更新日:2025年11月4日/作成日:2019年4月12日

障害のある方の雇用を進めることは、企業価値の向上や多様性のある組織作りなど、多くのメリットをもたらすものでもあります。また、雇用全体の方針を見直すきっかけにもなり、業務の効率化や生産性の向上に繋がるなど、さまざまな効果をもたらします。

その一方で、「障害者雇用は法的義務だから行う」と考えている企業が多いのも現状です。障害者を初めて雇用する企業では、さまざまな懸念や不安を「デメリット」として受け取る場合もあるでしょう。

そこで今回は、障害者雇用におけるメリットとデメリット、雇用を進めるにあたっての問題点をメリットに変えるためのポイントについて紹介します。

目次

障害者雇用とは

障害者雇用とは、通常の雇用枠とは別に障害のある方(障害者手帳の所持者)のみが応募可能な雇用枠を作り、採用・雇い入れを行うことを指します。

この制度は、障害者雇用を通じて障害者の社会参加を促進することで、「相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現(障害者基本法第1条)」を目的としています。
障害者雇用は、障害者雇用促進法により企業義務が定められており、法定雇用率が未達成となった場合は納付金が徴収されます。

2025年現在の法定雇用率は民間企業の場合2.5%となっており、今後2026年7月に2.7%まで引き上げる方針が厚生労働省より発表されています。

【2025年最新】障害者雇用の状況

厚生労働省が2024年12月に発表した「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、2024年は雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を記録しました。

雇用障害者数は 67万7461.5人で対前年比5.5%増加、実雇用率は2.41%で、前年比0.08ポイント上昇しています。身体障害者・知的障害者・精神障害者すべて増加しており、その中でも精神障害者が前年比15.7%増で最も伸び率が高い結果となりました。

雇用されている障害者の数は伸びている一方で、法定雇用率達成企業の割合は46.0%で、前年比 4.1ポイント低下しています。これは2024年4月に法定雇用率が2.3%から2.5%に変更になったことも影響していると考えられます。

企業にとっての障害者雇用のメリットとは

企業にとって障害者を雇用することは、法的義務を果たすための大変重要な取り組み事項ではありますが、それ以外にも多くのメリットを生む可能性を秘めています。障害者雇用によって得られるメリットを次の5つにまとめてみました。

  1. 多様な人材の採用拡大につながる
  2. 多様性のある企業文化、組織作りができる(DEI推進)
  3. 社会的責任(CSR)を果たす、企業としての価値創出・イメージアップにつながる
  4. 業務を見直し、最適化・効率化を図るきっかけになる
  5. 外注費等のコストを削減できる

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多様な人材の採用拡大につながる

障害の特性をしっかりと理解し、適切な職務配置を行うことで、障害者が定着してはたらくことができます。さらに適切な人事評価制度やマネジメントによって生産性が向上し、戦力として活躍できるようになります。

近年のIoTやツールの進化によって、障害者が担うことができる仕事の幅が拡大し、円滑なコミュニケーションも可能になってきているため、マネジメントでの負荷も軽減されつつあります。また、テレワーク雇用など、はたらく場所や勤務形態の選択肢も徐々に増えているので、はたらきやすい環境の中でより生産性を向上させることも可能です。「障害があってもはたらける」だけでなく「障害特性を活かして貢献する」ことができるようになりつつあります。このような社会的な変化も後押しとなって、障害者の活躍機会はさらに高まっていくでしょう。

また、障害特性による突出したスキルや強みを持つ人材も少なくありません。能力の凸凹が大きい障害者は、これまでマイナス面だけに着目されるケースがほとんどでした。しかし近年では、能力の秀でている部分に着目することで、一般雇用よりも戦力になる人材を確保しやすいケースがあることも分かってきています。

約7割の担当者が「企業活動に貢献している」という調査結果も

パーソルダイバースが行った独自調査では、約7割の障害者雇用担当者が「企業活動に貢献している」と成果を認識しているという調査結果もあります。

障害者雇用の課題解決への具体的な取り組みが、今後の採用拡大や企業の価値向上のポイントとなると言えるでしょう。

多様性のある企業文化、組織作りができる
(DEI推進 ※DEI=ダイバーシティ、 エクイティ&インクルージョン)

