更新日:2025年12月26日/作成日:2021年1月1日
障害者雇用を進めるにあたって最も多く聞かれる課題の一つに「業務創出・切り出し」があります。当社にも「任せる仕事がない」「専門性の高い業務ばかりで切り出せない」「障害者を配置した経験のない部署での業務の創出方法が分からない」といった相談が多く寄せられます。業務切り出しは、障害者雇用のポジション創出のみならず、企業の生産性向上にも繋がる取り組みです。そこで今回は、採用活動や雇用後の定着、活躍に繋げるために、障害者を雇用する際の業務切り出しの方法を、事例を交えてご紹介します。
- 目次
-
障害者雇用で仕事がない状況に陥る3つの要因

障害者雇用で仕事がないという場合は、以下が要因として考えられます。
- 十分な業務の用意ができていない中で雇用率達成だけを目的としている
- 企業側の配慮事項への理解不足
- 企業側の過度な配慮
一つずつ詳しく解説します。
十分な業務の用意ができていない中で雇用率達成だけを目的としている
一つ目の要因には、障害者雇用を進める準備が整っていない中で、法定雇用率の達成だけを目的としているケースが挙げられます。そうしたケースでは、障害者が自分のスキルや特性を発揮できず、仕事への意欲低下や任せる仕事がない状況につながります。
法定雇用率の達成だけを目的としている例として、以下を紹介します。
・担当する業務が数時間で終了し、残りの時間は自己学習に充てられている。
・業務指示が曖昧で指導もない。成果物への期待もなく、単なる作業として割り振られている。
円滑に障害者雇用を進めるためには、雇用率達成のみを目的とするのではなく、適切に業務切り出しを行い、任せる業務を用意しておくことが重要です。
企業側の配慮事項への理解不足
障害者を雇用する企業は、職場環境や業務を調整する「合理的配慮」を提供する義務があります。合理的配慮とは、障害のある人とない人の機会や待遇を平等に確保し、支障となっている事情を改善、調整するための措置です。この配慮への理解が不足すると、仕事内容と障害者の特性が合わず、結果として「任せる仕事がない」という状況に陥る可能性があります。
また、合理的配慮を検討する際は、障害名だけで判断せず、本人の得意・不得意や必要な配慮を確認することが重要です。なお、配慮事項については、加齢に伴う疾患の進行などがありますので、定期的に見直す必要があります。
企業側の過度な配慮
任せる業務が少ないという背景には、企業側が過度に配慮しようとすることも要因となりえます。「無理をさせてはいけない」と配慮し過ぎると、障害者が担当できる業務が極端に少なくなってしまいます。
具体的には、以下のようなケースが考えられます。
・職務能力に対して、業務難易度が低すぎる業務を任せている・責任のある仕事を任せない
・障害者が自主的に動こうとしても、負担を心配して制限してしまう
職場内における障害者雇用への理解を深め、企業・障害者、双方がしっかりと話し合い、必要に応じた配慮を決定していくことが重要です。
障害者雇用も業務内容から考える

障害者雇用を進めるにあたって大切なこと、それは「業務から考える」ということです。
一般雇用の場合、該当する業務や配属する部署があることを前提に、その業務を担える能力・知識経験のある人材を探すというのが一般的でしょう。
しかし、障害者雇用の現場においては、法定雇用率達成のため、業務よりも必要な人数を採用することが優先されることが多いのが現状です。そのため、「業務と本人の特性とのマッチングがうまくいかない」「雇用した社員に業務を任せられず、何をしてもらうのが良いか分からない」といった課題が発生し、結果として休職や早期離職に繋がることも少なくありません。
障害者雇用においても一般雇用と同じく、「業務」優先で考えることが望ましいでしょう。障害者が担う業務を先に決め、その業務に従事可能な人とはどのような人材か…障害特性や志向、必要な能力や配慮を人材要件として定めるのが基本です。
障害者が担う業務内容とは

