更新日:2025年11月4日/作成日:2019年3月15日

    

障害者雇用促進法では民間企業に対し、常時雇用している労働者の一定割合に相当する人数以上の、障害者を雇用することを義務付けており、その雇用人数の算出基準となっているのが「障害者雇用率(法定雇用率)」です。
2024年4月から民間企業の法定雇用率は2.5%、2026年7月に2.7%へと段階的に引き上げられることになっています。この記事では、主にこれから本格的に障害者雇用に取り組む人事担当者に向けて、企業が雇用すべき人数の計算方法や、雇用率の算定対象となる障害の程度や判断基準を解説します。

目次

障害者雇用率制度(法定雇用率)とは

障害者雇用率制度(法定雇用率)とは、障害者雇用促進法で定められている、障害者を雇用すべき人数の割合です。
その歴史は古く、障害者雇用促進法の前身である身体障害者雇用促進法が制定された1960年に、企業や国、地方自治体における努力義務の基準として定められました。その後1976年の法改正により法的義務となり、1.5%と定められました。法定雇用率は何度か改正が行われ、段階的に引き上げられてきました。

2025年4月時点の民間企業における法定雇用率は2.5%。従業員40人以上の事業主は全て、障害者の雇用義務が発生します。
因みに、国・地方公共団体における法定雇用率は2.8%、都道府県等の教育委員会は2.7%となっています。

障害者の法定雇用率は2026年7月に引き上げられる

厚生労働省は法定雇用率を2024年度に2.5%、2026年度に2.7%へと段階的に引き上げる方針を発表しています。引き上げによって、従業員数が37.5名以上の民間企業に障害者雇用の義務が発生することとなります。

現行 2026年7月~
法定雇用率 2.5% 2.7%
障害者雇用の対象となる
事業主の範囲
従業員40人以上 従業員37.5人以上

障害者雇用率(法定雇用率)の計算式

障害者雇用率は、次の計算式によって算出されます。

雇用対象となる障害者

障害者雇用率制度の対象となる障害者は身体障害者、知的障害者、精神障害者です。以前は身体障害者と知的障害者だけでしたが、2018年4月の改正により精神障害者も雇用率算定の対象に加わりました。
これらの障害のある方1人を雇った時に何人分としてカウントするかは、障害のある方の障害の程度と、1週間に何時間はたらくかによって決まってきます。カウント方法は次のとおりです。

障害者雇用率の算出ルール

  • 原則として、常時雇用労働者は1人分、短時間労働者は0.5人分としてカウントする。
  • 重度身体障害者・重度知的障害者は1人を2人分としてカウントする。なお、重度身体障害者・重度知的障害者の短時間労働者は、1人分としてカウントする。
  • 短時間労働の精神障害者に関しては、2023年度の改正により、雇入れ等からの期間に関わらず、当分の間1人分としてカウントする。
  • 週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者(特定短時間労働者)は0.5人分としてカウントする。

<要件>

なお、短時間労働者とみなされる労働時間要件は、従来週20時間以上-30時間未満とされていました。これに令和6年(2024年)度からは、週10時間以上-20時間未満までの要件も加わることとなりました。

もしも、雇用すべき障害のある方の人数が2人なら、「常時雇用労働者2人」「短時間労働者2人と常時雇用労働者1人」「常時雇用の重度身体障害者1人」といった雇い方が考えられます。

ちなみに、欠勤や遅刻等で実労働時間が所定労働時間を下回る月が年間の半分以上(7ヶ月以上)ある場合、実労働時間が参考となります。例えば、週所定労働時間が30時間以上の常用労働者の場合、月120時間に満たない月が年間の半分以上あると、「常用労働者数」も「雇用障害者数」も0.5カウントとなります。週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者の場合では、「常用労働者数」にも「雇用障害者数」にもカウントされなくなります。(特定短時間労働者の要件を満たす方は0.5カウントとして計算)

