新型コロナウイルス感染症拡大や働き方改革の推進等の影響により、障害者採用においても「Web面接」(オンライン面接)を導入する企業が増えています。Web面接は「対面で行わない」という点が違うだけで、面接内容は通常の対面面接と変わりませんが、オンラインならではの準備や注意事項があります。そこで今回は、オンラインを活用するメリットや注意点、活用するツール、事前準備から実施までのポイントについて紹介します。
- 目次
-
Web面接(オンライン面接)の活用は障害者採用でも増加
Web面接(オンライン面接)とは、ZoomやSkypeなどのビデオ会議ツールを活用し、オンラインで行う面接のことです。以前から採用活動の効率化等の理由でWeb面接を活用する企業はありましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から本格的に導入した企業が増えているようです。
パーソルチャレンジ(現:パーソルダイバース)の調査では、新型コロナウイルスによる影響が続く中、今後の採用活動について「採用手法や人材要件、募集要項の見直しが必要」と考える企業が4割以上、そのうち、具体的に見直す内容として「企業説明会やセミナー、採用面接のオンライン活用」と答えた企業が最も多くなっています。不確実性の高い状況が続く中、採用の継続と効率化のため、Web面接の活用は今後も増えると思われます。
採用手法の見直しや変更の具体的な内容 (※複数選択) | 回答数 | 比率 |
---|---|---|
採用チャネルの変更 (有料職業紹介業者から、ハローワークへ切り替える、など) |
16 | 4.5% |
企業説明会やセミナーなどのイベント実施・参加の見直し、または取りやめ | 26 | 7.3% |
企業説明会やセミナー、採用面接のオンライン活用 | 81 | 22.8% |
採用プロセスの短縮、簡素化 | 21 | 5.9% |
その他 | 3 | 0.8% |
出典: パーソルチャレンジ(現:パーソルダイバース)「新型コロナウイルスによる障害者の採用・雇用施策への影響」
調査概要: 2020年6月2日~6月5日
実施対象: 障害者雇用を実施している企業の人事担当、雇用担当者
有効回答数: 355
WEB面接の活用メリットと注意点
障害者採用におけるWeb面接の活用は、主に2つのメリットがあります。
メリット(1):障害者の負担を軽減し、採用拡大に繋がる
障害によって移動が困難な障害者の場合、対面での面接は日程調整や当日の移動などで負担が生じることがあります。しかしWeb面接は面接場所に出向く必要がないため、移動の負荷や時間を抑えることができます。
テレワーク雇用を導入している企業であれば、オンラインで面接を実施し、採用後もそのまま在宅で勤務してもらうこともできるでしょう。これにより、オフィスのある地域から離れた遠隔地に住む人材の採用を進めることができ、採用拡大に繋がります。
メリット(2):求める人材への採用スピードと、マッチングの精度が向上する
Web面接は、面接場所の手配や準備、日程調整が容易なため、面接実施までの時間を大幅に短縮できます。採用したい人材にいち早くアプローチし面接することができ、採用スピードが上がります。
また、面接の様子を録画し、後で面接官自身や他の担当者が面接内容を振り返ることで、評価軸や評価ポイントのすり合わせ、改善点の洗い出しができます。また、面接に同席しなかった配属先の社員が求職者の様子を確認し、定着・活躍できる人材かを検討することもできるでしょう。
WEB面接の注意点は?
では、Web面接での注意点・デメリットはあるのでしょうか?具体的には「コミュニケーションが取りづらい」「通信トラブルの発生」の2つが挙げられます。
コミュニケーションが取りづらい理由として、Web面接ではカメラやマイク、PCやスマホなどの端末を介するため、対面時よりも相手の反応や表情をつかみにくいことがあります。従来の面接よりも面接官と応募者双方の聞き違いや聞き逃し、発言意図が誤って伝わるなどの“コミュニケーションロス”が生じ、相互理解に影響が出ることがあるでしょう。
また、Web面接ではインターネット環境による通信トラブルの発生にも注意しなければなりません。通信トラブルに関しては、企業側だけでなく、応募者側の通信状況による不具合も考えられます。「音声や画像が途切れる」「会話の内容や質問したいことが聞けない」などの通信トラブルが発生し、場合によっては中断し、後日に延期となる場合もあるでしょう。
WEB面接導入、活用の流れとポイント
それでは、Web面接の事前準備から面接実施までの流れとポイント、注意点を解説します。
- 導入: ツール選定は利用シーンに応じて選ぶ
- 事前準備: 事前にテストし、トラブル対処方法を決めておく
- 面接開始: コミュニケーションがしやすい環境をつくる
- 面接中: Webならではの配慮を忘れない
- 面接後: 面接を振り返り、オンライン面接力を上げる
導入: ツール選定は利用シーンに応じて選ぶ