ダイバーシティの重要性は社会的にも広がっていますが、企業の雇用においても多様化が一層進むであろうと予想されます。ダイバーシティとは性別や人種の違い、障害の有無を問わず、多様な人材を活用しようという考えです。障害者と共にはたらくことで「違い」に気付くことができ、お互いの理解を深め配慮しようという助け合いの空気を育むことができるでしょう。また、新しい発想や視点を発見することもできます。

障害の特性や職務能力などから、障害者の中にも「個性」があるという事を知ることができるはずです。障害者雇用は企業内に真の多様性を生み、より強固な組織作りを可能としてくれます。
ダイバーシティを推進し、障害者にとってはたらきやすい環境を整えることは、障害のない社員にとってもはたらきやすい環境づくりにもつながります。

例えば、障害者雇用推進に当たり「残業配慮(定時退社)」を整えることは、ワークライフバランスを重要視する若手社員にも還元されます。また、「定期通院による有給取得」は育児を伴う従業員に、「突発的な休み、遅刻・早退への同僚の理解・協力」は親の介護を伴う従業員にとって還元対象となります。

「リモートワーク転換への移行」はシニア人材(※年齢と共に上がる病気入院による休職リスク)へ還元されるなど、障害者雇用をすすめることは、多くの社員にメリットをもたらし、企業の採用競争力の向上につながる可能性があります。

チャレンジ ラボを運営するパーソルダイバースでは、パーソルグループの障害者雇用推進を担う特例子会社として、約2,000名以上の障害のある社員が活躍しています。多様な社員が活躍できる職域の創出や、安定して効率的に業務に取り組める仕組みの開発を行い、「DEI」を推進しているのが特色です。これら自社で培った障害者雇用経験とノウハウをもとに、障害者雇用に取り組む企業への採用支援事業を提供しています。
その一つ、国内最大級の登録者数を持つ障害者就職・転職支援サービス「dodaチャレンジ」では、高いマッチング精度で安定就労・活躍まで見据えた採用活動を徹底サポートします。

※2024年度厚生労働省「人材サービス総合サイト」

社会的責任(CSR)を果たす、企業としての価値創出・イメージアップにつながる

近年、企業経営の観点においては「ダイバーシティ&インクルージョン」や「働き方改革」という概念が注目されています。社会課題解決は、「社会の公器」である企業の果たすべき役割として求められるようになりました。

企業が障害者を雇用するということは、障害者が活躍できる場を提供するという意味を持つため、大きな社会貢献につながります。障害者雇用率制度とは、障害者が社会保障費を受給する立場から、自ら労働して対価を得て自立し、社会で活躍できるようにするため設けられた制度です。障害者雇用を積極的に取り組むことによって、「社会的責任を果たしている企業」として、企業価値の向上につなげる可能性を秘めています。

アメリカでは、DEI(Disability Equality Index=障害者平等指数。障害者雇用の取り組みを0点から100点までで算出・評価するもの)の優良企業リストが毎年発表されており、障害者雇用への取り組みが企業価値を図る指標の一つとして認識されるようになっています。また日本でも、障害者雇用 に限らず 、非財務資本(ESG指標)が企業価値(PBR: 株価純資産倍率)に及ぼす影響を可視化している 企業もあり ます。今後は日本でも、障害者雇用が価値として評価されるようになるかもしれません。

業務を見直し、最適化・効率化を図るきっかけになる

  • インターネットや文献資料で調査する
  • 資料やデータをスキャン・入力する
  • データをとりまとめて更新する
  • リストを抽出・作成する
  • 資料を送付する
  • Webサイトに情報を掲載・更新する

業務を創出するためには、日常の業務の中で何気なく行っている作業を内容や行程、進め方などの視点で改めて見直す必要があります。その過程が、障害者のためだけでなく、部署や会社全体の業務の最適化、効率化を図るきっかけとなるのです。

フラットな視点で業務を洗い出してみると、単純な事務作業に追われて何時間も残業していることが判明するなど、問題が可視化されることで、業務改善につながるケースも少なくありません。

業務プロセスを改善し、業務効率化を図ることで、売り上げ・利益の向上につながります。

外注費等のコストを削減できる

データ入力や資料の送付など、これまで外注を行っていた業務を障害者雇用で雇用した人が担当することで、外注費等のコストを削減できる可能性があります。内製化できれば、外注する際の事務手続きやコミュニケーションコスト、発注先に合わせたツールの導入などの手間を減らすことができます。

