パーソルダイバースの現場コンサルタントによるコラム。今回は、障害者雇用を始めて10年が経ち、社員の評価や給与体系が実態と合わなくなってきたという企業様の評価基準改定のご支援事例をご紹介します。
- 目次
- ■今回のご相談
障害者雇用を推進する中で、現状に合わない評価基準を見直したい - ■課題とニーズの深堀
「評価制度」と「給与体系」の現状を把握し、評価基準を再検討 - ■パーソルダイバースからのご提案
3つの想定人物像をグレードとして具体化し、人事制度に反映 - ■施策の結果
制度と評価のアップデートにより、正社員登用される社員も増加 - ■まとめ
自社ノウハウと豊富なご支援実績から、人事制度設計をサポート
障害者雇用を推進する中で、現状に合わない評価基準を見直したい
今回は、障害者雇用を始めてから変更なく活用している評価基準について、改定を検討されているE社からのご相談事例です。
E社は障害者雇用を始めて10年が経つ企業で、社員の定着状況は安定し、業務も清掃や軽作業から事務系の仕事まで、順調に拡大されています。
今後も障害者雇用を拡充していくために、改めて中期の人員計画を検討していたところ、業務スキルに大きな幅があるものの、給与額がほとんど変わらないという事実が判明。
現状、社員から大きな不満は出ていないものの、「このままでは就労モチベーションの低下につながり、適切な経営が行えないのでは?」とのご不安から弊社にご相談いただきました。
E社と同様の課題をお持ちの企業は少なくありません。
障害者雇用の推進や業務の拡大を積極的に行ってきたからこそ、障害者雇用の開始当初に定めた評価基準が現状と合わなくなってしまうことも十分考えられます。
「評価制度」と「給与体系」の現状を把握し、評価基準を再検討
適切かつ効果的に評価基準を改定するために、まずは現状の把握に取り組みました。
E社の既存の「評価制度」と「給与体系」を確認したところ、10年前に障害者雇用を始めた当時のものが変更なく活用されていました。その中で、現在のE社の状況に適していないと思われたのが次の2点です。
- 時給は「最低賃金+α」で、最低賃金改定に合わせてその分を上乗せすることが基準
- 評価制度はあるものの各部門長の裁量に依存している
1.の時給については、業務拡大により幅が広がった業務スキルへの対価として適切か検討することに。
2.の評価制度については、各部門長の裁量に依存していることで、客観性のある評価とは言いがたいとの結論を得ました。
評価制度が効果的に機能するためには、共通認識となる評価基準を設定することが重要です。
またキャリアアップについては、勤続5年を超えた場合に無期雇用に転換していますが、正社員登用の整備はなされていませんでした。そのため、キャリアアップの道筋についても検討し、見直すこととなりました。
3つの想定人物像をグレードとして具体化し、人事制度に反映
E社の課題点が見えてきたところで、第一優先事項として取り組んだのはゴールの設定です。
中期の人員計画を考える上で、次の2点について整理を進めていきました。
- 現在就業中の障害のある社員に、今後どのように活躍してもらいたいか
- 採用計画としてどのように障害者雇用を拡大させていくか
上記2点について整理することで、E社からは、
「“ご自身の力を発揮して定年まで長くはたらいてもらう”ことをベースとし、3つの想定人物像に合うようなはたらき方を選んでもらえるようにしていきたい」
とご回答いただきました。
3つの想定人物像
- 障害のある社員として入社し、経験を積んで他のメンバーを取りまとめるような社員
- 業務の質や職域を広げてプロフェショナルとして活躍できる社員
- 依頼された業務をコツコツと正確に行い、確実に成果を積み上げていける社員
上記の3つの想定人物像をグレードとして具体化し、人事制度改定のポイントして、次の2点をご提案しました。
- 管理者は、客観的な評価とそれに基づく給与や職位を与えられる
- 社員は、目標設定を行い自身の目指すべき方向や努力のポイントを可視化できるようにする
制度と評価のアップデートにより、正社員登用される社員も増加
E社の人事制度の改定は、3つの段階を踏んで進めていきました。
- 【ステップ1】
想定人物像をもとに社員のグレード定義を定め、正社員登用ルートを策定 - 【ステップ2】
今後の採用計画を踏まえて人件費の原資を策定し、数年かけて既存社員のスキルに応じた適正給与になるようなシミュレーションを実施 - 【ステップ3】
各グレード定義に基づく「評価基準」「目標設定シート」を作成し、年間評価のスケジュールを固める
E社の障害のある社員においては、これまで目標設定や人事評価を受けた経験のない方がほとんどでした。
そのため、混乱がないように人事制度改定についての説明会や目標設定の方法に関する研修を複数回実施。
管理者に対しても合理的配慮を行った上で、客観的な評価を付けるための研修を行い、丁寧に導入を進めていきました。
その結果、導入初年度は目標が抽象的であったり、評価の付け方にばらつきが見受けられることもありましたが、少しずつブラッシュアップされ、現在では正社員登用される社員も出ています。
障害者雇用においても適切な評価や昇進・昇格は必要不可欠です。
「同じ業務ばかりで変化がない」「頑張っているのに給与が上がらない」という状態では、仕事へのモチベーションが低下してしまい、退職などのトラブルにつながってしまいます。
自社ノウハウと豊富なご支援実績から、人事制度設計をサポート
障害者雇用における人事制度が長らく変わっていないということはありませんか?
障害者雇用においても、時世や社員の状況により、各種制度をアップデートしていくことが社員のモチベーション維持、健康経営において不可欠です。
障害者雇用の人事制度は他社との比較が難しく、どのように改定すればよいかお悩みの人事担当者も少なくありません。
自社で障害者雇用を行い、また多くの企業様をご支援しているパーソルダイバースならではのノウハウをもとに、人事制度設計をお手伝いいたします。
障害者雇用に関する法人向けサービスのご紹介です。
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