また、月によって出勤日数が異なり、所定労働時間に満たない場合があります。例えば営業日数が少ない2月のように、労働時間が120時間(80時間)を下回る場合は、「2月の労働日数×6時間(短時間労働者の場合は4時間)=所定労働時間」となります。

企業が必要な障害者雇用数の計算方法

それでは、障害者雇用率を使って、実際に自社で雇用すべき障害のある方の人数を計算してみましょう。
自社で雇用すべき障害のある方の人数は、次の計算式で求められます。

自社の法定雇用障害者数(障害者の雇用義務数)=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者雇用率(2.5%)

式中の「常用労働者」とは、1週間の労働時間が30時間以上の方、「短時間労働者」とは、1週間の労働時間が20時間以上30時間未満の方を指します。なお、それより1週間の労働時間が短いアルバイトやパートの方などはカウントしません。
例えば、8時間勤務の正社員が100人で、週20~30時間勤務のパート従業員が20人いる場合、自社で雇うべき障害のある方の数は(100+20×0.5)×2.5%=2.75。小数点以下の端数は切り捨てとなるので、この場合は2人となります。

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雇用対象となる障害の種類や程度の判断基準

  • 身体障害者
    身体障害者福祉法による「身体障害者手帳」を所持している方。障害の程度によって等級が1~7級で記載されている。
  • 知的障害者
    都道府県知事等が発行する「療育手帳」を所持している方。障害の程度によってA「最重度」「重度」、B「中度」、C「軽度」に区分されている。
    ※発行する自治体によっては「みどりの手帳」「愛の手帳」など名称が異なるケースもあります。また、等級も「1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)」など、自治体によって表記が異なるケースもあり、おおむね3~4つの等級区分に分かれます。
  • 精神障害者
    精神保健福祉法による「精神障害者保健福祉手帳」を所持している方。障害の程度によって等級が1~3級で記載されている。

このうち、身体障害者手帳の等級が1級・2級の人は重度身体障害者に、療育手帳の区分がAの人が重度知的障害者に該当します。なお、精神障害者には、雇用上人数のカウント方法が変わる区分はありません。

障害の把握・確認の際の注意点

障害者採用では、障害者手帳に基づき、障害の有無や程度、どのような障害特性があるのかを確認することは欠かせません。しかし、障害を確認する際には、相手のプライバシーに十分配慮することが重要です。

この点については、厚生労働省から「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」が出されています。
ガイドラインで明記されているポイントをご紹介します。

<プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインのポイント>

  • 採用段階で障害のある方の把握・確認を行うには、利用目的等の事項を明示した上で、本人の同意を得て、目的のために必要な情報を取得すること
  • 採用後に把握・確認を行うには、雇用する労働者全員に対して、メール送信や書類の配布といった画一的な手段で申告を呼びかけることを原則とする

雇用数が法定雇用障害者数を下回るとどうなる?

法定雇用率は2024年度に2.5%、2026年度に2.7%と段階的に上がっており、法定雇用率の達成が難しい企業もあるでしょう。法定雇用障害者数を下回ることによりいくつかのリスクが発生するため注意が必要です。

ここからは、法定雇用障害者数を下回る場合のリスクについて紹介します。

障害者雇用納付金を納める必要がある

企業が雇用している障害のある方の数が、本来雇うべき法定雇用障害者数に届いていない場合、事業主は障害者雇用納付金として不足1人につき月額50,000円を納める必要があります(※1)。

ただし、この納付金は企業間の障害者雇用に伴う経済的負担の調整を図るために納めるもので、罰金ではありません。納付金を払っても障害のある方を雇用する義務がなくなるわけではないので、その点は注意して下さい。
なお、逆に法定雇用障害者数を超えて雇用している場合は、超過1人につき月額29,000円が支給されます(※2)。