前提として、障害者が担う業務は障害者一人ひとりの特性や志向、能力によって異なりますが、これから雇用を本格的に進めたい企業や数多くの人材を採用したい企業は、まずはどのような人でも比較的取り組みやすい業務から考えてみましょう。
具体的には、次の7つに該当する業務から検討すると良いでしょう。
<始めに検討したい7つの業務>
- 難易度の低い業務
- 高度な判断や意思決定の必要がなく、誰が行っても同じ結果になる業務
- 納期が比較的緩やかな業務
- スポットではなく定常的に発生する業務
- 専門的な知識を要さない業務
- 顧客や他部署などとの交渉や調整が少ない業務
- 一度覚えてしまえば、同じことを繰り返して進められる業務
例えば、営業部門の業務を例としてあげると、次のような業務が該当します。
先に挙げた7項目の業務に該当するのは、「顧客情報管理」「顧客資料のファイリング」「商品資料送付」となります。
ただし、障害の特性や志向は一人ひとり異なり、上の7つ以外の業務を担うことも十分可能です。あくまで、任せる仕事がない場合や、新たに切り出す必要がある場合の優先順位として候補に挙げておくと良いでしょう。
障害者雇用で仕事がない場合に実践できる業務切り出し方法

障害者に担当してもらう仕事がない場合は、各部署で行っている業務を棚卸し、業務工程を細かく切り分け、前項で挙げた検討したい7つ業務にあてはめて、整理する必要があります。そうすることで、業務効率化と新たな雇用創出につなげることが可能です。
ここでは、実践可能な業務切り出し方法を紹介します。
対象外と思われていた部署から業務を創出する
対象外と思われていた部署から業務を創出できる可能性があります。まず対象外としていた部署へ、前項で挙げた7つの項目を基に詳細にヒアリングしましょう。その業務名や概要、作業時間、発生頻度、優先順位を整理することで、思わぬ部署から業務がでてくることがあります。事前に業務量や発生する頻度を整理しておくことで、採用時などに、障害特性に応じて任せる仕事を決めることができます。
対象外と思われていた部署から業務創出に成功した事例については、後ほど詳しく紹介します。
外注業務の内製化
従来外注していた業務を障害者の仕事とする方法もあります。障害者が得意とするルーティンワークなどを中心に、外注業務を内製化できないか検討してみましょう。
外注業務の内製化の具体例には、以下が挙げられます。
・清掃の仕事を外注していた場合、清掃業務を障害者に担当してもらう
・社員食堂の運営を外注していた場合、障害者にスタッフ業務を担当してもらう
後回しになっている業務から新たに業務を創出する
後回しになっている業務の中から、任せられる業務を創出できる可能性もあります。緊急性が低くても重要度が高い業務がないか検討することが重要です。
例えば、紙の書類のデータ化やPCを使ったドキュメント整理、管理簿の作成、倉庫の整理、名刺の整理などが挙げられます。
残業の多い従業員の業務をピックアップする
残業の多い部署の社員から業務にかかる時間などのヒアリングを行い、ピックアップされた業務リストから業務を切り出す方法もあります。
具体的には、経費の精算業務や従業員から保育所に提出する勤労証明の発行業務などが挙げられます。
業務の切り出し手順