企業が障害者雇用を行わないことによる影響

企業は法定雇用率に基づいた障害者雇用を求められており、法定雇用率を達成できない場合は悪影響やリスクが生じる可能性があります。企業が障害者雇用を行わないことによる主な影響は下記の3つです。

  1. 株主への説明責任
  2. 企業ブランディングの棄損
  3. 公共事業受注への影響

それぞれ詳しく解説します。

株主への説明責任

従業員100人超の事業主であり、法定雇用率を下回っている場合には、不足1人につき月額5万円納付しなければいけません。つまり、年間にすると不足1ポイントにつき60万円の負担増になります。株主への説明責任が生じる可能性があり、株主訴訟に発展した過去事例もあります。

法定雇用率は2026年に2.7%に引き上げられる予定であるため、現在達成できている企業にとっても、他人事ではありません。

企業ブランディングの棄損

法定雇用率が達成できていない状況が続くと、ハローワークから「雇入れ計画作成命令」が発令されることがあります。計画作成後も状況が改善されないようであれば、行政指導が行われ、それでも改善が見られないようであれば最終的には企業名が公表されます。

社名公表ともなれば、企業のブランディングは棄損され、新卒採用・キャリア採用などにも影響が出るでしょう。

公共事業受注への影響

法定雇用率の達成が公共事業受注の条件となるケースもあるため、公共事業受注にも影響が出る可能性があります。

例えば、大阪府では「大阪府障害者等の雇用の促進等と就労の支援に関する条例(ハートフル条例)」を制定しており、入札条件が法定雇用率の達成となっています。また、静岡県では「障害者雇用企業に対する優遇制度」があり、障害のある人を積極的に雇用する事業所は、入札等の優遇が受けられます。

このように企業が障害者雇用を行わないことにより、さまざまな影響が予想されます。

企業が考える障害者雇用の問題点や課題(デメリット)

「障害者雇用」と聞くと、障害のあるメンバーの管理コストや現場への負担など、問題点やデメリットだけを思い浮かべる企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
特に、障害者と共に働いたことがない配属先の社員が、知識不足によって障害者を受け入れることを不安に感じ、そこから問題や課題が生じているケースが多く見られます。そのようにして生まれる「障害者雇用のデメリット」が、雇用を促進する足かせとなっているのです。

雇用するに当たっての課題

「令和5年度 障害者雇用実態調査結果報告書」によると、障害者を雇用する際の課題としては、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者ともに、「会社内に適当な仕事があるか」が最も多くなっています。障害のある方がどのような仕事ができるのかを知らないために、生まれる課題であると分析できます。

順位 項目 身体障害者 知的障害者 精神障害者 発達障害
1

会社内に適当な仕事があるか

77.2% 79.2% 74.2% 76.9%
2

障害者を雇用するイメージやノウハウがない

41.7% 51.6% 49.6% 49.7%
3

職場の安全面の配慮が適切にできるか

47.4% 38.1% 33.9% 35.6%
4

採用時に適性、能力を十分把握できるか

35.5% 40.0% 42.2% 42.9%
5

従業員が障害特性について理解することができるか

24.2% 36.5% 38.7% 41.2%

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また、「平成30年版厚生労働白書」によると、障害や病気を有する者が職場にいる場合の影響として「仕事の進め方について職場で見直すきっかけになった」「各人が自分のライフスタイルやはたらき方を見直すきっかけとなった」と答える一方、「仕事の負担が重くなった」「職場で社員の間に不公平感が生まれた」といったマイナスの意見も多く集まりました。良い影響を受けつつも、障害のある方と共にはたらくという点で真の理解を深めることは容易ではないということがうかがえます。

障害や病気を有する者が職場にいる場合の職場への影響

障害者雇用に対する課題(当社調べ)

パーソルチャレンジ(現:パーソルダイバース)が2022年8月に実施した「障害者雇用の課題に対する取り組みと成果に関する調査」の結果について、「社内意思決定ステージ」「採用ステージ」「受け入れ環境や定着ステージ」の雇用ステージに分けて紹介します。

社内意思決定ステージに課題がある(複数回答可)

「社内意思決定ステージ」に課題がある企業は80.7%あり、既に検討段階で多くの企業が悩みを抱えていることが分かります。具体的には、「配属先の受け入れや管理上の負担増」と「会社全体の雇用理解促進」について6割近い企業が課題を感じています。

