更新日:2025年12月26日/作成日:2019年12月13日

中小企業による障害者雇用は、大企業と比べて、雇用にかけるコストや人的リソース、ノウハウが限られていることから、雇用への取り組みの課題も多く聞かれます。そこで今回は、中小企業で雇用を進める上で知っておくべきポイントや、実際に雇用を進めている企業の事例を紹介します。

目次

中小企業が障害者雇用に取り組む理由とメリット

障害者雇用は企業としての義務ではありますが、企業にとってのメリットも少なくありません。ここでは、中小企業の障害者雇用の現状も含めて、中小企業が障害者雇用に取り組む理由やメリットを解説します。

中小企業における障害者雇用の現状

厚生労働省が発表している、令和7年(2025年)の障害者雇用状況の集計結果によると、民間企業における障害者の雇用数は70万4,610.0人となり、前年から2万7,148.5人増加し、22年連続で過去最高を更新しました。実雇用率は2.41%で、法定雇用率(2.5%)には届いていません。また、法定雇用率を達成している企業の割合は46.0%となっています。
下の図は、企業規模別の障害者雇用数と実雇用率、法定雇用率達成企業数をまとめたものです。従業員40人以上100人未満、100人以上300人未満、300人以上500人未満の中小企業では、実雇用率がそれぞれ1.94%、2.18%、2.27%と、いずれも法定雇用率2.5%を下回っており、特に40人以上100人未満の企業では2%を下回っています。

企業数 身体障害者の数 知的障害者の数 精神障害者の数 実雇用率 法定雇用率達成企業の数 法定雇用率達成企業の割合
規模計 120,467 373,914.5 162,153.5 168,542.0 2.41% 55,434 46.0%
40~100人未満 67,885 42,847.5 17,888.0 20,552.0 1.94% 21,795 44.7%
100~300人未満 37,052 70,363.5 27,688.0 29,572.0 2.18% 18,127 48.6%
300~500人未満 7,083 31,970.5 12,532.5 13,860.0 2.27% 2,795 40.3%
500~1,000人未満 4,843 41,564.0 16,127.5 18,866.0 2.41% 1,895 44.5%
1,000人以上 3,604 187,169.0 87,917.5 85,692.0 2.69% 1,606 57.5%

障害者雇用の社会的背景

障害者雇用の義務は、「障害者雇用促進法」によって定められています。障害者雇用は、法的義務だけでなく、共生社会やダイバーシティの実現のためにも重要です。障害者雇用を推進することは、障害者だけでなく全ての人がはたらきやすい環境をつくることにつながります。

中小企業が得られる主なメリット

障害者を雇用することは企業としての義務を果たすだけでなく、企業にとってもメリットがあります。中小企業が得られる主なメリットについて解説します。

人材不足の解消

障害者雇用は中小企業の人材不足の解消につながります。IoTやツールの進化、またテレワークなどのはたらき方の選択肢が増えたことで、障害者が活躍できる仕事が増えてきています。障害特性を理解した上で、環境を整え、適切な職務配置を行うことで企業にとって大きな戦力になる可能性があります。

実際に障害者を雇用した企業からは、「仕事はゆっくりでも丁寧でミスが少ない」「地道な作業に真剣に取り組んでくれる」などポジティブな声が聞かれます。

職場環境の改善

障害者雇用を行うために環境を整えることで、職場環境の改善にもつながります。障害者がはたらきやすくするために行った改善が障害のない従業員のはたらきやすさにつながるケースも少なくありません。

また、障害者雇用ではたらく従業員のひたむきな姿勢が他の従業員に刺激を与えたり、障害者をサポートしようという思いから気配りの心が生まれたりなど、職場の雰囲気が改善されるといった効果も期待できます。

業務の効率化

障害者雇用に当たって業務を創出するために、日々の業務を見直す過程で業務効率化につながる点もメリットです。業務プロセスの改善や属人化していた業務のマニュアル化など業務改善につながるケースも多くあります。

企業イメージの向上

障害者雇用を推進することは、障害者が活躍する場を増やすことであり、社会貢献につながります。その結果、社会的責任を果たしている企業として、企業イメージの向上にもつながるでしょう。

