パーソルダイバースが実施した調査の結果から、企業の障害者採用に関する実態・意識が明らかになりました。法定雇用率2.7%への引き上げとそれ以降に向けた企業の現状と課題、障害者の成長や活躍に向けて考えるべきこととは。パーソルダイバースで企業の障害者雇用を支援する担当者が、支援現場での実情を踏まえて解説します。

パーソルダイバース株式会社
コンサルティング事業部 マネジャー
田村一明(臨床心理士 公認心理師)

臨床心理士として心療内科クリニックやNPO法人にてカウンセリングやリワーク支援に携わる。パーソルダイバース入社後は障害のある方の就労専門相談員として従事。現在はその経験を活かし、障害者雇用促進を考えている民間企業向けに、採用の為の受入準備、採用、雇用後のマネジメントまでを、現場に根差した方法論で幅広くご支援している。

目次

調査から見えてきた企業の障害者採用を取り巻く実態と傾向

パーソルダイバースは2025年10月、障害者のための転職・就職支援サービス「dodaチャレンジ」に登録する企業の障害者採用担当者501名を対象に、「企業の障害者採用に関する実態・意識調査」を実施しました。調査結果から、企業の障害者採用に対する姿勢と方針、傾向と実態が見えてきました。

法定雇用率の達成状況と、法定雇用率2.7%の達成見込み

グラフ:法定雇用率の達成状況と、法定雇用率2.7%の達成見込み

現在の法定雇用率2.5%以上を達成している企業は、半数をやや上回る52.7%でした。
2026年7月に引き上がる法定雇用率2.7%に対して「達成」と答えた企業は47.4%となりました。(「達成見込み」(26.2%)、または「既に達成」(21.2%)の合計)
一方で、達成を「困難」としている企業は、「困難」「やや困難」を合わせて52.6% となり半数をやや上回っています

障害者採用拡大への意向

 グラフ:障害者採用拡大への意向

こうした中で、障害者の社員数を増やすだけでなく、採用対象や採用地域、配属先などを広げることも含めて、 75.8% の企業が障害者採用を「拡大したい」という意向を示しています。(「拡大したい」が35.3%、「できれば拡大したい」が40.5%)。
企業側も、法定雇用率の上昇や、障害者労働市場の変化を受けて、障害者採用の拡大の必要性を感じていることがわかります。

障害者採用の方針

■現在の配属先

グラフ:現在の配属先

現在雇用している配属先は自社内の一般部署が最多(86.2%)となりました。配属先部門は、「総務部門」(68.3%)、「人事部門」(58.3%)など、管理部門への配属が多いことがわかります。特例子会社や、雇用代行サービス等の「自社以外」での雇用は少ない状況です。

■障害者採用の方針

グラフ:障害者採用の方針

また、企業が障害者採用をする際の目的は、「自社の収益業務で活躍してもらうため採用する」が最多(52.3%)となっています。「法令順守(雇用率達成)のみを重視し、その他は十分検討できていない」という回答は17.6%にとどまっています。この傾向は「今後重視したい方針」でも同様となっており、障害者にも収益貢献を期待している様子がうかがえます 。

企業の求める人材の志向性、企業側とはたらく個人側のギャップ

全体の傾向として、企業は障害者雇用の採用を拡大したいという意向を持ち、自社の収益業務での貢献を望む状況で、どのような人材を求めているのでしょうか。また、はたらく障害者側の志向性はどのような傾向にあるのでしょうか。

企業が求める障害者の「はたらく志向性」

グラフ:企業が求める障害者の「はたらく志向性」

障害者の就業への意向や目的、職業経験は様々であるため、企業側がどのような意向を持つ人材を採用したいと考えているのかもあわせて調査しました。
結果、企業が最も求める人材は「安定・定着志向」を持つ人材が45.1%と最多で、「成長・活躍志向」を求める割合は18.2%、両者の中間に位置する「バランス志向」が36.7%となっています。

はたらく障害者の志向性とのギャップ

グラフ:企業の求める人材の志向性と、障害者のはたらく志向性の違い

当社が過去に調査した「障害者のはたらく志向性」(※1)と、企業が求める人材の志向性を比較してみると、「成長・活躍志向」の人材に関して、企業が求める割合(18.3%)と障害者側の意向の割合(38.1%)では約20%の差があることがわかりました。