採用ステージに課題がある(複数回答可)

社内での雇用方針が決まった後の「採用ステージ」については、91.3%もの企業が課題を抱えています。背景には、はたらき方の変化やDXの推進などによって、求める能力や適正、人物像を見極めることの難しさがあります。

受け入れ・定着ステージに課題がある(複数回答可)

「受け入れ環境や定着ステージ」に課題がある企業は72.8%にのぼります「職場の安全面の配慮」「人事制度(雇用条件、評価指標、キャリアパス)」などが上位にありますが、どちらも30%以下の数字であり、他のステージに比べて、多様な課題があることが見えてきます。

障害特性は人によって異なるため、必要となる配慮も多岐にわたることが背景として考えられます。

また、「合理的配慮の提供」や「労働条件等の提示」については法的義務であるため、課題として認識されにくいといった側面もあります。

障害者雇用における2つの問題点

上記の調査結果を踏まえ、障害者雇用における問題点は次のようにまとめられます。

採用を進める人事側の課題

  • 社内の理解が得られない
  • これから雇用をどのように進め、広げていったらいいのか分からない
  • 適性や能力を把握することが難しい
  • 必要な人材を雇用できるのか
  • 障害者が従事する業務としてどのようなものがあるか、業務を切り出せるのか
  • 雇用後に安定就業・定着できるのか

配属先の管理者の課題

  • 何か問題が生じたらどう対応すべきなのか、社内のどこに相談すればいいのか、会社は何をやってくれるのか
  • 障害についての知識が不足している
  • どのような配慮が必要なのかが分からない
  • 必要な配慮事項や対応策が人によって異なる
  • 配属先の受け入れや管理上の負担が増加する
  • 障害者に任せられる業務がない
  • どのようにコミュニケーションをとり、管理していけるのかが分からない

多くの企業で「雇用を進めたいが社内の理解が得られない」という課題を抱えています。特に、これから本格的に障害者雇用に取り組む企業の場合は、知識やノウハウが多くないこともあり、「雇用の方針や進め方に対する社内理解をどのように伝え、理解してもらえば良いのか分からない」という声も耳にします。

一方、雇用現場側では「どのような特性があるか?」「どのような業務がマッチするのか?」「どのようにマネジメントするべきなのか?」といった、「障害者とはたらく」ための知識や情報が足りていない様子が見られます。

つまり、知識やノウハウなどの情報不足からくる不安と、その結果として生じる「社内理解」への障壁が、雇用を進める上で大きな問題となっていると言えます。

職場理解が進まない!障害者雇用のご支援事例・実績

障害者雇用のデメリットをメリットに変える3つのポイント

障害者を雇用することは法的義務を果たすだけではなく、企業にとって多くのメリットを生みます。雇用を進める際に生じる問題やデメリットをメリットに変換し、社内に浸透させることで、社員の理解を得ることができるでしょう。デメリットとして受け取られやすい問題をメリットに変える3つのポイントをご紹介します。

会社の方針を明確にして、社内理解を深める

社内で障害者雇用について説明をする際、単に「障害者の雇用は義務だから」「●●障害の特性は△△で…」といった説明するだけではなく、企業の社会的責任を果たすための義務であることを説明した上で、「なぜ雇用するのか」「どのような方針・計画をもって雇用を進めるのか」を丁寧に説明しましょう。

重要なのは、障害者の雇用方針が、企業理念や雇用全体の方針と一致していることです。障害者雇用に取り組むタイミングで、企業理念や社会への提供価値、雇用全体方針を改めて見直し、その先に障害者雇用が位置付けられているかを確認しましょう。

現場と協力して障害のある社員のサポート体制を作る

現場が抱える不安を解消するためにも、人事を中心に会社全体でサポート体制を作ることが大切です。現場からあがってくる不安や疑問にしっかり答えられるようにしましょう。サポートの内容は、現場責任者との情報共有、配属の決定方法、面談の時期と回数、トラブルが発生した場合の相談窓口の設定、業務目標の設定や評価などが考えられます。

