」や「その人が苦手とする要素」などです。
職務経歴やスキルセットだけではなく、性格や人柄などのパーソナリティにあたる部分にも着目することで、それらの複合的な要素を踏まえて配属先にフィット、マッチするかを判断しています。
一人ひとりの得意分野を活かす配属により、経理や社内システム、マーケティング、企画などさまざまな部署で障害のある社員が活躍しています。
河島様:入社時に重視するのは「その人がこれまでに取得してきたスキルや能力をいかに活かせるか」です。
各部署のメンバーにも私たちと同じ目線を持ってもらい、障害のある新しいメンバーがどのように力を発揮できるか?を一緒に考えてもらえるように苦心しています。障害のある社員を採用するにあたり、部署の選定にはいつも心を砕いていますが、今後も変わらず大事にしていきたい部分です。
受け入れる側のみなさんの反応はいかがでしょうか?
佐伯様:社内にはダイバーシティの考えを理解している人が多く、障害のある社員を温かく見守ってくれているところも心強いです。会社の規模も比較的大きいため、万が一ミスマッチが発生した場合は、業務の種類を変えるなど後追いの対応ができるのも強みです。各部署の上長には、障害のある社員の成長に合わせて仕事の幅を広げてもらうように伝えています。
河島様:全般的に「障害者だから」という見方をしている上長は少ないと思います。ステップアップを希望する人に対してはそれを支援する風土があり、一人ひとりに合わせた対応を実施しています。
障害のある社員の活躍の場を創出するために、とても柔軟な対応をされていることがわかります。パーソルダイバースの担当者とのやり取りで印象に残っていることはありますか?
佐伯様:採用時に候補者のどの部分を見ればよいかについてアドバイスを求めたことがありました。とても参考になったのが、「自身の障害を受け止め、どのように対処すれば力を発揮できるかについて語れること」です。実際に、自身の障害特性を後ろ向きに捉えている人より、対処方法を理解し前向きな対応をされている人の方が安定的に勤務されている印象です。
障害のある社員への配慮は、
あらゆる社員への配慮につながる
現在はどのような課題をお持ちでしょうか?
佐伯様:リモートワークの普及により、専門性の高いジョブ型ポストの採用が必要になってきていると感じます。コロナ禍によりリモートワークを視野に入れた採用を進める中で課題となったのが、事務系業務の創出です。
IT技術の進化によって単純な事務手続きなどは業務自体がなくなっていく方向にあります。単純作業系の事務業務が減少傾向にある中で、それのみを得意とする障害者を受け入れ続けるのは難しくなるでしょう。
そのため、採用面では何か一つでも得意なことや強みがあると、配属先を考えるにあたって「力を発揮してもらえそう」というイメージが持てます。専門的なスキルに限らず、「コミュニケーションに長けている」なども強みとして捉えています。
御社でのリモートワークの普及はどのような状況ですか?
佐伯様:コロナ以前は育児や介護を行う一部の社員に利用が限定されていましたが、現在は8割くらいの社員がリモートワークを行っています。誰もが特別扱いを感じることなくリモートワークが実施できるのは良いことですが、リモートワークならではの課題も見えてきました。
一例でいうと、リモートワークになると出社時と比較して、もともとの障害特性や体調の変化に周りが気付きにくくなり、依頼される業務の量が過多になってしまう、などということもありました。障害特性によっては、孤独感から体調を崩してしまう人、わからないことがあっても声を上げられない人もいます。
しかし、これらは障害のある社員に限らない課題です。個々が不安になる点はヒアリングのうえ配慮しつつ、力を発揮できるポストで活躍してもらうという意味では、障害のある社員へのケアも、一般社員へのケアも変わりません。サポートできる仕組みや心理的安全性を高める施策として1on1などに取り組んでいます。
河島様:あらゆる社員が自分らしくはたらくための環境は、「IT環境」「制度」「風土」の三位一体により成立します。最近では、業務によってリモートワークと出社勤務を併用するハイブリッドワークが広がり、障害のある社員に限らず活用されています。ハイブリッドワークの推進は、リモートワークを希望する身体障害者の受け入れ体制の整備にもつながりました。
周囲の社員へのサポートとして、障害のある社員を受け入れている上長からの相談にはどのように対応していますか?
佐伯様:上長たちからの相談は、各部署の人事担当者に相談が集まり、内容により私も一緒に話し合います。いずれは上長同士など横のつながりで相談し合える環境になることが理想です。
河島様:「こと」が起きる前に、さまざまな相談が佐伯へ寄せられます。佐伯の後ろにはパーソルダイバースの担当者がいてくださる。それはとても大きな安心感につながっています。
障害のある社員の専門性を高め、
会社に、社会にイノベーションを
御社の今後の障害者雇用に関する展望をお聞かせください。
佐伯様:性別や年齢、出身地、国籍、宗教、障害の有無などを問わず多様なメンバーが活躍できる企業風土づくりを進めています。
得意なこと、苦手なことは誰しもが持っています。障害者・健常者のちがいを意識せず、「障害による特性も個性の一つ」とみんなが認め合える会社にしていきたいです。障害のある社員の専門性の向上を後押しし、一人ひとりがありのままで安心してはたらける職場づくりに取り組んでいきます。
それぞれが持つ専門性を強めていくことがまず一つ。ふたつ目はダイバーシティ全般の話として、なぜダイバーシティを推進するのかというと、個人のウェルビーイングもありますが、やはり会社や社会のイノベーションが期待できます。
障害のある社員が一緒にはたらいてくれるからこそ、起こせるイノベーションや気づきは多いです。数字的な側面のみではなく、本当の意味でのダイバーシティを推進し、これまでも今後もイノベーションに寄与するような力を、障害のある社員のみなさんからいただきたいと思っています。
パーソルダイバースに今後期待することとは?
佐伯様:パーソルダイバースは、採用から定着支援までサービスが充実している点が大きな魅力です。加えて、豊富な実績による経験を基にアドバイスいただけるので、安定感と安心感があります。障害のある社員に対してだけではなく、一緒にはたらく周囲へのサポートも踏まえた上でご提案いただけるのも、非常に助かっています。障害者雇用では決まったやり方があるわけではないため、今後も障害者雇用の専門家としてその都度一緒に考えていただけると大変ありがたいです。
NTTコミュニケーションズ株式会社
※ご担当者様の所属・役職ほか記事の内容は取材当時のものです。
「人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造する。」を企業理念に、国内電気通信事業における県間通話サービス、国際通信事業、ソリューション事業、及びそれに関する事業等を展開。「モバイル・クラウドファースト」で社会・産業にイノベーションを起こし、すべての法人のお客さま・パートナーと「あなたと世界を変えていく。」に挑戦します。