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厚生労働省は2025年12月、民間企業や公的機関における「令和7年(2025年)障害者雇用状況の集計結果」を公表しました。
障害者雇用義務のある事業主は、身体、知的、精神障害者の雇用状況について、毎年6月1日時点で報告することが義務付けられており、これらをまとめた集計結果です。
集計結果をもとに、障害者雇用の現状と、今後の課題とポイントについて考察します。
雇用数は過去最高を更新、実雇用率・法定雇用率達成企業の割合は前年同率に
集計結果によると、民間企業の障害者雇用数は704,610.0人(対前年比+27,148.5人、+4.0%)、実雇用率は2.41%(前年同率)となりました。障害者雇用数は23年連続で上昇しています。一方で、実雇用率は前年同率で(※ただし小数点第3位では上昇)14年連続で過去最高を更新していますが、伸び率は鈍化しています。法定雇用率達成企業の割合は46.0%となり、こちらも前年同率となりました。
令和5年(2023年)の集計では、はじめて実雇用率(2.33%)が法定雇用率(2.3%)を超え話題となりました。令和6年(2024年)の集計でも雇用障害者数・実雇用率は引き続き伸長し、実雇用率は2.41%(前年同率)と過去最高を更新しました。一方、2024年4月の法改正により法定雇用率が2.5%に引き上げられたことを受け、令和7年(2025年)は「法定雇用率達成企業の割合」は前年と同じ46.0%となり、伸び悩む結果となりました。特に建設業、運輸業・郵便業、医療福祉など一部業種では、実雇用率・達成企業割合ともに前年から減少しています。これは除外率引き下げ等の制度改正の影響と考えられます。
全ての障害種別で雇用数は増加、精神障害者の伸長に注目
障害種別ごとの雇用数の推移を見ると、全ての障害種別で雇用数は増加しています。その中でも精神障害者については対前年比11.8%増という結果となり、コロナ禍を抜けて伸長回復のピークは少し落ち着いてはいますが、他の障害種別と比較し、引き続き高い伸長率を示しています。

出典:厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」をもとに、当社にて再集計
企業規模別の雇用状況
2024年4月の法定雇用率引き上げに伴い、「障害者の雇用義務」の対象となる企業の範囲が拡大し、常用労働者数40.0人以上の企業が新たに対象となりました。これにより、常用労働者数40.0~43.5人未満の企業が集計対象に加わっています。40.0~100人未満の企業規模では、実雇用率が前年の1.96%から1.94%へと低下しています。
一方、100~500人未満の企業規模では、雇用人数と実雇用率はいずれも前年より増加しているものの、「法定雇用率達成企業の割合」は前年より低下しています。たとえば、100~300人未満の規模では実雇用率が2.19%から2.18%へ微減、達成企業割合は49.1%から48.6%へと低下しています。
実雇用率および法定雇用率達成企業の割合には企業規模によるばらつきがあり、常用労働者数が少ない企業ほど法定雇用率(2.5%)や法定雇用率達成企業割合(第5次障害者基本計画の目標値:56.0%)との差が大きい状況が続いています。
【企業規模別の雇用状況】
| 企業規模 | 障害者の数 (前年値) |
実雇用率 (前年値) |
法定雇用率 達成企業の割合 (前年値) |
| 40.0~100人未満 | 81,287.5人 (78,280.0人) |
1.94% (1.96%) |
44.7% (44.3%) |
| 100~300人未満 | 127,623.5人 (124,637.0人) |
2.18% (2.19%) |
48.6% (49.1%) |
| 300~500人未満 | 58,363.0人 (57,178.5人) |
2.29% (2.29%) |
40.3% (41.1%) |
| 500~1,000人未満 | 76,557.5人 (76,515.5人) |
2.41% (2.48%) |
44.5% (44.3%) |
| 1,000人以上 | 360,778.5人 (340,850.5人) |
2.69% (2.64%) |
57.5% (54.7%) |
産業別の雇用状況
| 業種 | 実雇用率 | 増減(ポイント) | 達成企業割合 | 増減(ポイント) |
|---|---|---|---|---|
| 建設業 | 2.00% | -0.13 | 43.5% | -4.0 |
| 運輸業・郵便業 | 2.29% | -0.16 | 48.6% | -4.0 |
| 医療・福祉 | 3.02% | -0.17 | 55.4% | -2.9 |
| 全産業平均 | 2.41% | ±0.00 | 46.0% | ±0.00 |
建設業・運輸業・郵便業・医療福祉は、前述の通り、除外率の引き下げもあり、雇用義務数が増加したことが減少要因の一つと考えられます。
障害者雇用市場の動向と今後のポイント
2026年7月は法定雇用率の引き上げもあり、障害者雇用において、動きのある年となります。
| 2023年度 | 2024年4月 | 2026年7月 | |
| 民間企業の法定雇用率 | 2.3% | 2.5% | 2.7% |
| 対象事業主の範囲 | 43.5人以上 | 40.0人以上 | 37.5人以上 |
2026年の引き上げは過去と異なり、4月ではなく7月に実施されます。これにより、2026年7月以降は、現在雇用率を達成している企業でも不足が生じ、採用活動を開始する動きが予想されます。現時点で雇用率を達成できていない場合は、引き上げ前から採用活動を進めることをおすすめします。
一方、パーソルダイバースが企業の障害者雇用担当者を対象に行った独自調査では、6割弱(57.9%)の企業が、法定雇用率を2.7%に引き上げた場合に「達成は困難」あるいは「やや困難」と回答しており、企業側の認識としても雇用率達成の難易度の高さが示唆されます。