- 部署を選定する
- 業務を洗い出す
- 業務をマニュアル化・見える化する
障害者が取り組みやすい業務内容や業務創出のアイデアを知った上で、ここからは具体的な業務の切り出しを行いましょう。業務の切り出しは上の3つの手順で行います。
部署を選定する
まずは、部署の選定から始めるようにします。「障害者が自律的にはたらける環境があるか」「障害特性を活かしながら担える業務があるか」という視点と、先に紹介した「障害者が取り組みやすい7つの業務」があるかどうかを考えながら、人事側で選定すると良いでしょう。
その後、部門内の業務内容を知るために、事業部や現場の責任者に対して以下の内容をヒアリングします。
・外部委託している定型業務はあるか?
・マニュアル化されていて、方法が明確になっている仕事はあるか?
・毎日定期的に発生する業務はあるか?
・量の多い仕事はあるか?
・緊急性は低いけれど、余裕があればやりたいと思っている仕事はあるか?
このような確認によって、部署のおおよその業務を見定めることができます。この時点では、対象となる部署を選定するにとどめ、詳細に業務を洗い出す必要はありません。
業務を洗い出す【営業・事務・経理における業務細分化の例】
選定した部署で、どのような業務があるのかを具体的に洗い出し、業務内容の一覧をシートにまとめるようにしましょう。
ある企業の営業部門には、以下の業務があるとします。
- 顧客管理
- 社内調整
- 顧客交渉・リレーション構築
- 見積作成
- 商品サービス紹介・提案
- 契約書作成
- 商品資料送付
- 請求書作成
- 提案資料作成
- アポイント獲得・日程調整
つぎにそれぞれの業務内容を作業レベルで分解します。上記の業務のうち「顧客管理」の業務を作業レベルで細分化します。
1.営業から名刺などの顧客情報収集
2.管理シート作成・記入や管理システム入力
3.営業担当の確認依頼
4.情報修正
5.ステータス情報の更新(定期作業)
その他、繰り返し業務が多く、タスク化しやすいと言われる「事務」や「経理部門」での業務細分化の例も紹介します。
【事務:書類整理業務】
1.書類を日付の順番に並べる
2.書類をファイリングする
3.確認が必要な書類を担当責任者に回す
4.ファイリングした書類を種類別に棚に入れる
【経理:請求書の発行業務】
1.月末にシステム上で売り上げを締める
2.請求書を発行する
3.請求書を入れる封筒に宛名を記入する
4.請求書と送付先に誤りがないか確認する
5.請求書を封筒に入れる
6.請求書を発送する
このように業務内容を作業レベルに分けてタスク化することで、障害者が取り組みやすい作業を明確に把握できるようになります。
業務を見える化して精査する
それぞれの業務の作業内容を洗い出したら、業務プロセスや、難易度、業務にかかる時間、判断基準などを可視化していきます。
専門的で高度な業務でも、プロセスを見える化することで、必ず切り出せる業務を見つけることができます。「この業務をどのような人材が担うことが適正なのか」という視点で考えられれば、生産性やコストなどを担保した切り出しができるでしょう。
プロセスをもとに、業務マニュアルを作成すると良いでしょう。マニュアルがあることで、障害者が日常の業務を迷わず進めることができます。普段指示している内容をメモでまとめて、それらをドキュメント化し、マニュアルが常に最新の状態になるよう定期的に更新しましょう。
「障害者のためにマニュアルをつくる」となると、面倒に思う社員もいるかもしれません。しかし、マニュアル化を進めることで、社内業務全体の標準効率化にもつながる副次的な効果も見込めます。
業務切り出しの注意点
業務の切り出しにはいくつかの注意が必要です。2つの注意点をご紹介します。
障害者向けに切り出す業務の集約窓口は一本化する
複数の部署から業務を切り出した場合でも、業務を集約する窓口や担当者は一本化するようにします。そうすることで、業務を進める障害者が作業で不明点を認識した場合でも相談しやすくなります。また、各部署で対応する必要がないため、現場で混乱が生じにくく、作業が滞る問題も解消できるでしょう。
障害者の能力と、従事させる業務のミスマッチに気を付ける
切り出した業務内容に対して、どのような人材が適しているのかを見極め、ミスマッチが起こらないようにすることが重要です。例えば、はたらく意欲や職務能力の高い人材には、一般雇用人材が担う業務に多い、経験や意思決定、対外折衝が必要な業務を任せ、自分のペースを守ってはたらきたい人や一定以上の配慮が必要な人材には、分かりやすい業務やマニュアル化されている業務を渡すなどの配慮が必要です。
障害者全てをひとくくりにして考えるのではなく、一人ひとりの障害特性や志向、能力にあった業務マッチングを心がけることが、雇用後の定着・活躍に繋がります。
業務切り出し事例1:大手金融機関

