消費者庁は5月、障害者の消費者トラブルをまとめた「障がい者の消費行動と消費者トラブル事例集」を作成、発表しました。トラブル事例と原因、知的、精神・発達、身体障害の特性と解決のためのポイントが紹介されています。
この事例集は、消費者庁の消費者行政未来創造オフィスが、徳島県と岡山県にある26施設・団体の利用者やその家族、職員に対して、普段の買い物やトラブル事例を調査、まとめたものです。
障害者の消費生活における相談件数は過去10年間で倍増する一方、実際の消費行動やトラブルの実態については詳細に調査されていませんでした。消費者庁はこの事例集を参考に、トラブルの未然防止や早期発見・解決につなげてほしいとしています。
障害者の消費者トラブル例と、消費行動における障害特性は
事例集では、携帯電話販売店での契約、迷惑メールへの対応、スマホゲームの課金、サービスの複数契約、SNSなど、具体的なトラブル例が紹介されています。
「店員から勧められるがまま様々な商品サービスの利用契約を結んでしまい、多額の請求が家族宛に届いた(知的障害)」「SNSで、知らない人から届いた儲け話を信じてしまった(発達障害)」「気分がすぐれなかったため、広告で見かけた健康食品や習い事を次々と申込んでしまった(精神障害)」「一人で買い物に行った先で、ご自由にどうぞ、との張り紙が貼られていた試供品を全て持って帰ってしまった(発達障害)」といった具体例と原因、対策のためのヒントが紹介されています。
また、調査から見えてきた、消費行動における障害特性が紹介されています。
知的障害の特性の一例
- 人を信じやすい、疑わない
- 過去の経験を目の前の事態に関連付けたり、応用したりすることが苦手で、繰り返し同じようなトラブルに遭いやすい
精神障害の特性の一例
- 気持ちの浮き沈みで買い物行動が変わり、興味あるもの、好きなものを大量に買う
- 「初回無料」などの言葉を使った勧誘文句に対し、「無料」の言葉だけが印象に残り、お金は不要と思い込んでしまう
- インターネットで商品を購入しても要望に合わないことが多い
発達障害の特性の一例(主に自閉症スペクトラム)
- 言葉の裏や、相手の思いを察することが苦手なため、相手の言葉どおりに受け取ってしまう
- 店員の説明が分からなくても「はい」と返事をしてしまう
- 計画的な買い物が苦手な人が多い
- お金の価値と物の価値が一致しない
身体障害の特性の一例
- 解約や変更の各種手続など、電話での本人確認が必要なものは他人を介したり、別途手続が必要であったりと時間と労力を要する(聴覚)
- 紙幣は金額を間違って渡されても分からないことがある(視覚)
- 公共交通機関や公道の段差に困ることがある(肢体不自由)
雇用側もトラブルや特性を把握しておく
障害者雇用においては、就業時にこうしたトラブルが起こる機会はほとんどありませんが、休憩中や出社・退社時に発生する可能性はあるでしょう。
また、プライベートで起こったトラブルによって就業に影響を及ぼす可能性も少なくありません。例えばトラブルが発生した際、家族や友人など周囲の人々や店舗に相談できない、本人がトラブルに遭っていたことを自覚していないことによって、後日会社に連絡が来ることや、トラブルによってメンタル面の不調や不安が表れ、健康面の悪化することで勤怠や業務に支障が起こる、といったケースも想定されます。
就業以外のプライベート面に関する問題は企業が介入することが難しいことが多いため、第三者の支援機関と連携して対処することが大切ですが、雇用側も、あらかじめ、障害者が直面しやすいトラブルやその原因を知っておくと良いでしょう。