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厚生労働省は2021年6月1日時点での身体、知的、精神障害者の雇用状況について、障害者の雇用義務のある事業主からの報告を集計した「令和3年(2021年)の障害者雇用状況の集計結果」を公表しました。
集計結果のポイントをもとに、企業の障害者雇用における課題を考察します。

雇用数・雇用率は過去最高を更新

集計結果によると、民間企業の障害者雇用数は597,786人(対前年比+3.4%)、実雇用率は2.20%(同比+0.05ポイント)となりました。
法定雇用率達成企業の数は50,306社で、全体の47.0%となりました。

雇用数・実雇用率はコロナ禍においても過去最高を記録しました。しかし企業規模による雇用格差も見えています。
10年以上にわたり、障害者雇用の量的拡大は大手企業が牽引してきました。
大手企業の実雇用率は常に法定雇用率を上回り充足感がある一方で、中小企業は常に下回っているという状況が続いています。

【企業規模別】民間企業における障害者雇用状況

出典:厚生労働省「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」をもとに、当社にて企業規模で分け再集計
※従業員数を軸に1,000名以上を大企業、1,000名未満を中小企業と定義して分析。
※雇用数では大手・中小企業は半々だが企業数に約30倍の差がある。

精神障害者の雇用数は増加。しかし伸長率は低下傾向

障害種別ごとの雇用数の推移を見ると、精神障害者の雇用数は引き続き増加しており、身体障害者の雇用数は横ばいという傾向は例年と変わらない状況です。
しかしながら、2018年からの推移に着目すると、精神障害者の雇用数の伸び率はダウントレンドにあることが分かります。

民間企業における障害者雇用状況

出典:厚生労働省「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」をもとに、当社にて障害種別ごとに再集計

産業別の雇用状況:多くの業界で雇用は維持 雇用数が増加した産業も

雇用者数を産業別で見ると、ほとんどの産業では障害者雇用数が増加している状況の中、 宿泊、飲食、娯楽、生活関連サービス業は障害者雇用数が減少しています。 しかしこれらの産業では常用労働者数も減少していることが分かります。

一方、製造業では、常用労働者は減少しているものの、障害者雇用数は顕著に増加しており注目されるポイントです。

出典:厚生労働省「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」をもとに、当社にて産業別で分け再集計

障害者雇用市場のポイントと今後の課題

集計結果をもとに、現在の障害者雇用市場の主なポイントと今後の課題について考察します。

コロナ禍でも企業は障害者雇用に取り組んでいる

障害者雇用市場の全体傾向としては、新型コロナウイルス感染拡大の状況下において事業活動や業績面で影響を受けた企業も多い中、景気悪化による雇止め等は起きず、障害者雇用数が減少することはありませんでした。

法定雇用率の上昇に備え、精神障害者の雇用受け入れ、定着・活躍が課題に

2023年4月の法定雇用率引き上げに備え、企業側には引き続き障害者雇用を進めていくことが求められています。
その中で、精神障害者の雇用伸長がダウントレンドに入っていることが気になります。

障害者雇用市場の中で、身体障害者の多くは病気や事故などによる後天性であり、新規の労働者として障害者雇用市場に表れる数は今後も限られるでしょう。
一方、精神障害や若年層の発達障害者は今後も増加すると見られています。
社会全体で法定雇用を達成するためには、精神・発達障害の雇用を促進する必要があります。
一方で、精神障害の雇用伸長が下降してきた背景には、企業側の精神・発達障害者の雇用受け入れ・定着・活躍の推進がうまくいっていない、スピードが落ちている可能性があります。
精神・発達障害者の雇用は、身体障害者の雇用と比べ、企業側の雇用経験が浅く、安定就労・定着・活躍のためのノウハウが十分でない事も多いのではないかと思われます。

精神障害者の雇用受け入れのためには、障害への理解を深め、特性や配慮を踏まえた業務を創出・切り出しすること。
安定してはたらける環境をつくること。その上で、自社が採用・受け入れできる人材要件を確立することが求められます。
法定雇用率達成や戦力としての活躍のために、精神・発達障害の受け入れをいかに拡大していけるかが今後の重要なポイントとなるでしょう。