Web面接で使用するツールは、利用シーンに応じて選定します。
ツールには用途別に「オンラインチャットツール」と「面接・採用に特化したツール」に分けられます。コミュニケーション機能のみ利用する場合は、ZoomやSkypeなどビデオ通話ができるオンラインチャットツールが一般的です。中でもZoomは設定や操作が分かりやすく、多くの企業で活用されています。
一方で、Web面接の導入を機に候補者やステータスの管理もシステム化したいという場合は、コミュニケーション機能に加えて、候補者のスケジュール調整や評価、採用分析など、面接や採用管理のために必要な機能が充実している「Web面接システム」と呼ばれるツールを導入すると良いでしょう。Web面接システムを選定する際には、次の5つのチェックポイントを参考にしてください。
- ブラウザ型か、プリインストール型か
- 応募者管理上、必要な項目が備わっているか
- 録画機能の有無
- カレンダーと連携した日程調整などスケジュール管理が可能か
- 面接後の評価が可能か
オンラインチャットツールと、面接・採用に特化したツール、いずれも無料版と有料版があり、使える機能も異なります。有料版のツールを導入する際はコストも確認しておきましょう。
事前準備: 事前にテストし、トラブル時の対処方法を決めておく
ツールの選定後は、操作方法のテストや通信トラブルの対処方法など、不測の事態を想定した事前準備を行います。スピーカーやマイクのテストなどの基本操作に加えて、カメラの位置や背景の映り込みのチェック、録画のテストなどを行いましょう。
また、面接時に「回線がつながらない」「ツールにアクセスできない」などのトラブルが発生した場合の対応方法をあらかじめ決めておくと、不具合が起きてもスムーズに対処できます。応募者には事前確認として、「使用するアプリをインストールする」「通信状況が安定している場所で面接を受けてもらう」など設定方法を知らせるとともに、回線がつながらない場合の緊急連絡先として電話やメールアドレスも伝えるようにしましょう。
支援機関の担当者にも同席してもらう
Web面接に対して不安を示す候補者には、支援機関やエージェントの担当者の同席を認めると良いでしょう。
その場合は応募者に、Web面接の日程とツールを案内する際、同席が可能であることを伝えます。また応募者の中で、自宅の通信環境が整っておらずWeb面接を受けられない人がいる場合、利用している支援機関があればその施設でWeb面接を受けてもらうことも提案してみても良いでしょう。
面接開始: コミュニケーションがしやすい環境をつくる
Web面接をスムーズに開始できるよう、まずは早めに準備し、ログインします。
Web面接に慣れていない応募者もいることを想定し、面接を始める前にアイスブレイクを設けて緊張を和らげるなど、コミュニケーションが取りやすい環境をつくりましょう。また、面接の開始時には、応募者にこれから行う面接の目的と全体の流れを説明し、大体の時間配分を伝えます。応募者も面接内容を把握している方が落ち着いて話せるでしょう。また、余裕を持って質問・回答ができるよう、面接時間がタイトにならないよう、ある程度予備の時間を確保してきます。
面接中: WEBならではの配慮を忘れない
面接中に注意したいのは、「Webならではの配慮」を忘れないことです。
対面での面接でも、Web面接でも、聞くべき内容は基本的に同じですが、オンラインによるWeb面接ではタイムラグが発生する場合があるため、「いつもよりゆっくり」「間を取って話す」ことが大切です。面接官が落ち着いて話すことで、候補者もリラックスして参加できるでしょう。
他にも、Web面接だからこそ気を付けたいのが「目線」です。対面時のように「モニターに映る顔」を見て話すと、Web面接では目線がずれて、相手には違うところを見ているように映ってしまいます。応募者と目線を合わせるためには、「画面」を見て話すのではなく「カメラ」を見るようにします。Web面接では表情が伝わりにくいため、口角を上げた笑顔を意識したり、頷きやジェスチャーを多く取り入れたり、応募者の話を聞いているという姿勢を示すと良いでしょう。
また、Web面接中は周囲の音にも注意します。「スマホなどのアラームは切る」「キーボードを操作せず紙とペンを用意する」など、双方が面接に集中できる環境づくりに配慮します。
面接後:面接を振り返り、オンライン面接力を上げる
面接終了後、面接官や他の担当者と「振り返り」を行いましょう。
録画をもとに内容を客観的に振り返ることで、次回の面接への改善点を確認できるでしょう。面接中の表情、質問の内容や順番、発言のスピード、本音を引き出すための聞き方や話し方、評価軸などについて考えるきっかけとなり、面接スキルの向上にもつながります。
まとめ
障害者採用でも導入が進んでいる「Web面接(オンライン面接)」。障害者の負荷を軽減し、採用拡大や面接の効率化、採用競争力の向上につながります。対面での面接とは違う、オンラインならではの注意点もあるため、今回の記事を参考にWeb面接の導入、採用強化に取り組んでみてはいかがでしょうか。