ここからは、実際に当社がご支援した業務切り出しの事例を紹介します。
ある大手金融企業では、雇用数拡大に伴い、これまで雇用を進めていた身体障害者以外の障害者を含め、多くの人材を雇用する方針を固めました。そこで新たに業務の創出・切り出しを行うに当たり、これまで業務切り出し・配属の対象外となっていた部署にも協力を得ながら進めることが求められました。
業務を切り出すに当たり、下記のような内容を実施しました。
- 事業部の精査、ピックアップ
- 各部署の担当者に向けて説明会を実施
- アンケートによる現在の業務ヒアリング
- 各業務の精査
- 障害のある社員が従事できる業務の選定
ポイント(1):ワークを交えた説明会で理解を得る
社内の理解を得て切り出し作業を進めるため、当社の支援担当が各部署をまわって説明会を実施しました。第三者であり、障害者雇用を支援する専門的立場から、以下について説明しました。
- なぜ、企業が障害者雇用に取り組む必要があるのか(法的義務や社会の変化、雇用によるメリット)
- 一般雇用と障害者雇用の違いとは何か?
- 障害特性や配属現場で必要となる配慮
- どのような仕事ができるのか、他社での事例
説明に加えて、業務切り出しに関する簡単なワークも実施しました。所属する部署の業務を洗い出してもらい、「属人型(人の専門性経験に依存する)」「ルーティン型(作業が決まっている流れ作業的な仕事)」「パターン型(その中間)」の3パターンに分類した上で、作業内容や専門性、顧客対応の有無などの判断指標から、障害者が従事できそうなもの・難しいものに振り分けを行いました。
この説明会によって、障害者雇用や、部署でメンバーが障害者と一緒にはたらくイメージを持ってもらうと同時に、この後の業務切り出し作業への協力をスムーズに進めることができました。
ポイント(2):業務精査で、対象外と思われていた部署からの切り出しに成功
説明会の後、参加した担当者に業務ヒアリングを実施しました。
最初に、業務名と概要、作業時間・発生頻度について聞くアンケートを実施した後、分量や納期、専門知識の要不要など詳細を個別にヒアリングしました。
ヒアリングが終了したら、内容を一覧にして整理し、優先順位をつけていきます。例えば障害のある人は作業に時間がかかることがあるため、1日に担う業務量が適正量か、一定の頻度で業務が発生するのかどうか、といった点から検討します。その結果、これまで対象としていなかった法務部門に、障害者が従事できる業務があることが分かり、切り出しを行いました。
最終的には集合配置部署を立ち上げることになり、障害者が担う業務一覧と人員配置をまとめました。
成果
これまで対象と捉えていなかった部署からの業務切り出しができました。また、各部署の担当者の協力を得てスムーズに進めることができました。その後、業務をもとに定めた人材要件をもとに採用活動を進められたことで、業務とのミスマッチも発生することなく部署配属できています。
業務切り出し事例2:大手小売業の事例

接客が発生する店舗での業務切り出し・雇用事例を紹介します。
この企業は全国に100を超える店舗を持ち、高級食品を販売する小売業です。事業拡大により障害者雇用を拡大する必要がありましたが、当初、本社での雇用を前提に検討していたものの、従業員の人数が少ないこともあり雇用を拡大できないため、店舗での雇用に踏み切りました。
具体的には、各店舗を精査すると同時に、店舗担当者に向けて、障害者雇用の取り組みに対する理解と協力してもらうための研修を実施しました。研修終了後、店舗で具体的にどのような業務があるのかを洗い出すためのアンケートを実施し、業務を選定しました。
ポイント:大型店舗から着手 雇用後の支援体制も構築
最初は、大型商業施設内にある店舗を対象に、バックヤード業務から進めました。大型商業施設のバックヤードは広くつくられている場合が多く、障害特性上、圧迫感のある空間が苦手な障害者にも対応できるためです。また大型商業施設の店舗は、従業員の人数が多いため、業務確認や不測の事態にもサポート体制が取りやすい環境が整っていることも好条件でした。
業務切り出しと併せて、障害者の就業時間を固定化することと、接客以外の全ての業務をマニュアル化するという対策をとることで、障害者に過度な負担をかけないよう配慮を行いました。また、店舗スタッフにも理解と協力を仰ぎ、障害者が従事しても店舗が円滑にまわる体制を構築しました。
成果
これまで店舗での障害者雇用は前例がありませんでしたが、業務切り出しや研修、就業場所の選定、採用後に本社が店長をフォローするなど支援体制を構築したことで、6ヶ月の期間で8人、12ヶ月の期間で12人の精神障害者の採用に成功しました。店舗でのフォローもスムーズに進んでおり、定着化も実現しています。
テレワーク導入による業務創出の可能性もある

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くの企業でテレワークが導入されました。障害者雇用においても、テレワークの活用で雇用の拡大が期待されています。例えば、企業の通勤圏内に高いスキルを持った障害者がいない場合でも、テレワークを導入することで全国から人材を募集することが可能です。
テレワークでも従事可能な業務の主な具体例を紹介します。
・エクセルのフォーマットにしたがってデータ入力する
・複数のデータを比較して誤りのあるデータ・誤差をチェックする
・説明会やセミナーのアンケートデータをルールにしたがって打ち直す
ただし、オフィスワーク前提の業務が中心となっており、テレワークでの業務創出やセキュリティ面に課題を抱える企業が増えていることも事実です。
テレワークに適した業務を創出するためには、以下の2点がポイントとなります。
・業務の可視化:業務の作業手順や時間をきちんと把握できる環境を構築する
・業務フローの改善:ペーパーレス化やITツールの導入などにより業務全体の根本的な仕組みを変更する
詳しくは、こちらの記事でも紹介しています。
業務創出に行き詰まった時の相談・連携先