※1 適用対象は常用労働者100人超の事業主。ただし、常用労働者が100人超200人以下の場合は月額40,000円になります。
※2 年間120人月(単純換算で1ヶ月10人)までは月額29,000円、年間120人月を超える場合は、超える人数分(単純換算で1ヶ月11人目以降)への支給額が23,000円となります。なお、適用対象は常用労働者100人超の事業主。常用労働者が100人以下の事業主には別途報奨金制度があります。

条件を満たさない場合はハローワークから指導が入る可能性がある

雇用割合が法定雇用率を下回っている企業に対しては、ハローワークが「障害者の雇入れに関する計画」の作成を命じることがあります。命令発出基準は以下のとおりです。

  1. 実雇用率が全国平均実雇用率未満であり、かつ不足数が5人以上の場合
  2. 実雇用率に関係なく、不足数10人以上の場合
  3. 雇用義務数が3人から4人の企業(労働者数120人~199.5人規模企業)であって雇用障害者数0人

命令発出後、企業は1月1日から2年間の期間の障害者の雇用計画を作成し、計画に基づいた雇い入れを行います。

必要な法定雇用障害者数に満たない状態が続き、計画を怠っていると判断された場合は、ハローワークより雇用達成のための指導が入ることがあります。

それでも達成できない場合が続いた場合、企業名が公表されることがあります。

なお、ハローワークからの指導は障害者雇用納付金とは別ものであり、障害者雇用納付金を納めているから行政指導はされないといったものではありません。

企業の障害者雇用の現状と今後の課題

法定雇用率は2026年には2.7%まで引き上げられるため、企業は継続して障害者雇用の推進に取り組んでいく必要がありますが、企業の雇用状況はどのようになっているのでしょうか。

厚生労働省が2024年12月に発表した「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業の障害者雇用数と実雇用率は過去最高を更新する結果となりました。ただし、法定雇用率を達成している多くは大手企業であり、従業員500人未満の中小企業の半数以上は法定雇用率に達していない状況です。

企業規模による雇用格差の是正や、採用対象層の拡大、多様な特性や能力を持つ障害者が定着・活躍できる業務創出やマネジメントなどが求められています。

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国は障害者の雇用量から達成企業の割合を重視

内閣府が発表した「第5次障害者計画」によると、数値目標に「雇用量」を置くことをやめ、「達成企業の割合」への置き直しが図られています。
この改訂の意図は、法定雇用率を達成している企業の内訳にあると考えられます。現状では大企業の達成率が高い一方、中小企業における達成率は比較して低い傾向にあります。これからは中小企業の法定雇用率達成を増やすことを見据え、本格的なテコ入れが図られていきそうです。

第4次障害者計画(2018年度~2022年度) 第5次障害者計画(2023年度~2027年度)

