障害者が就職・転職において感じる不安や悩み、障害者雇用枠での就職を目指す際に希望することを調査

昨今、様々な障害者が労働市場へ進出し始めており、企業は、勤務時間や業務内容、勤務場所などはたらき方の柔軟性をより求められています。厚生労働省も週20時間未満の短時間勤務も特例的に対象に加える方針を固めるなど、企業には勤務時間に制約のある障害者の受け入れが一層求められていくでしょう。
障害者枠ではたらく方が、モチベーションを高めながら安心して長期安定就業ができるように支援し、企業の戦力にするためにはどのようなことが必要でしょうか。障害のある就業中の方を対象に調査を実施しました。

調査概要

調査名称 2022年 障害のある方の転職・就職に関する調査
調査手法 自社会員にインターネットによるアンケート回答を依頼
調査対象者 dodaチャレンジに登録する、全国の障害のある就業者(20代~59歳男女)
【有効回答者】596名
調査対象者の内訳
今まで経験した就業枠:
一般枠と障害者枠両方(50.5%)、一般枠のみ(31.4%)、障害者枠のみ(18.1%)
障害区分:
身体障害(身体障害手帳を保持)(72.7%)、精神障害(精神障害者保健福祉手帳を保持)(27.3%)
調査期間 2022年7月26日(火)~7月31日(日)
実施主体 パーソルダイバース株式会社(旧パーソルチャレンジ株式会社)

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所記載例:パーソルダイバース「2022年 障害のある方の転職・就職に関する調査」

調査結果

1. 就業枠でみる障害者の就職・転職活動に関する悩み

就業中の障害のある方596人のうち、95.5%が「現職の就職・転職活動中に不安や悩み」があったと回答した。

これまでの就業枠 1.障害者雇用枠のみ 2.一般枠のみ 3.障害者雇用枠と一般枠
現在の就業先の転職活動で不安や悩みがあったと回答した人 104人 176人 289人
給与・待遇面など自分の条件と合致するか 51.0% 53.4% 50.9%
自分が希望する(特性や適性に合った)求人数が少なかった 45.2% 37.5% 33.2%
自分に合う仕事はあるか、それが何なのかわからなかった 41.3% 29.0% 34.9%
将来性や昇進・昇給などの評価制度があるか 40.4% 22.2% 27.7%
障害の有無に関わらず対等に接してもらえるか 39.4% 26.1% 32.5%
自分が希望するサポートや配慮を受けることができるか 36.5% 28.4% 31.1%
自分のスキルを活かした業務を担えるか 29.8% 29.0% 30.1%
1人でも就職・転職活動ができるかどうか 29.8% 22.7% 14.5%
そもそも障害者雇用や就職/転職に関する情報が少なかった 27.9% 33.5% 18.0%
障害のことをどこまで伝えるべきか迷った 18.3% 17.0% 14.5%

2. 就業中の障害者「就職・転職活動の悩みや不安における解決法や相談先」

「現職の就職・転職活動中に不安や悩みがあった」と回答した569人に、「解消法や相談先」を尋ねると、「ネットやSNSなどで調べて自己解決する」(45.9%)が最も多く、「家族や友人に相談する」(42.9%)、「キャリアアドバイザーに相談する」(35.9%)なども回答数が集まった。

N=569人、現職の就職・転職活動に悩みがあった、就業中の障害者(複数回答)

拡大してご覧ください

その他回答:主治医に相談する20.4%、障害者の支援機関に相談する19.3%、ハローワークの求職者用窓口に相談する14.6%、過去に就業した職場の上司や同僚、知人などに相談する12.8%、書籍や雑誌で調べて自己解決する9.5%、障害のある当事者が集まるコミュニティやイベントに参加6.9%

3. 就業中の障害者が、就職・転職活動中に、「就業支援サービスを選ぶ際に重視したこと」

障害のある就業中の方が、「就職・転職活動を行う際に、支援サービスに期待したことや望んだこと」を尋ねると、1位の「自分の希望や条件、特性に合った仕事を紹介してくれる」(72.1%)以外では、「障害者に対する理解や知識が豊富で安心して任せられる」(41.6%)、「仕事紹介~面接対策~入社後(定着)など細部までフォローしてくれる」(30.9%)、「就職/転職先を選ぶ際の情報量と選択肢が多い」(30.2%)などの回答数が多く集まった。

N=569人、就業中の障害者(複数回答・当てはまるもの3つまで)

拡大してご覧ください

その他の回答:職場環境や必要配慮、待遇改善などの交渉は支援をしてくれる21.5%、職種・業種に関係なく支援をしてくれる16.4%、企業に対して自分の障害や特性にあった求人の提案をしてくれる16.1%、面接時のコミュニケーションで伝えにくい部分をフォローしてくれる10.6%