また、厚生労働省は企業に義務付ける障害者雇用率の算定に障害者手帳を持たない難病患者らもまずは実雇用率への算定に含める方向で検討していることをと明らかにしており、今後の議論の深まりが期待されます。
これからの障害者雇用に必要なことは
ここまで「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」について解説してまいりました。
ここからは、今後の障害者雇用に必要な取り組みについてお伝えいたします。
今後は、法定雇用率の引き上げと労働市場の変化を踏まえ、障害者雇用において「量の確保」と「質の向上」を両立させることが求められます。具体的には、採用の裾野を広げつつ、働き方・評価・定着を含む就労の質を高める取り組みを、両輪として推進していく必要があります。
「量の確保」については、当社実施のアンケートでも、75.8%の企業が採用拡大に前向きであることが確認されています。社員数の増加に加え、採用対象の拡大や配属先の多様化など、採用の幅を広げる意向が示されています。

これからの障害者雇用における課題
「質の向上」については、厚生労働省職業安定局の資料においても、就労を希望する障害者の障害特性の多様化に対応し、希望や特性に即した働き方を実現するためには、雇用の質に焦点を当てた取組が必要だという見解が多数示されています。
近年、パーソルダイバースへの相談内容は「質の向上」に関するテーマが増えています。具体的には、評価制度の再設計や社内理解の促進など、障害のある社員が長期的に活躍できる仕組みに関する相談が多く寄せられています。これまでの「法定雇用率の達成」を主目的とした雇用から、社員の成長や活躍を通じて事業に貢献する段階へと、企業の取り組みは移行しつつあります。
コンプライアンス重視の障害者雇用
最後に、障害者雇用の在り方について、ご説明します。過去、2022年12月には、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案に対し、以下のような附帯決議がなされました。
「雇用率の達成のみを目的に雇用主に代わって障害者に職場や業務を提供するいわゆる障害者雇用代行ビジネスを利用することがないよう、事業主への周知、指導等の措置を検討すること」といった条文が盛り込まれています。
2025年12月に実施された厚生労働省の第11回「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」では、法定雇用率の達成だけを目的とした利用が指摘されている「障害者雇用ビジネス」について集中的に議論を深めています。今後は、雇用代行ビジネスに依存しないコンプライアンス重視の自社雇用を推奨する動きが加速し、各企業の雇用方針に大きな影響を与えることが見込まれます。

パーソルダイバース株式会社
法人マーケティンググループマネジャー
安原 徹
◆経歴
新卒でベンチャー系コールセンター会社に入社し、営業およびスーパーバイザー業務に従事。その後、株式会社エス・エム・エスにて看護師の人材紹介業務および医療・社会福祉法人の営業を担当。2016年にパーソルダイバース株式会社に入社し、キャリアアドバイザーおよびリクルーティングアドバイザー(RA)として勤務。関西エリアにおける精神障害のある方のご支援先の開拓に注力。2021年に関西RAマネジャーに着任。2023年より中部・西日本RAマネジャーを経て、現在は法人マーケティンググループのマネジャーとして勤務。