中小企業の障害者雇用の課題と実態の乖離

障害者雇用を推進する際に課題を感じる中小企業も少なくありません。ここでは、中小企業の障害者雇用の課題と実態の乖離について解説します。

以前に障害者を雇用しなかった理由

少し古いデータになりますが、2012年に高齢・障害・求職者雇用支援機構が調査・発表した「中小企業における初めての障害者雇用に係る課題と対応に関する調査」によると、以前に障害者を雇用しなかった理由として下記の内容がまとめられていました。

出典:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「平成24年度 障害者職域拡大等調査報告書No.2 中小企業における初めての障害者雇用に係る課題と対応に関する調査」※全国の中小企業から無作為に抽出した 700社のうち、近年初めて障害者を雇用した中小企業110 社からの回答をもとに高齢・障害・求職者雇用支援機構が作成。

はじめて障害者を雇用するにあたって困ったこと

また、初めて雇用するにあたって困ったこととして、次のような声が寄せられています。

出典:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「平成24年度 障害者職域拡大等調査報告書No.2 中小企業における初めての障害者雇用に係る課題と対応に関する調査」

中小企業は人的リソースや経営資源に限りがあるため、障害の状況に応じた作業内容等の改善や人材の確保が難しいということが課題となっています。また、障害者を雇用するためのノウハウが不足しており、採用や選考、従事する業務の設定などをどのように決めれば良いのかが分からないという企業が多いということも分かりました。
従業員数が少ない中で2.5%の障害者雇用率を達成することは、中小企業にとっては大きなハードルと言えるでしょう。

中小企業が障害者を雇用するに当たっての課題や制約

高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施した「中小企業における障害者雇用促進の方策に関する研究」では、企業と雇用・就労支援機関にそれぞれ、障害者を雇用するに当たっての課題や制約となる事項についてアンケートを行いました。

企業側の上位の回答は、以下の3点でした。

  • 作業内容・手順の改善
  • 物理的な環境整備
  • 作業を遂行する能力

一方、雇用・就労支援機関の上位3つの回答は下記の通りです。

  • 現場従業員の理解
  • 作業を遂行する能力
  • 経営トップの方針

特に「現場従業員の理解」と「経営トップの方針」については、企業側と雇用・就労支援機関では回答率に大きな違いがあり、乖離があることがわかります。

中小企業の現場で乖離が起こる理由

中小企業では、雇用を想定する障害者として未だに身体障害者を想定している一方で、実際には就職を希望する離職者の多くが知的障害者や精神障害者であるため、乖離が生じていると考えられます。

中小企業が知的障害者や精神障害者の雇用を検討する上では、就労を支援する側が重視する「現場従業員の理解」や「経営トップの方針」といった課題に着目することが重要です。

また、雇用・就労支援機関の側では、中小企業に関わっていく上で、中小企業が重視している「作業内容・手順の改善」や「作業を遂行する能力」といった課題は、知的障害者や精神障害者を雇用する場合であっても同様に当てはまる可能性が高いことに留意する必要があるでしょう。

雇用を進める6つのポイント

では、中小企業で障害者雇用を進めるにはどのようにしたら良いのでしょうか?
必要な対策は企業によって異なりますが、ここでは、中小企業が障害者雇用に取り組むに当たって知っておくべきポイントを6つ紹介します。

  1. キーパーソンを定め社内理解を得る
  2. 障害者の採用市場を理解し、具体的な業務を検討する
  3. 雇用に取り組む意義と方針を立て、社内理解を得る
  4. 業務を考える
  5. 職場実習の受け入れや、採用前実習を利用する
  6. 支援機関や雇用支援業者に、雇用計画や人材確保、雇用形態を相談する
  7. 助成金や雇用支援制度を活用する
  8. 雇用後は地域の支援機関と一緒に、職場定着に取り組む

1. キーパーソンを定め社内理解を得る

何のために障害者雇用に取り組む必要があるのか、その方針と意義を明確にし、社内での理解を得るようにしましょう。
また、障害者雇用に取り組むのは法的義務を果たすため、という理由もありますが、雇用することでメリットが生まれることを知ってもらうことが大切です。

これらのことを実現させるためには、キーパーソンとなる従業員の存在が重要になります。キーパーソンを選定し、経営陣から現場の従業員まで全社的なコンセンサスを形成しましょう。特に、従業員数が100名未満の場合、経営トップにも理解いただき、障害者雇用の方針に言及いただくことで、高い効果が期待できます。

