更新日:2025年11月17日/作成日:2020年6月25日

障害者雇用を推進する企業に対する助成金制度は種類が多く条件もさまざまあるため、どのような時にどの助成金を申請できるのか分からないという企業担当者も多いのではないでしょうか。今回は、障害者雇用に関する助成金の中でも企業からよく利用されている「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」について紹介します。

目次

特定求職者雇用開発助成金とは

特定求職者雇用開発助成金とは、就職が困難とされる方を雇い入れる事業主の方に対し、雇い入れに伴い必要となる費用の助成を行う制度です。さまざまなコースがあり、雇い入れる求職者の方や雇い入れの状況などに応じて各種コースのいずれかを選ぶことになります。

用意されている助成金のコースには以下があり、対象や条件がそれぞれ異なります。

コース名 対象者や条件
特定就職困難者コース 障害者や高年齢者、母子家庭の母などの就職困難者
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース 発達障害者または難治性疾患患者
就職氷河期世代安定雇用実現コース 就職氷河期に正規雇用の機会を逃したこと等により十分なキャリア形成がなされず、正規雇用に就くことが困難な者
生活保護受給者等雇用開発コース 自治体からハローワークに就労支援の要請があった生活保護受給者等
成長分野等人材確保・育成コース 特定求職者雇用開発助成金の対象労働者を「成長分野の業務」に従事させ、人材育成や職場定着に取り組む

生涯現役コースと被災者雇用開発コースについては2024年度から廃止されています。
この記事では、特定求職者雇用開発助成金のうち「特定就職困難者コース」を中心にご紹介していきます。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは、障害者や雇用困難者を雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用する企業が受給できる助成金です。障害者に限定した助成金制度ではありませんが、障害者雇用関連の助成金の中で最も多く利用されています。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象者や企業から利用される理由について解説します。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象者

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象者は、下記の通りです。

  • 高年齢者(60歳以上)
  • 母子家庭の母等
  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者

企業から利用される理由

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)が利用される理由には、「助成金額が大きい」「企業側の申請難易度が低く、申請しやすい」などが挙げられます。申請に必要な情報を確認することができれば、社会保険労務士(社労士)などに申請代行を依頼せずに人事担当者が申請・手続きを進めることも十分可能です。

他の助成金では、事前準備が必要なケースも多いですが、特定就職困難者コースの場合、採用後や入社後でも手続きできます。忙しい雇用担当者でも検討しやすい点が、利用しやすさにつながっていると言えるでしょう。障害者雇用に関し、採用予算の確保ができない企業もありますが、本助成金を職業紹介経由の採用コストとして活用されている企業もあります。受け入れる障害者の属性によっては支給されない場合もありますので、助成金が支給される人材要件を設定の上、採用活動を進めるなども有効です。

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特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の支給額

助成金の支給額と助成対象期間は、障害の種類と程度や、短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者)か否かで異なります。また、雇用元が大企業か中小企業かによっても支給額と助成期間に違いがあります。

対象労働者や企業規模ごとに表にまとめておりますので、ご参考下さい。
 

対象労働者 支給額 助成対象期間 支給対象期ごとの支給額
短時間労働者以外の者 高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 中小企業:60万円
大企業:50万円
中小企業:1年
大企業:1年
中小企業:30万円×2期
大企業:25万円×2期
重度障害者等を除く身体・知的障害者 中小企業:120万円
大企業:50万円
中小企業:2年
大企業:1年
中小企業:30万円×4期
大企業:25万円×2期
重度障害者等 中小企業:240万円
大企業:100万円
中小企業:3年
大企業:1年6ヶ月
中小企業:40万円×6期
大企業:33万円×3期+34万×1期
※第3期の支給額は34万円
短時間労働者 高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 中小企業:40万円
大企業:30万円
中小企業:1年
大企業:1年
中小企業:20万円×2期
大企業:15万円×2期
重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者 中小企業:80万円
大企業:30万円
中小企業:2年
大企業:1年
中小企業:20万円×4期
大企業:15万円×2期

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の支給要件と除外される要件

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、どのような企業・団体が支給の対象となるのでしょうか。ここでは、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の支給要件や、除外要件についてご紹介します。

支給要件

  • ハローワークや地方運輸局(船員として雇い入れる場合)、あるいは適正な運用を期すことのできる有料無料職業紹介事業者などの紹介により雇い入れること
  • 対象労働者を雇用保険の一般被保険者として雇い入れること
  • 65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ雇用期間が継続して2年以上あることが確実であると認められること

など

※職業紹介事業者経由の場合、本助成金に係る取扱いの届出を行っている必要がありますので、職業紹介事業者に直接確認が必要です。

除外される要件

  • 過去3年以内に、雇用 (派遣、請負、委任、出向なども含む) されていたことがある対象労働者
  • ハローワークなどが紹介する以前に、事業所と対象労働者との間で雇用の予約がある場合
  • 対象労働者が代表者などの3親等以内の親族である場合
  • 雇入れる前に、3ヶ月を超える実習などを行った場合

