
法人支援の現場から
~専門スタッフが語る
成功ポイントと支援事例~
第3回
「業務の切り出し」は
全社の業務最適化チャンス!
障害者雇用促進法の改訂や法定雇用率の引き上げに伴い、これから障害者雇用に取り組んでいこう、または規模を拡大していこうと考える企業が増えています。現場で発生する課題に対し、パーソルダイバースの法人向けソリューションではどういったアドバイスや支援を行っているのでしょうか。支援の現場を知り尽くしたパーソルダイバースの専門スタッフが、3回にわたりお話します。

コンサルタント
企業との窓口となり、課題解決に向けたさまざまなソリューションを提案しながらプロジェクトの進行・マネジメントを担当。

リクルーティングアドバイザー
障害者雇用に関わる課題のヒアリングや採用ポジションの要件定義、採用活動のフォローなど、主に採用活動の支援を担当。
法人向けソリューションの専門スタッフが、支援現場のリアルな事例や雇用の成功ポイントを語るインタビューシリーズ。「初めての障害者雇用」、「有料人材紹介の活用メリット」と続き、いよいよ最終回のテーマは「業務の切り出し」です。せっかく採用したものの、適切な業務を割り振れずに定着につながらないのは大問題。逆に業務の切り出しが上手くできれば、障害者雇用にとどまらない全社的なベネフィットにつながります。その理由とは?
適切に業務を切り出せば、
はたらく人のモチベーションも上がる
——前回のインタビューの最後で、採用する人材の要件定義にも関わる重要なプロセスとして「業務の切り出し」を挙げていただきました。「業務の切り出し」とは、既存の業務の中から、障害のある方にやっていただく業務を選び出すプロセスのことですね。今回はその極意をお聞きしたいのですが、まずはどういった支援事例があるのか教えてください。
永里:以前私がご支援した、地方に工場や事業所を複数展開するメーカー企業のケースをお話します。こちらの企業では、各事業所の中に集合配置部門を設ける形で障害者雇用を始められました。最初は簡単な軽作業や清掃業務を切り出したのですが、障害のある社員の方々のはたらきぶりを間近で見るうちに、社内の各部署から「これもできるのでは?」「この業務もお願いしたい!」と声が上がり、どんどん業務内容が拡大していったのです。

——スキルや能力に見合った業務を広げることができ、かつ事業所全体でも業務負担の平準化につながったのですね。
永里:はい。それによって障害のある社員の方も“頼りにされている”“貢献できている”という実感が湧き、モチベーションが上がりました。このケースでさらに良かったのは、工場の周辺地域を清掃するラウンド業務を新たに設けたことで、障害のある社員の方々の仕事が地域社会との関係性向上にも貢献したことです。近隣の方から「いつも(地域を)きれいにしてくれてありがとう」とお声がけいただくこともあり、企業のイメージアップにもつながりました。思いがけない効果でしたね。
業務の棚卸しは、はたらく全員のためにやる!
——そうした効果的な業務の切り出しを行うために、どういったコツやポイントがあるのでしょうか? 障害者雇用の経験が浅い企業にとって、障害のある方向けに業務を切り出すのは簡単ではなさそうです……
永里:実は、そこが落とし穴なんです!

——えっ、どういうことですか?
永里:業務を切り出すためにはまず“業務の棚卸し”をする必要がありますが、その際に「障害のある方向けにやろうとしない」というのが非常に重要なポイントになります。最初から「障害のある方向け」と考えてしまうと、個々の勝手な先入観で「これは難しいだろう」と判断された業務が棚卸しから漏れてしまうからです。その業務が障害のある社員の方が実施する業務としてふさわしいかは、私たちプロがしっかり見極めます。ですから企業にはまず、自分たちが出社してから退社するまでにやっているすべての業務を細かく洗い出していただきたいのです。
——なるほど! 「障害者向けだと意識しない」のは非常に重要な観点ですね。
永里:一番持っていただきたいのは、「障害者雇用のためではなく、みんながはたらきやすくなるためにやる」という意識です。障害者雇用のために誰かがはたらきづらくなっては、まったく本末転倒。でも実際にフラットな視点で業務を洗い出してみると、総合職の人が単純な事務作業に追われて何時間も残業していた、なんて問題が可視化されて業務改善につながることもよくあります。
——職種によっては業務の切り出しが難しい場合もあるのでしょうか。
永里:確かにそれはあります。ですが、「うちは専門性が高いから業務の切り出しは無理!」とおっしゃる企業でも、細かく細かく業務を洗い出してみると案外そうでもなかったりするんですよ。何度も繰り返しますが、先入観を持たずにやってみることが本当に大切なのです。
業務が先か? 人が先か? 状況に応じて柔軟な対応を
——ところで、前回のインタビューでは「業務の切り出しは募集要件の見直しにもつながる」とお話されていましたが、どういうことか詳しく教えてください。
永里:最初に業務切り出しを行い、障害のある社員に任せる業務を決めておけば、どのような人材要件の方を採用するかがおのずと決まるので、マッチする人をきちんと採用できるようになります。集中力を要する業務に気が散りやすい特性の方はミスマッチとなりやすいですし、下肢障害のある方に歩き回る仕事は任せませんよね。よく「どんな人を採用するか決まらないと、業務が切り出せない」とおっしゃる企業がいらっしゃいますが、実は逆なんです。
森田:採用代行を支援する立場からしても、障害のある社員に任せる業務が最初から決まっている場合と決まっていない場合では、選考スピードやマッチングのしやすさが大きく変わると実感しています。ただ、逆にあまり業務を固め過ぎてしまうと、採用ターゲットの候補者を見つけることが難しくなってしまう場合も。地域特性や職種によって、具体的にしておくことと柔軟性を持たせておくこととのバランスは重要です。

——「業務の切り出しは社員みんなのため」「採用してから業務を考えるのではなく、業務を先に考える」。障害者雇用を進めるうえで、今回も非常に重要な観点をお話しいただきありがとうございました。

全3回を通じて見えてきたのは、障害者雇用は人事や実際に雇用する部署だけが考えるべきものではなく、会社全体でしっかりと方針を持って取り組むべきだということ。そして早い段階からプロの知見を取り入れることで、定着率向上や会社全体の事業効率化につなげやすくなるということ。
このシリーズを読んで障害者雇用に気持ちが湧いた企業の担当者様は、ぜひ、パーソルダイバースの法人向けソリューションサービスまでご相談ください。
- 第1回
初めての障害者雇用、
企業が持つべき心得とは? - 第2回
こんな時こそ、
有料人材紹介へ - 第3回
「業務の切り出し」は
全社の業務最適化チャンス!