従業員の中には「障害があるからできないのではないか」「手がかかるのではないか」「コミュニケーションが取れないのでは」という不安を抱えることもあるでしょう。障害者は「得意なこと」と「不得意なこと」が明確であり、「得意なこと」を活かして雇用すれば、能力を発揮して業務貢献することは可能なのです。
「なぜ雇用するのか」「どのようなメリットが生まれるのか」この2つを、社内研修や説明会などを通じて説明し、職場への理解を得ることができれば、以下のような効果が生まれるでしょう。

  • 社内の雰囲気や人間関係、障害者がはたらくことに対する見方が変わる
  • 雇用した後の、障害のある従業員への接し方が変わる
  • 自分自身や部署全体の業務や制度を見直す機運が生まれる
  • 人事部や配属部署担当だけでなく、会社全体で、障害のある従業員をサポートすることができる

キーパーソンには、障害者の雇用前のコンセンサスの形成だけでなく、雇用後も支援機関と連携するための窓口としての役割も期待されます。

2. 障害者の採用市場を理解し、具体的な業務を検討する

障害者雇用を進める際には、採用する前に、どのような業務を任せるのかを考えることが最も重要です。
業務が無い状態で採用だけ行っても、何を任せるべきか分からない、業務とのマッチングがうまくいかないという結果になり、退職に至ってしまうケースが多く見られます。これは大企業でも同じです。
障害者雇用が進まない理由として「うちには任せる業務がない」「少ない人数で業務を回しており、障害者に切り出せる業務などない」「長年在籍する従業員が、その経験と知識で業務を回している」という声をよく耳にします。しかし、少ない人数で回している業務だからこそ、一人ひとりが対応している業務範囲や業務量が多くなっている状態もあるのではないでしょうか。

以下に挙げるのは企業でよく見られる業務の一例です。

  • PCデータ入力
  • 資料の整理や電子データ化作業
  • リサーチ、情報収集・整理
  • 電話応対、問い合わせ対応
  • 社内関連部門への連絡指示
  • 配送センターでの箱詰め、箱折り、ピッキング作業、出荷前検査
  • 製造工場での製品組立、部品検収作業、ラインリーダー
  • 小売店舗での食品加工・包装、商品陳列、接客
  • 清掃業務

これらの業務は、どのような企業や部署にもあると思います。比較的切り出しやすい上、どのような特性を持った障害者でも取り組みやすい業務と言えるでしょう。
最初はこうした業務から従事してもらい、本人の特性や意欲、成果にあわせて少しずつ業務の幅や責務を増やしていくのが良いでしょう。

また、具体的な業務を検討する上では、障害者雇用の主な対象者が身体障害者だけでなく、知的障害者や精神障害者まで広がっていることを踏まえることが必要です。

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3. 職場実習の受け入れや、採用前実習を利用する

障害者を雇用したことがない、または過去に雇用したことがない障害特性のある方を初めて雇用する場合は、一定期間、職場実習を実施し、試験的に実習生を受け入れてみても良いでしょう。

実習によって障害特性への理解を深めることができる他、人材要件を策定するに当たり必要な職務能力を見極められるなどの効果があります。また採用選考においても雇用前(採用前)実習を行うことで、候補者が職場や業務にマッチしているか、定着できそうかを確認でき、雇用後のミスマッチを低減することができます。

高齢・障害・求職者雇用支援機構では「障害者職場実習支援事業」を行っています。これは、ハローワーク等と協力し、職場実習を計画して実習生を受け入れた場合に、謝金等を支給することによって、障害者の雇用経験の乏しい企業に対する支援を行うものです。こうした支援も積極的に取り入れてみると良いでしょう。

4. 支援機関や雇用支援業者に、雇用計画や人材確保、雇用形態を相談する

雇用計画や人材確保など、障害者雇用に関することは、ハローワークや地域の支援機関に相談しましょう。同規模の企業が、障害者雇用をどのように進めているのかの事例も提供してくれるので、参考にしてみましょう。
また、人材紹介会社や雇用支援を行っている業者を活用するのも良い方法です。自社の求める人材要件に適した人材を紹介してもらえる他、業務創出・切り出しや採用選考活動の支援、従業員向け研修の実施や、雇用後の職場定着のための相談や支援を受けることもできます。雇用セミナーなどに参加し、雇用の進め方の相談をしてみるのも良いでしょう。