上記の要件に当てはまる場合は、支給の対象外となります。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の申請から受給までの流れ

ここでは、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の申請から受給までの主な流れをご紹介します。

1.ハローワークや職業紹介事業所からの紹介

最初のステップはハローワークや職業紹介事業所からの求人の紹介です。支給要件でも紹介したように、ハローワークや職業紹介事業所など指定の事業所以外からの紹介は対象になりませんので、注意が必要です。

2.対象者の雇い入れ

ハローワークなどからの紹介があり、対象者要件を満たしていることを確認したら支給申請を行いましょう。その上で、労働局やハローワークへ支給申請のための必要書類を提出します。

3.支給申請の提出

申請に必要な書類をまとめて提出します。必要書類は以下の通りです。

  • 支給申請書(様式第3号)
  • 賃金台帳等
  • 出勤簿等
  • 対象者であることを証明するための書類
  • 雇用契約書または雇入れ通知書
  • 対象労働者雇用状況等申立書(様式第5号)
  • 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)

上記の書類以外にも労働局から書類の提出を求められる場合もあります。

4.支給の決定・支給開始

審査後、労働局から企業宛に助成金の支給通知が届けられます。起算日の6ヶ月後、初回の助成金が企業へ支給されます。支給決定から指定の口座に入金があるまでは、一定の期間を要します。申請が不承認となった場合は、特に連絡はきませんので、審査の結果が知りたい場合は個別に労働局への問い合わせが必要となります。

これらの申請を支給対象期ごと(6ヶ月おき)に申請を行います。

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特定求職者雇用開発助成金の申請における注意点

特定求職者雇用開発助成金の申請時には、注意すべき点や知っておきたい点がいくつかあります。ここでは、特定求職者雇用開発助成金申請時の注意点についてご紹介します。

法定雇用率を満たしていなくても申請できる

障害者雇用の法定雇用率が未達の場合であっても、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の申請は可能です。助成金で障害者がはたらきやすい環境・体制を整え、雇用数の増加につなげることもできます。

申請期間に注意する

申請を行う期間は、「雇入れ日から6ヶ月経過した日から2ヶ月以内」となっています。この期日中に申請を行わなければ助成金は支給されません。ただし、1回目の支給申請をしていない場合でも、2回目以降の支給申請を行うことは可能です。

支給期ごとに申請が必要

助成金の支給期は1期、2期……と複数回訪れます。初回の申請だけでなく、支給期ごとにそれぞれ申請を行う必要があるため、申請漏れのないよう注意しましょう。

申請結果の通知は支給決定時にしか来ない

申請が通り、助成金の支給が決定した際は通知が送付されますが、申請が不可となった場合は特に連絡はきません。通知が来なかった場合は、不支給となったと考えられます。

トライアル雇用助成金と併用する場合は第2期支給対象期分から受給可能

障害者トライアル雇用によって雇い入れた対象労働者を、トライアル雇用終了後も引き続き雇用することになったとします。その場合、特定求職者雇用開発助成金の受給は「第2期支給対象期分」からとなるため注意が必要です。これは、特定就職困難者コースだけでなく、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースを利用する場合も適用されます。
またトライアル雇用助成金と特定求職者雇用開発助成金、それぞれ支給申請を行う必要があります。

併用できない助成金もある

支給対象期と重複する時期に下記助成金を希望する場合は、一方の助成金のみの支給となります。

  • 雇用調整助成金
  • 労働移動支援助成金
  • 中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース(45 歳以上初採用))
  • 地域雇用開発助成金(沖縄若年者雇用促進コース)
  • 人材開発支援助成金※賃金助成

また、地方公共団体などの補助金等についても、併用できない場合があります。
 

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)についてよくある質問

制度を利用するに当たり、企業側からよく寄せられる質問を10点ピックアップして紹介します。

Q-1 )知人からの紹介や自社で直接採用した方は対象になりますか?

A )支給対象外となります。
ハローワークや地方運輸局、特定地方公共団体や職業紹介事業者(有料、無料)から紹介された労働者を雇用保険の一般被保険者として採用した場合を支給対象としています。それ以外のルートで採用された労働者は支給対象外となります。

Q-2 )有期雇用契約で採用した方は対象になりますか?

A )雇用契約が「自動更新」であれば支給の対象となります。
有期雇用契約の場合、対象労働者が望む限り更新できる自動更新であり、かつその旨が労働条件通知書または雇用契約書に記載されている必要があります。自動更新であっても、「勤務態度により判断する」等、就業規則の解雇要件を超える更新の要件がある場合は、助成金の対象外です。なお、支給の対象となるコースは下記の通りです。
  • 特定就職困難者コース
  • 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
  • 生活保護受給者等雇用開発コース

Q-3 )就業条件が短時間勤務からフルタイムになる予定がある場合、どちらの就業条件で申請すればいい?