障害者に任せる仕事がない場合、企業独自で課題を解決するのではなく、専門機関に相談していく必要があります。
ここでは、業務創出に課題を抱えている企業に向けて、相談・連携先としておすすめの専門機関を紹介します。
採用の準備段階から定着支援まで受けられる「ハローワーク」
障害者雇用で任せる仕事がなく、何から手を付けて良いのか分からないという企業は、ハローワークに相談することをおすすめします。ハローワークは、厚生労働省が運営する総合的雇用サービス機関です。全国500ヶ所以上設置されており、仕事を探している人や求人事業主に対して、無償でサービスを提供しています。
障害者雇用への理解を深めるためのセミナー開催や業務切り出しのサポートなど、採用の準備段階から定着支援まで一貫した支援を実施していることが特徴です。
業務内容の選定など具体的かつ実践的なアドバイスを受けられる「地域障害者職業センター」
業務切り出しに関するより実践的な助言を受けたいという場合は、ハローワークと併せて地域障害者職業センターに相談することをおすすめします。地域障害者職業センターでは、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションサービスの他、企業に対して障害者の雇用管理に関する援助などを実施しています。採用計画の検討や準備、職務内容の選定などの具体的なアドバイスや支援を無料で提供していることが特徴です。
公的支援と併せて活用できる「民間の障害者雇用サービス」
公的サービスと併せて、民間の障害者雇用サービスを活用する方法もあります。民間の障害者雇用サービスでは、例えば地方に住む障害者と企業をつなげる取り組みを行っていたり、エンジニアなど一定のスキルを持った人材の採用を支援していたり、ニーズに応じたきめ細やかなサポートを提供している点が特徴です。
有料のサービスもあるため、詳細については支援先に問い合わせてみて下さい。
業務設計のアドバイスや指導のサポートを受けられる「ジョブコーチ」
ジョブコーチを設置することで、課題に対して集中的なサポートを受けることが可能です。
ジョブコーチとは、障害者の就職支援の他、障害者の職場定着を目的として、障害者や家族、企業に対してサポートを行う専門家のことです。障害の特性やスキルに配慮した雇用管理、また職務内容の策定などに関する支援を行っています。
ジョブコーチの種類や支援対象、役割などの詳細に関しては、こちらの記事でも紹介しています。
障害者雇用に関するよくある質問

ここまで、障害者雇用で任せる仕事がないという企業に向けて、業務切り出しのポイントや手順などを解説してきました。障害者雇用への理解を深めるために、よく聞かれる質問と回答を紹介します。
障害者を雇用していないとどうなる?
障害者雇用促進法は、障害者の安定的な雇用の促進を目的とした制度で、一定規模以上の企業には雇用義務があります。法定雇用率が未達成で常用労働者が100人超の企業は、不足している1人当たり月額5万円の納付金が徴収されます。また、納付金を支払っていても一定の割合を超えて雇用数が不足している場合は行政指導が入り、企業名が公表される場合もあります。
障害者雇用は法的義務です。納付金を支払っていても雇用義務が免除されるわけではありません。
障害者雇用における特例子会社制度とは?
特例子会社制度とは、障害者雇用に特別な配慮をした子会社を設立し、一定の要件をクリアし、厚生労働大臣の認定を受けることで、その子会社に雇用されている障害者を親会社に雇用されているものとみなし、法定雇用率の算定に合算できる仕組みです。
費用や時間、工数が直接雇用の場合よりもかかりますが、特例子会社を設立することで、以下のようなメリットがあります。
・障害者がはたらきやすい環境を提供することで定着率が向上する
・親会社とは異なる就業規則や給与体系を設定でき、障害特性に合わせた勤務時間や休暇制度を導入しやすくなる
障害者を採用しても仕事が続かない状況を打破するには?
現場の従業員が忙しくてサポートできず、結果として早期退職してしまうなど仕事が続かない状況が続くケースもあるかもしれません。対処法の一つには、社内のサポート体制の強化が挙げられます。
また、障害者の業務支援を専門的に行う担当者を配置するなど、定期的に企業のサポート体制を見直すことが大切です。
おわりに:どのような企業でも、業務の切り出しは可能