パーソルダイバースは、パーソルグループ最大級の特例子会社として1,000人以上の障害者を雇用した実績があります。豊富な経験に基づき、現場目線の支援を行っておりますので、障害者雇用でお悩みの企業はぜひご相談下さい。

※オフィスでの雇用受け入れが難しい場合は、在宅やテレワークによる雇用も有効な場合があります。これらの雇用形態は、政府が主導する「働き方改革」に伴い、一般雇用の中で広がっていますが、今後は障害者雇用においても有効な雇用形態として導入が進むことが期待されていますので、検討してみても良いかもしれません。

5. 助成金や雇用支援制度を活用する

障害者雇用の経験がない中小企業においては、支援制度について詳しく知らない企業もあるでしょう。「障害者雇用促進法」に基づき、企業は障害者雇用を推進するに当たり、国や自治体からさまざまな助成金を受け取ることができます。その中で、代表的なものをいくつか紹介した上で、申請の注意点についても解説します。

国の代表的な助成金

国の代表的な助成金として「トライアル雇用助成金」「継続雇用に対する助成金」「継続して雇用する障害のある方への配慮に対する助成金」の3種類があります。

それぞれのコースや種類は以下の通りです。

【トライアル雇用助成金】
●障害者トライアルコース
●障害者短時間トライアルコース

【継続雇用に対する助成金】
●特定求職者雇用開発助成金
●キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)

【継続して雇用する障害のある方への配慮に対する助成金】
●障害者介助等助成金
●重度障害者等通勤対策助成金
●障害者作業施設設置等助成金

以下の記事でも詳しく紹介しておりますので、助成金の利用を検討される場合はぜひご覧下さい。

自治体による支援制度

各自治体が行っている支援制度としては、「東京都 中小企業障害者雇用支援助成金」や「神奈川県 精神障害者職場指導員設置補助金」、愛知県の「中小企業応援障害者雇用奨励金」などがあります。

例えば、東京都中小企業障害者雇用支援助成金は、国の助成金である「特定求職者雇用開発助成金」の支給を受けた中小企業で、助成期間満了後も継続して障害者の雇用を続ける企業に最長3年助成を行うものです。

自治体ごとにさまざまな支援を行っているため、自社の自治体が行っている助成金がないか調べてみましょう。

助成金申請の流れと注意点

助成金の申請の主な流れは下記の通りです。

  1. 計画や書類の作成
  2. 書類の提出
  3. 審査
  4. 支給決定

助成金ごとに提出資料や提出先が異なるため、事前に確認した上で手続きを進めましょう。また、併用できない助成金もあるため、既に助成金を利用している場合は、併用できるかも確認しましょう。

6. 雇用後は地域の支援機関と一緒に、職場定着に取り組む

雇用後に最も重要なことは、「安定的に就業を継続し、職場に定着できるか」ということです。定着のためには、障害者本人が就業を通じて活躍しているという意欲を持てること、企業が障害者の安定就業や能力発揮のために適切な配慮や評価を行うことが大切です。しかし、雇用ノウハウが十分にない企業や、就業面以外(医療や健康面、家庭やプライベートに関する範囲)に関するサポートは難しいことがあります。
そのために、支援機関と連携しておくことが大切です。入社時に地域の支援機関に必ず登録してもらうこと、就業状況などを共有し、細かな定期面談を通じて悩みや相談に乗ってもらうことなど、定着に向けた支援を依頼するようにしましょう。

※支援機関との連携についての詳細は以下記事で解説しています。

就労定着支援サービス(2018年10月より施行)

2018年10月より、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つ「就労定着支援」が始まっています。
これは、労働環境の変化によって生じる生活面や就労面の課題に対応できるよう、最長で3年間にわたって支援を行うというものです。対象は生活介護・自立訓練・就労移行支援または就労継続支援事業所の利用を経て一般就労へ移行後、6ケ月が経過した障害者となります。

支援は2018年より新設された就労定着支援事業所か、これまでの就労移行支援事業所就労継続支援A型事業所、就労継続支援B型事業所などのうち、就労定着支援を新たな事業として実施している事業所から受けられます。これらの事業所に通所していた方を雇用し、定着のための取り組みを検討している場合は、相談してみると良いでしょう。