採用後の成長・活躍支援の不足、事業貢献を見据えた取組みに課題

■障害者採用を進める上での課題

グラフ:障害者採用を進める上での課題

障害者採用を進める上での課題では、「社内理解と受け入れ体制の構築」(74.5%)が最も多く、
続いて「母集団の形成」、「選考時の見極め」、「採用後のミスマッチ」、「業務内容の決定・創出」と、選考・採用時に関する課題が選ばれています。
一方で、「評価や処遇・待遇の見直し、改善」、「障害のある社員のキャリア形成」は20%台にとどまっており、採用後の成長・活躍・キャリア形成を見越した課題意識は不足している可能性があります。

■障害者採用に当たって、実施している取り組み

グラフ:障害者採用に当たって、実施している取り組み

採用時の求職者への取り組みでも、「任せたい業務内容や役割の決定・明示」(61.1%)が高く、「キャリアパスの説明」(25.9%)と「成長支援制度の提示」(18.4%)の実施割合は比較的に低い結果となりました。採用活動に直結した取り組みは行えているものの、中長期での成長・活躍支援までは、まだ充分に対応できていない様子がみてとれます。

これからの障害者雇用、「量的拡大」と「質の向上」の両立へ向けた課題

ここまでの調査結果から見えてきたことをまとめてみると、

  • 法定雇用率2.7%の達成は「困難」が52.6%、それでも75.8%の企業が“採用拡大”に意欲的
  • 企業が最も求める人材は「安定・定着志向」、成長・活躍志向を求める割合は18.2%にとどまる(※はたらく障害者側の意向と約20%のギャップがある)
  • 採用後の成長・活躍支援やキャリア形成支援の取り組みは不足、事業貢献を見据えた体制作りに課題

ということがわかります 。

「雇用の量の拡大」から「雇用の質」との両立を目指し、社員の「成長・活躍」による事業貢献を見据えた採用活動と支援が重要となりそうです。


ここからは、障害者雇用の現場における企業のリアルな実感と、企業支援の立場から見える状況に関して、パーソルダイバースで法人企業の障害者雇用支援を担当する田村一明が解説します。

障害種別による先入観をなくし、業務のプロセス分解、マッチするスキルセットとの適合

法定雇用率の引き上げに対しては、2.7%以降も引き上げが続くであろうという危機感を、多くの企業が持たれています 。その中で、採用の拡大、同時に自社事業への貢献、安定就労の実現から成長・活躍まで見据えると、課題を抱えている企業が多いです。

安定就労と活躍を実現しようとすると、どうしても現状ある業務にフィットする人材を探してしまい、採用競争の激化も免れません。雇用の拡大を考えると、対応業務・職域の拡大も同時に必要となってきます。
まず重要になってくるのは、障害種別に対するバイアスを外すことです。「こういった障害がある方には、この業務は無理なのではないか?」という思い込み ・先入観をなくしていくことがとても大切です。

業務をプロセスごとに分解し「ここの部分の作業なら、こういったスキルセットがあれば対応が可能」という形で、マッチングできる幅・領域を増やしていくことがポイントです。対応業務・職域が拡大すると、必然的に雇用が可能となる障害者も増え、活躍できる幅も広がっていきます。

個人にフォーカスし多様性を取り込む、外部支援の活用も

障害者雇用では、これまで一緒にはたらいたことのある障害者の姿を基にイメージを形成してしまい、自社で蓄積した知見だけでは限界が生じることがあります。こうした状況を補うためには、地域の支援機関との連携や、外部ジョブコーチの活用など、社外の支援を取り入れることが非常に有効です。

企業がまず安定・定着志向の採用を重視するのは、社内理解や受け入れ体制の整備を考えると、ある程度自然な選択といえます。そのうえで、成長・活躍志向の人材を採用し、事業への貢献まで実現できている企業を見ると、共通して「障害のある方一人ひとりに丁寧に向き合っている」という特徴が見られます。

さらに、障害者雇用に限らず、少子高齢化により労働力が減少する中で、柔軟なはたらき方の構築や多様性の受け入れができなければ、事業の持続は難しくなりつつあります。多様性を積極的に取り込めている企業には、「できない点」を見るのではなく、「どうすればできるようになるか」を前向きに考えるコミュニケーションの風土が根付いているように感じます。

障害という大きなバイアスを取り払い、個々の特徴や強みに目を向け、対話と工夫を重ねることが、結果として障害者の視点や知見を企業価値の向上につなげることにもなります。

こうした積み重ねこそが、障害者雇用の“量”と“質”の両立を実現し、企業の成長を持続させる力となっていくはずです。