A )提出時点の就業条件で申請します。
入社時は短時間勤務ですが、何ヶ月後にフルタイムになると決まっている場合はフルタイムで申請できます。あくまでも予定で決定事項ではない場合は短時間勤務で申請しましょう。もし申請書類一式が届いた時点で勤務時間の変化があった場合は、ハローワークにその旨を相談して下さい。

Q-4 )対象労働者を解雇するとどうなりますか?

A )助成金が受けられなくなります。
支給対象となった労働者に対し、事業主都合による解雇や退職勧奨による任意退職が発生した場合、その後3年間は特定求職者雇用開発助成金が受けられなくなります。対象となる労働者を解雇していないかについて、一般助成金支給要件照会や事業所別被保険者台帳照会によって確認されます。
なお、支給対象期間の途中で離職した場合は、支給対象期分(6ヶ月分)の助成金は原則、支給されません。

Q-5 )試用期間を設けている場合も対象となりますか?

A )試用期間を設けていることをもって、直ちに助成対象外となることはありません。
試用期間を設けることは、正規雇用労働者として採用する上で一般的であるため、試用期間を設けることで対象から外れることはありません。しかし、下記のようなケースでは対象外となるため、注意が必要です。
  • 第1期支給対象期間に係る支給申請時において試用期間が継続している場合
  • 試用期間と本採用後において雇用契約が別である場合

Q-6 )入社後に助成金の対象者であると分かった場合でも申請することはできますか?

A )申請できません。
特定求職者雇用開発助成金は、事業主による就職困難者の雇入れを決定するためのインセンティブとしての効果を期待した制度であるため、ハローワーク等の紹介事業者が紹介する時点で、本助成金の対象者であると事業主が理解している必要があります。

Q-7 )第1期の申請に間に合わなかった場合でも、第2期から申請できますか?

A )第2期から申請可能です。
第1期の申請に間に合わなかった場合、第1期の申請の対象にはなりませんが、第2期から申請することはできます。申請する際は、第2期の書類だけでなく、第1期の申請で必要な下記書類も併せて提出する必要があります。
  • 雇入れ時の雇用契約書(写)
  • 登記簿謄本(写)
  • 就業規則(写)
  • 第1期支給対象期間内のタイムカードや賃金台帳 など

Q-8)入社時に障害者手帳を取得していなくても申請できますか?

A )申請できます。
入社当時に手帳が手元になくても申請可能です。しかし、書類を提出する際には障害者手帳が必要となるため、それまでに障害者手帳の発行や再申請をして頂く必要があります。

Q-9)「被保険者番号」とはなんですか?

A )被保険者番号とは、雇用保険加入時に割り振られる11桁の番号です。
現職時に転職活動を行い、就職した場合は原則として前職と同一の番号になります。また、新たに発番手続き中の場合は、「カタカナ氏名」「性別」「生年月日」のみの記載で申請できます。

Q-10)「事業所番号」が分からない場合はどうしたらいいですか?

A )「適用事業所台帳(雇用保険適用事業所設置届事業主控)」、または「雇用保険被保険者資格取得届等確認通知書(事業主通知用)」にて確認できます。
事業所番号は、「特定求職者雇用開発助成金対象労働者雇入登録届」を作成する際に必要になります。事業所番号は「4桁-6桁-1桁」の番号ですが、歴史が長い企業では番号の桁数が少ない場合があります。その際は空白を使い右詰めで記載しましょう。

まとめ:助成金の支給要件や申請方法に注意して活用する

高年齢者や障害者などの就職困難者を継続して雇用する企業を対象とした、「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」。「助成金額が大きい」「申請に必要な情報を確認することができれば、人事担当者が申請・手続きを進められる」などの理由から、障害者雇用を推進する企業向けの助成金の中でも多く利用されています。
利用する際は、「申請不可の場合の連絡がない」「支給期ごとに申請が必要」といった点に注意しましょう。

監修者 安原 徹 パーソルダイバース株式会社 法人マーケティンググループマネジャー

◆監修者 安原 徹
パーソルダイバース株式会社
法人マーケティンググループマネジャー

◆経歴
新卒でベンチャー系コールセンター会社に入社し、営業およびスーパーバイザー業務に従事。その後、株式会社エス・エム・エスにて看護師の人材紹介業務および医療・社会福祉法人の営業を担当。2016年にパーソルダイバース株式会社に入社し、キャリアアドバイザーおよびリクルーティングアドバイザー(RA)として勤務。関西エリアにおける精神障害のある方のご支援先の開拓に注力。2021年に関西RAマネジャーに着任。2023年より中部・西日本RAマネジャーを経て、現在は法人マーケティンググループのマネジャーとして勤務。