障害者雇用率が未達成の場合の4つの対策

障害者雇用率が未達成の場合には、障害者雇用を推進していく必要があります。障害者雇用率が未達成の場合の主な対策として以下の4つが挙げられます。

  • ハローワークを利用する
  • 就労支援事業所や特別支援学校などと連携する
  • 求人サイトを利用する
  • 障害者専門の人材紹介サービスを活用する

それぞれの特徴について紹介します。

ハローワークを利用する

全国のハローワークでは障害者に関する窓口を設置しており、障害者雇用を進める事業主を対象にさまざまな支援を用意しています。

例えば、採用の準備段階から定着支援までのサポートや事業主と求職者のマッチングを図る就職面接会などを行っています。

また、助成金制度などの紹介も行っているため、障害者雇用について迷った場合は、まずハローワークに相談してみると良いでしょう。

就労移行支援事業所や特別支援学校などと連携する

就労移行支援事業所や特別支援学校など、関連機関と連携することで母集団を増やすことができます。

就労移行支援事業所とは、一般企業への就労を目指す障害のある方が訓練を行っている事業所であり、連携を行うことで自社にあった人材を紹介してもらえる可能性があります。

また、特別支援学校と連携することで、高校を卒業する世代に自社のことを知ってもらうことができ、採用の拡大につながります。

求人サイトを利用する

一般雇用の場合と同様に、求人サイトの利用も障害者雇用にも有力な選択肢です。一般的な求人サイトでも「障害者雇用求人」と記載することで求人を出せます。

求人サイトに掲載することで、多くの方に求人内容を知ってもらうことができます。求職者が直接応募する形式であるため、就職意欲が高い方が多い点が特徴です。

多くの応募が見込まれる一方で、多数の書類選考や選考に伴う業務が発生し、工数が増える可能性もあります。

障害者専門の人材紹介サービスを活用する

障害者雇用について経験が少なく、採用に不安を感じている方は、障害者専門の人材紹介サービスもおすすめです。

人材紹介サービスでは、「完全成果報酬型」が主流となっているため、入社まで費用がかかりません。また、人材紹介サービスを利用することで、求人票の作成や応募者への合否連絡などの対応が不要となるため、応募者の選考に注力できます。

人材紹介サービスでは現職中の求職者も多数登録されており、アプローチが可能です。ハローワークでは取り扱いができない非公開求人も可能であるため、一般には求人を公開したくない場合もおすすめです。

人材紹介サービスの中でも、障害者雇用に特化した専門のサービスを利用することで、入社後の高い定着率や柔軟な人材要件設定が期待できます。

支援サービスを活用し、障害者雇用に成功した事例

全国に拠点を展開するある企業では、本社では既に障害者雇用を進めていたものの、地方拠点では初めの取組みであり「どこに募集をかければ良いか」「どんな方を採用すればいいか」など、なにから取り組めば良いかわからない状況でした。

そこで、障害者専門の人材紹介サービスを提供するパーソルダイバースにご相談頂きました。まず、採用担当者と弊社コンサルタントが地元の就労移行支援所や各種支援機関、ハローワークなどに赴き、企業様の仕事や採用意向を説明する「ご挨拶まわり」を行いました。

地道な同行の結果、地方でも数十名の採用に成功し、その後も障害者を採用する拠点を増やし、最終的に100名を超える採用につながりました。

障害者雇用率に関するよくある質問

ここからは障害者雇用率に関するよくある質問について紹介します。

法定雇用率と実雇用率の違いとは?

法定雇用率は、障害者雇用促進法で定められている障害者を雇用すべき人数の割合です。一方、実雇用率は企業が実際に障害者を雇用している割合を指します。実雇用率は下記の計算式で算出できます。

実雇用率=雇用している障害者の労働者数+障害者の短時間労働者数×0.5 /雇用している 労働者数+短時間労働者数×0.5

除外率制度とは?

除外率制度とは、障害者の就業が一般的に困難であると認められる職業について、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除する制度です。

障害者の雇用義務を軽減する措置として設けられていましたが、ノーマライゼーションの観点から2004年4月に廃止となりました。

しかし、当分の間は経過措置として除外率設定業種ごとに除外率を設定するとともに、廃止に向けて除外率が徐々に引き下げられることになっています。

まとめ:必要な雇用人数を把握し、自社の状況を分析しましょう

一定数以上の従業員を雇用する事業主は、法定雇用率以上の、障害者を雇用をしなければならない義務があります。 この記事を参考に、まずは自社で障害のある方を何人雇用する義務があるのか、法定雇用障害者数を計算することから始めてみてはいかがでしょうか。

パーソルダイバース株式会社
法人マーケティンググループマネジャー
安原 徹

新卒でベンチャー系コールセンター会社に入社し、営業およびスーパーバイザー業務に従事。その後、株式会社エス・エム・エスにて看護師の人材紹介業務および医療・社会福祉法人の営業を担当。2016年にパーソルダイバース株式会社に入社し、キャリアアドバイザーおよびリクルーティングアドバイザー(RA)として勤務。関西エリアにおける精神障害のある方のご支援先の開拓に注力。2021年に関西RAマネジャーに着任。2023年より中部・西日本RAマネジャーを経て、現在は法人マーケティンググループのマネジャーとして勤務。