4.障害者枠で就業を目指す際に、特に希望したことや求めたこと

障害のある就業中の方のうち、今までの就業経験が、「一般枠と障害者枠の両方(N=301人)」もしくは、「障害者枠のみ(N=108人)」と回答した409人に、「障害者枠で就業を目指す際に、特に希望した・求めたこと」を尋ねると、「障害をオープンにしてはたらくことができる」(56.5%)が最多 となった。

N=409人、今までの就業枠が「一般枠+障害者枠」もしくは「障害者枠のみ」の人

拡大してご覧ください

その他の回答:長期的に安定・継続してはたらくことができる48.4%、障害や体調に応じ勤務時間の変更や休憩、休暇が取りやすい36.4%、給与や職位などの待遇を維持できる36.2%、障害配慮や支援のある業務(量・内容)ではたらくことができる34.5%、勤務場所の選択肢がある(オフィス・完全在宅・併用)24.9%、障害に配慮した職場環境(設備・支援ツール)が整備されている12.5%、短時間勤務ではたらくことができる4.9%

5.障害者枠で就職した結果、希望や求めたことが得られたか

障害のある就業中の方のうち、今までの就業経験が、「一般枠と障害者枠の両方(N=301人)」もしくは、「障害者枠のみ(N=108人)」と回答した409人に、「障害者枠で就業した結果、希望や求めたことが得られたか」を尋ねると、およそ6割が、「障害者枠で就業した結果、希望や求めたことが実現できた」(55.4%)と感じている一方で、2割が「希望や求めたことは得られなかった」と回答した。

拡大してご覧ください

グラフ:概要は上に記載の通りです。

6.障害者枠で就業した結果、希望や求めたこと以外に得られた/良いことがあったと感じる理由

障害者枠の就業により「希望や求めたこと以上に得られた/良いことがあった(N=63人)」、「希望や求めたことは得られた(N=165人)」と回答した人の理由として、いずれも1位は「未経験の業界や業種にチャレンジできた」(45.2%、平均値)となった。

拡大してご覧ください

その他の回答内訳:希望や求めたこと以上に得られた・良いことがあったと回答した人の理由(周囲への貢献・やりがいを実感することができた47.6%、自分の仕事に対し職場の仲間から感謝や上司に評価してもらえた47.6%、自分に合った仕事に就き能力を発揮できた44.4%、仕事を任せてもらえるようになった34.9%、自分らしく付き合える同僚・信頼できる上司に出会うことができた31.7%、給与や待遇が良くなった30.2%、自分に合ったキャリアを描けるようになった9.5%)。希望や求めたことは得られたと回答した人の理由(周囲への貢献・やりがいを実感することができた41.2%、自分の仕事に対し職場の仲間から感謝や上司に評価してもらえた31.5%、自分に合った仕事に就き能力を発揮できた39.4%、仕事を任せてもらえるようになった40%、自分らしく付き合える同僚・信頼できる上司に出会うことができた25.5%、給与や待遇が良くなった38.2%、自分に合ったキャリアを描けるようになった10.9%)

調査結果考察

障害者の長期安定就業と戦力化には特性への配慮の継続が欠かせない

調査結果からは、障害者枠の就業により、多くの人が希望や求めたことを得られているが、長期安定就業し戦力にするためには、特性への配慮の継続が欠かせない。人事異動で直属の上司が変わる等で配慮が途切れてしまうことのないよう注意し、雇用実績の少ない企業は配属前に障害理解を促す社内研修を実施するなどが効果的だろう。未経験の業界や業種へのチャレンジする背景には、障害を受傷または発症する以前の業界や業種では仕事が物理的に心理的に続けられないという要因もある。企業は、採用選考時に職務遂行力や対人コミュニケーション力など、職種の専門性以外に業種や職種が変わっても持ち運びができるスキルに注目すると、業界未経験者であってもより良い人材の確保に繋がるだろう。

ステップアップのための転職には現職で小さな成功体験を積み、転職後の業務内容や職場環境の変化が、障害特性に応じた無理のないものであることが重要である

今までの就業経験が「障害者枠のみの方」は「一般枠のみの方」よりも、「自分に合う仕事は何か」、「昇進・昇給などの評価制度」、「対等に接してもらえるか」などにおいて、より不安を感じていることがわかった。実際に、当社がご支援した障害者枠で就業しながら転職活動する方々の転職理由には、「仕事の幅を広げたい」、「給与や雇用形態などの待遇面の改善」、「(特例子会社から)一般企業の障害者枠で働きたい」などが多い。最近では、現職の就業実績が3年以上の精神障害のある方が、ステップアップをするために転職を希望するケースが特に目立つ。このような転職を成功させるポイントのひとつは、まず現職で小さな成功体験をコツコツと積み、自信をもって仕事に取り組めるようになっておくことであろう。そして、転職後の業務内容や職場環境の変化が、あくまでも自身の障害特性に応じた無理のない範囲のものであることも大切だ。

調査レポート資料

※調査結果をまとめた資料を提供しています。下記よりダウンロードいただけます

2022年 障害のある方の転職・就職に関する調査[PDF]