中小企業での障害者雇用事例

厚生労働省や各地域自治体では、障害者雇用の取り組みで顕著な実績を上げている企業を「優良企業」として表彰したり、取り組みを雇用モデル事例として取り上げたりしています。その中から、中小企業による障害者雇用事例を3例、業種別に紹介します。

事例1:製造業での雇用事例

  • 従業員:約150人
  • 事業内容:化学製品の製造・加工
  • 障害者雇用:精神障害 計3人

現場から人員補充の要請を受けて新規採用を検討していた際に、地域の支援機関に相談したことが障害者雇用のきっかけでした。1日限定の職場体験を行ったところ大変優秀な方がおり、現場の評価も高かったので、3ヶ月のトライアル期間の後に採用となりました。

現在は3人の精神障害者がおり、製造物の検査業務や部品の組み立て工程を担当しています。集中力が高く仕事の質も高いため、現場からの評判も良いようです。今は少しずつ業務の幅を広げています。

この企業では障害者雇用の経験や知識が全くなかったため、支援機関に、障害特性や職場での接し方、問題が発生した際の対応の仕方など、安定就業のためのさまざまなアドバイスを貰っています。また職場指導員をつけており、2ヶ月に1回の面談で、業務や体調面、その他困っていることはないかを確認しています。職場指導員や支援機関と連携し、障害のある従業員の心の安定とはたらく意欲を喚起することで、当事者が向上心を持って仕事に取り組むことができているようです。

事例2: IT企業での雇用事例

  • 従業員:約500人
  • 事業内容:介護や福祉関連のソフトウェア開発、販売、保守
  • 障害者雇用:身体障害(肢体不自由)、精神・発達障害、知的障害 計8人

この企業では、これまで身体障害者を数人雇用する程度で法定雇用率を下回る状況が続いていましたが、福祉領域の事業を展開する企業として障害者雇用は経営課題との認識をされていました。そこで人事部の体制変更を機に、障害者雇用を本格的に促進していくこととなりました。
その後ハローワークの紹介で発達障害のある方が入社し、清掃業務を担当することになりました。就業状況も順調で、社内からの障害者雇用に対する理解も深まっていったことから、その他の障害のある方の雇用も進んでいきました。

最初に発達障害のある方を採用した際、従事させる業務や指導の仕方などに対する不安が大きかったため、ハローワークや各種支援機関からの支援や、トライアル雇用、ジョブコーチ支援などの各種制度を利用し、スムーズに受け入れを進めていくよう心がけました。
入社後3ヶ月は、定期面談を通じて業務作業の習得と円滑な業務遂行、職場でのコミュニケーションの促進、困っていることの確認を行いました。その後もフォローアップ支援などを利用し、支援機関からのサポートを受けて職場定着を図ってきました。

またこの方は、こだわりが強い、強い光があると業務に集中できない、時折言葉遣いが不適切になるなどの特性がありました。そのため、企業・支援機関・現場管理者が連携し、他の従業員とのコミュニケーション方法や、業務に集中できるための必要な配慮などを確認していきました。こうした細かな連携と特性への配慮が、職場定着や、更なる雇用の促進に繋がったのではないかと思われます。

事例3:流通・小売業での雇用事例

  • 従業員:約300人
  • 事業内容:小売業(スーパーマーケット)
  • 障害者雇用:精神障害、知的障害 計16人

この企業は、障害者雇用を促進させるため、経営企画管理部門に専任の担当者をアサインし、地域のハローワーク主催の雇用説明会や特別支援学校の企業向け説明会に参加するなど、情報収集と体制構築を積極的に図っていきました。
その結果、雇用体制構築から1年後に障害者1人を採用。その後も支援機関との連携によって複数人の雇用を進めることができました。

雇用を進めるに当たり、最初に、店舗や本部業務の中で障害者がどのような業務ができるのかという「業務の切り出し」を徹底して行いました。店舗バックヤードや、包丁などを使わなくてもできる仕事などの業務領域を創出し、配属することから始めました。
その後、障害者本人が業務の達成感を感じられるよう、特定の業務に固執せず何でもやってもらえることとしました。来店客と会話できる障害者は商品陳列業務に配置するなど、障害特性や配慮を鑑みた配置を行うことで、はたらく意欲の向上や充足感、安定定着・活躍化を図るように取り組みました。現在では全ての店舗と本部に障害のある従業員を配属できるようになったそうです。
また、採用後のミスマッチをなくすよう、採用時には職場実習を行うことにしています。