その上で、下記のような詳細な内容まで決めておけると、現場の担当者は安心してマネジメントをすることができるでしょう。

  • 採用時に、障害者の特性や職務能力、必要な配慮事項、管理・コミュニケーション時のポイントなどの情報を配属現場の担当者に漏れなく伝え、理解させる
  • 入社後、配属前研修を人事部門主体で行い、特性や職務能力などを見極め、現場管理者に共有する
  • 面談は1~3ヵ月に1度、人事部で定期面談を行い、職場での人間関係や体調面についてヒアリングした上で、現場の管理者にフィードバックする
  • 人事部内に相談窓口を設け、健康面でのトラブルが発生した場合は、支援機関と連携の上で人事部門が主に対応する
  • 初めて雇用に取り組む場合は、雇用コストを現場ではなく人事部門が一時的に負担する

本人と話し合い、障害特性や能力、配慮事項をきちんと把握して現場と共有する

障害のある社員に合理的配慮として必要なサポートを行うためには、採用時や現場に配属される前に本人と話し合い、その障害特性や能力、どのような点に配慮して欲しいのかを把握しておく必要があり、その情報は本人の了解を取った上で現場の管理者やスタッフとも共有します。

初めて障害者を受け入れる現場や管理者に対しては、障害者受け入れに関する研修会を開くといいでしょう。研修会では、障害特性についての基本的知識、日々のコミュニケーションやマネジメント、健康面でトラブルがあったときの対応方法、人事側のサポート体制などについて伝えておきます。また、配属部署以外の社員も対象に、業務の取り組みの共有や、障害者との相互理解を深める機会を定期的に設ければ、社内理解の浸透に効果的です。

障害者雇用で受け取れる助成金

「障害者雇用促進法」に基づき、企業は雇用を推進するに当たり、国からさまざまな助成金を受け取ることができます。代表的なものをいくつか紹介します。

制度名称 対象 目的
特定求職者雇用開発助成金
(特定就職困難者コース)
身体障害者・知的障害者・精神障害者・60歳以上の方、母子家庭の母等 就職が難しいとされる求職者の雇用促進を促すために事業主に支給される助成金
特定求職者雇用開発助成金
(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)
障害者手帳を持たない難治性疾患患者・発達障害者 発達障害者や難治性疾患患者の雇用を促進し、職業生活上の課題を把握する
キャリアアップ助成金
(障害者正社員化コース)
障害に応じた雇用管理や雇用形態の見直し、柔軟なはたらき方の工夫などを行っている事業者 障害者の雇用を促進するとともに、職場定着を図る
トライアル雇用助成金 障害者手帳を有する身体障害者・知的障害者・精神障害者 ※要件あり 対象者の適性を確認し、継続雇用の促進とともに、企業の不安解消を図る
障害者雇用納付金制度に基づく助成金 障害者の雇用にあたって、施設設備や適切な雇用管理を図るために「特別な措置」が必要な事業者 事業者の一時的な経済的負担を軽減し、障害者の雇用促進や職場定着を図る

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金とは、高年齢者や障害者など、就職が特に困難とされる方を「継続雇用」として雇い入れる事業主を対象とした助成金です。受給の際には、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介による雇い入れが必要となります。
現在合わせて7種のコースがありますが、障害者雇用に関わるものは次の2つです。

特定就職困難者コース

60歳以上の高年齢者や身体・知的・精神障害者、母子家庭の母等、就職が難しいとされる求職者の雇用促進を促すために事業主に支給される助成金です。

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

障害者手帳を持たない発達障害者、または難病患者について、継続雇用を前提として雇い入れる事業主に対して助成される制度です。
事業主は対象労働者について配慮事項などを報告し、雇い入れから約6ヶ月後にハローワーク職員等が職場訪問を実施します。

障害者手帳を持たない方が対象となるため、障害者雇用にて入社となった方に適用できるケースは稀です。コース名称で誤解しないよう注意が必要です。

キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者の正社員化・処遇改善等に取り組んだ事業主に対して助成を行うものです。
障害のある有期雇用の労働者を正規雇用に転換した事業主に対して、助成金が支給されます。

※2021年4月より、障害者雇用安定助成金(障害者職業定着支援コース)の対象内容が「キャリアアップ助成金」に統合・整理されました。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金(障害者トライアル雇用)とは、障害者を原則3ヶ月間(精神障害者は最大12ヶ月間)試行的に雇用することにより受給できる助成金です。一定期間の契約により、本人の適性や能力を見極めることで、安定した継続雇用へとつなげることを目的としています。
一定期間のトライアル雇用で問題なければ継続雇用、継続雇用が難しい場合や本人が継続を希望しない場合は契約終了とすることもできます。多様化するニーズやはたらき方に伴って、トライアル雇用は継続雇用時のミスマッチを防ぐために、有効な制度の一つと言えるでしょう。