本記事では、障害者雇用を進める企業の担当者に向けて、仕事がない場合の業務切り出し方法や手順、事例などを解説しました。仕事がない状況が生まれる背景には、業務の用意ができていない中で雇用率達成だけを目的としていたり、配慮事項への理解が不足していたりといった、いくつかの要因が挙げられます。
そうした状況を解消するためには、障害者雇用への理解を深めると共に、適切に業務切り出しを進めることが必要です。担当してもらう業務を優先して決定し、障害特性や志向、能力、配慮を人材要件として従事可能な人材を採用していくことが大切です。紹介した業務切り出し方法や事例を参考にして、障害者がはたらきやすい環境を実現して下さい。
最後に、当社で多くの企業の業務切り出しを支援した経験を持つ社員からのメッセージを紹介します。
障害特性や能力、志向にあった業務を用意することで、採用や定着、活躍が可能になります。企業からは「業務の切り出しができない」「特殊な業務だから切り出せない」といった声をよく耳にしますが、私たちが見た限り、業務の切り出しができない企業や職務はありません。
業務を切り出す過程で、どのような業務があるのかの洗い出しに加え、手順や判断基準などのプロセスを見える化し、全てをチャート化していきます。それによって、どんなに専門的で高度な業務でも、必ず切り出せる業務が見つかります。
業務切り出しが難しいと感じる場合は、業務委託や、システム導入による業務デジタル化の作業をイメージして頂くと良いかもしれません。業務を外部に委託する際に、業務全体から外注する部分を抽出したり、人力・手作業で行っていた業務をフロー化すると思いますが、業務切り出しも同じ考え方です。
「既に外部の委託業者や派遣社員の人に業務をお願いしており、任せる業務はこれ以上つくれない」という声もよく耳にします。外部への業務委託や派遣社員の人が対応している業務を割り当てるという選択肢もありますが、他に切り出せる業務は社内にたくさんあるのではないかと思います。例えば、業務切り出しを行う部署としては人事部や総務部などが候補に上がりますが、専門的な業務をやっている部署でも切り出せる業務は多く存在します。例えば法務部などコンプライアンス情報を扱う部署は、法令チェックは難しいものの、膨大な資料の整理やファイリングや配送作業などがあるでしょう。こうした部署は専門知識や判断が必要な業務が多いものの、それ以外に発生する仕事が山ほどあるはずなのです。
事例2の企業のように、店舗配属による雇用も進んでいます。バックルームでの仕事が多いものの、切り出せる業務は多く、専門性がそれほど高くない業務や簡単な接客業務に従事するケースも増えてきました。また近年、外国人を採用し、一般社員の業務を担ったり、教育や研修でイラストや動画を使ったマニュアルを用意している企業もあるようですが、障害者雇用でも、業務創出や、同じマニュアル使って研修に活用することもできると思います。
今回紹介した事例をもとに、社内の各部署の業務を見直すことから始めて頂くと良いと思います。また業務切り出しは、各部署の責任者や現場担当者の、障害者雇用への理解や協力が不可欠です。そのための説明会の実施や業務洗い出しのヒアリング、とりまとめから、採用活動のための人材要件策定など、膨大な作業となるため、自社だけでは対応が難しい場合は、当社のような雇用支援を行っている会社や支援機関に相談してみると良いでしょう。

パーソルダイバース株式会社
法人マーケティンググループマネジャー
安原 徹
◆経歴
新卒でベンチャー系コールセンター会社に入社し、営業およびスーパーバイザー業務に従事。その後、株式会社エス・エム・エスにて看護師の人材紹介業務および医療・社会福祉法人の営業を担当。2016年にパーソルダイバース株式会社に入社し、キャリアアドバイザーおよびリクルーティングアドバイザー(RA)として勤務。関西エリアにおける精神障害のある方のご支援先の開拓に注力。2021年に関西RAマネジャーに着任。2023年より中部・西日本RAマネジャーを経て、現在は法人マーケティンググループのマネジャーとして勤務。