配属現場では、一人ひとりの障害特性を正しく理解し、「作業手順をメモに書く」「素直だがすぐに仕事の仕方を忘れてしまう人には繰り返し声をかける」「辛抱強くコミュニケーションをとる」といった取り組みを続けた結果、徐々に仕事を覚え、活躍できるようになっていきました。
さらに、障害特性に配慮して接することで職場全体の雰囲気が和やかになった他、「自分たちは障害者のお手本にならなければいけない」という意識が拡がったこと、従業員間のコミュニケーションや連携が強化された、などの効果があったようです。

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中小企業の障害者雇用に関するよくある質問

ここからは、中小企業の障害者雇用に関するよくある質問について紹介します。

中小企業は何人以上から障害者雇用が義務になる?

障害者雇用が義務になるのは、常用雇用労働者数40人以上の企業です。常用雇用労働者数40人以上の企業は最低1人以上の障害者を雇用する必要があります。また、2026年7月には法定雇用率が2.7%に引き上げられ、対象は37.5人以上の企業となります。

障害者を雇用しないと罰則がある?

罰金という扱いではないものの、常用雇用労働者数が100人を超える企業では、法定雇用障害者数の不足1人に対して月額50,000円の障害者雇用納付金を納める必要があります。ひと月50,000円であるため、年間では60万円の徴収となります。

また、障害者雇用率を下回った状況が続くと行政から雇入れ計画作成命令や特別指導が入る可能性があります。状況の改善が見られない状況が続くと最終的には企業名が公表され、企業ブランドの低下につながります。

障害者雇用調整金や報奨金がもらえる条件は?

常用雇用労働者数が100人を超える企業で、障害者雇用率を超えて雇用している企業には、超過して雇用している障害者数に応じて1人当たり月額29,000円の障害者雇用調整金が支給されます。

また、常用雇用労働者数が100人以下の企業では、超過して雇用している障害者数に応じて1人当たり月額21,000円の報奨金が支給されます。調整金も報奨金もどちらも企業が申請する必要があります。

なお、報奨金については、2024年4月1日以降の雇用期間において、支給対象人数が年420人月を超える場合には、支給額が1人当たり月額16,000円になります。

障害者雇用率(法定雇用率)は今後も上がる?

2026年7月から民間企業の障害者雇用率が2.7%に引き上げられます。法定雇用率は5年毎に見直しが行われる事が定められており、今後も法定雇用率の引き上げは続くことが予測されます。今後の障害者雇用率の引き上げに備えて、早めに対応を進めることが重要です。

まとめ:他社事例や支援機関からのサポートを受けながら、自社で実施可能な雇用施策を立てる

中小企業にとって障害者雇用を進めることは簡単なことではありませんが、上に紹介した事例や雇用のポイントをもとに、自社ならどう取り組めるかを考えてみましょう。 人的リソースやノウハウが限られる中小企業は、外部から学ぶことや、雇用にかかる負担をいかに削減するか、業務の切り出しをどう行うかがポイントになります。ハローワークなどの支援機関や民間の雇用支援業者が持つ知見やサービスなどを上手に活用しましょう。
雇用後は、障害者の雇用管理の負担が配属部署に偏らないようにすることが特に大切です。そのため、人事・総務部門が障害者の管理や健康支援などを積極的にサポートすることが必要でしょう。

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監修者  パーソルダイバース株式会社 法人マーケティンググループマネジャー 安原 徹

パーソルダイバース株式会社
法人マーケティンググループマネジャー
安原 徹

経歴

新卒でベンチャー系コールセンター会社に入社し、営業およびスーパーバイザー業務に従事。その後、株式会社エス・エム・エスにて看護師の人材紹介業務および医療・社会福祉法人の営業を担当。2016年にパーソルダイバース株式会社に入社し、キャリアアドバイザーおよびリクルーティングアドバイザー(RA)として勤務。関西エリアにおける精神障害のある方のご支援先の開拓に注力。2021年に関西RAマネジャーに着任。2023年より中部・西日本RAマネジャーを経て、現在は法人マーケティンググループのマネジャーとして勤務。