なおトライアル雇用には、対象者や雇い入れの条件が定められています。制度導入を検討する際には、都道府県労働局やハローワークに確認を取ることをおすすめします。

障害者雇用納付金制度に基づく助成金

障害者雇用納付金制度に基づく助成金とは、施設設備や雇用管理について「特別な措置」を行わなければ、障害者雇用の雇い入れや雇用継続が困難な場合に受給できるものです。

介助者の配置に対して支給される「障害者介助等助成金」や、障害特性による通勤等の課題を軽減・解消するための措置に対する「重度障害者等通勤対策助成金」などがあります。

助成金については下記記事もご覧下さい。

障害者雇用についてのよくある質問

ここからは、障害者雇用についてのよくある質問について紹介します。

障害者雇用の募集を行う方法とは?

障害者雇用の募集を行う方法としては、主に下記が挙げられます。

  • ハローワークの利用
  • 就労移行支援事業所や特別支援学校との連携
  • 求人サイトの利用
  • 障害者専門の支援サービスの活用

それぞれ特徴があるため、悩みやニーズにあわせた方法を選びましょう。中小企業など障害者雇用が初めてで、何から手をつけて良いか分からない場合は、「障害者専門の支援サービスの活用」がおすすめです。

パーソルダイバース株式会社では、雇用計画の戦略立案から定着支援まで、幅広い支援やコンサルティングを提供しています。人材紹介や採用代行はもちろん、組織コンサルティング、部門づくり支援、定着・活躍支援、研修サービスなど幅広くサポートいたします。

障害者雇用市場や現場課題を熟知した質の高い支援をお求めの方は、ぜひお問い合わせ下さい。

貴社の状況・職場環境を分析し、障害者採用のお手伝いをします。パーソルダイバースの法人向けサービスを確認する。

障害のある方が障害者雇用ではたらくメリット・デメリットとは?

障害のある方は、主に一般雇用ではたらく選択肢と障害者雇用ではたらく選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを踏まえて、自身にあったはたらき方を選択することが重要です。

障害のある方が障害者雇用ではたらくことのメリット・デメリットは以下の通りです。

【メリット】
●はたらきやすい職場環境が整っている
●手帳なしで就活するより選択肢が広がる
●定着しやすい

【デメリット】
●求人数が一般雇用枠より少ない
●活躍の幅が限定される場合がある

障害者雇用枠ではたらくメリット・デメリットや障害者雇用枠の条件については、下記記事でも詳しく紹介しておりますので、ご参考下さい。

まとめ:メリットを生むために、まずは社内理解の促進から

障害者雇用の推進は、障害者と一緒にはたらくことへの理解を深めることから始まります。理解を深めるためには、障害の特性や配慮の仕方などについて正しい知識を持ち、障害者と共にはたらくことで企業が得るメリットについて浸透させることが重要です。

雇用後は、定着に向けて人事と現場が情報共有や連携を密に行っていきます。社内の理解を深められているか、受け入れ態勢を整えているか否かで、雇用拡大や、採用した社員の定着に大きな違いが出ます。現場に任せるだけでなく、人事側でサポート体制を作り、しっかりと支えるようにしましょう。

企業が障害者を雇用する上では、さまざまな問題点や課題も生じます。それらのデメリットをメリットに変えるポイントなども参考にしながら、まずは自社の雇用方針を明確にし、現場への支援体制をつくるところから始めてみて下さい。

◆監修者
パーソルダイバース株式会社
法人マーケティンググループマネジャー
安原 徹

経歴

新卒でベンチャー系コールセンター会社に入社し、営業およびスーパーバイザー業務に従事。その後、株式会社エス・エム・エスにて看護師の人材紹介業務および医療・社会福祉法人の営業を担当。2016年にパーソルダイバース株式会社に入社し、キャリアアドバイザーおよびリクルーティングアドバイザー(RA)として勤務。関西エリアにおける精神障害のある方のご支援先の開拓に注力。2021年に関西RAマネジャーに着任。2023年より中部・西日本RAマネジャーを経て、現在は法人マーケティンググループのマネジャーとして勤務。