法定雇用率の段階的引き上げや社会情勢の変化が企業の雇用方針に及ぼす影響を調査
民間企業の法定雇用率※は2024年4月から2.5%、2026年7月には2.7%と段階的に引き上げられます。企業は、厚生労働省から求められている障害者の“戦力化”(雇用の質向上)への対応に加え、労働人口の不足や持続可能な事業継続を見据えた人材戦略が必要とされています。
本調査は、障害者を取り巻く環境や社会的潮流の変化により、雇用方針や考え方どのような変化が生じているかを明らかにし、障害者雇用に対する適切な対応策や支援のあり方を示すことを目的に実施いたしました。
※法定雇用率:企業や国、地方公共団体が達成を義務づけられている、常用労働者に占める障害者の雇用割合を定めた基準
調査概要
調査名称 | 障害者雇用方針の変化と展望 |
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調査手法 | WEBアンケート調査 法人企業向けメールマガジンにて配信 |
調査対象者 | 障害者雇用に取り組む人事担当者 【有効回答者】法人向けメールマガジンに登録している契約企業および非契約企業178名 |
調査対象者の内訳 | 一般企業155名、特例子会社15名、その他8名
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調査期間 | 2024年7月3日~7月11日 |
実施主体 | パーソルダイバース株式会社 |
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所記載例:パーソルダイバース「障害者雇用方針の変化と展望」
調査結果
目次
1. 障害者の雇用方針「現在と今後」
現在の障害者雇用の方針として、7割(70.8%)の企業が「法令順守(法定雇用率の達成)」に重点を置く。一方、将来的には4社に1社(25.3%)が「自社の収益業務に貢献する(戦力化)」ことに方針を転換。
2. 障害者の採用目的別:実際の雇用割合
全体では、「法令順守の範囲内で雇用する人材」と「収益業務に貢献する人材」で8割を占めており、「ユーティリティ業務に貢献する人材」と「社会活動で活躍する人材」の雇用割合は2割にとどまった。これらの目的は、企業の直接的な利益として位置づけられにくいため、その雇用割合が相対的に低い。
3. 採用目的別における「求める資質や職能・配慮事項の方針」
「自社の収益業務に貢献する人材」には、職務遂行能力やスキルが求められ、3割(34.3%)が「配慮は最小限で、一般社員と同じ環境ではたらけること」を重視。「自社やグループのユーティリティ業務に貢献する人材」には、体調や勤怠の安定・周囲との良好な関係性を重視し、半数以上(53.4%)が「体調や精神面の安定を重視した配慮」を行うと回答。
4. DEI※施策と障害者雇用施策の関連性
DEI施策と障害者雇用施策が「連動している企業」は6割(59.0%)。連動している企業ほど、障害者雇用を単に法令順守の手段としてではなく、企業の本業に直接貢献する戦略として捉えられている可能性がある。
※DEI:Diversity, Equity & Inclusion(ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公正性) & インクルージョン(包括性))。すべての人が公正な機会を得て、多様な背景や価値観、違いを受容できる社会実現を目指す概念。
5. 法定雇用率達成状況、現在と今後の見通し
現在の法定雇用率2.5%に対して、未達成の企業は47.8%。2026年7月引き上げ見込みの2.7%に対しては、6割(59.5%)が「達成は困難」と回答。
達成困難の理由として、「障害者採用が売り手市場により激化」「身体障害者を中心に高齢化が進み、退職者が増加」など、採用や定着への課題が挙がった。
企業は引き続き採用手法や待遇面の改善を図り、長期的な視点での戦略的な取り組みが求められる。
調査結果考察
障害者雇用の方針は「法的義務」だけではなく「事業への貢献」のために取り組む企業が増加している
今回のリサーチ結果から、障害者雇用に対して「法的義務」だけでなく「事業への貢献」のために取り組む企業が増えていることが分かりました。企業は今、経営を取り巻く環境変化によって、永続的な事業継続性を見据えた人材戦略が求められています。
調査に協力いただいた企業からはこうした背景のもと、障害者を“雇用率達成のための人材”から、“企業成長のための投資”として雇用に取り組む姿勢が垣間見えます。今後、多くの企業で、こうした傾向が高まっていくと考えられます。
調査レポート資料
※調査結果をまとめた資料を提供しています。下記よりダウンロードいただけます