更新日:2026年2月9日/作成日:2019年10月17日

障害者雇用における賃金(給料)は、一般雇用との違いを踏まえたうえで、担当する業務内容や必要な配慮、人事評価の結果などを総合的に考慮して決定されます。この記事では、民間企業で雇用されている障害者の賃金の実態から、賃金決定の基本的な考え方、当社の事例などを踏まえ、障害者雇用における賃金のポイントを考えます。また最低賃金制度についても紹介しています。

目次

民間企業での障害者雇用の賃金(給料)は

はじめに、民間企業で雇用されている障害者の賃金について見ていきます。

民間企業における障害者雇用の賃金水準は、業務内容や雇用形態によって幅があります。厚生労働省の統計では、障害者の賃金は一般雇用と比べて低い傾向が示されています。

下の表は、厚生労働省が発表した「令和5年度障害者雇用実態調査」による、民間企業で雇用されている障害者の賃金を障害別にまとめたものです。()は前回(平成30年度)の結果です。

障害種別で最も平均賃金が高いのは身体障害者で235,000円、最も低いのは知的障害者で137,000円となっています。
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者の賃金の月額は男性が359,000円、女性が262,600円となっており、障害者の賃金とは差があることがわかります。

  身体障害者 知的障害者 精神障害者 発達障害者
平均賃金 235,000 137,000 149,000 130,000
  215,000円) 117,000円) 125,000円) 127,000円)
通常30時間以上 268,000円 157,000円 193,000円 155,000円
  248,000円) 137,000円) 189,000円) 164,000円)
20時間以上30時間 162,000円 111,000円 121,000円 107,000円
未満 86,000円) 82,000円) 74,000円) 76,000円)
20時間未満 107,000円 79,000円 71,000円 66,000
  67,000円) 51,000円) 51,000円) (48,000円)

(※一般労働者とは、全国及び都道府県別の賃金について、調査客体として抽出された78,623事業所の中から有効回答を得た55,490事業所のうち、10人以上の常用労働者を雇用する民間事業所(48,651事業所)ではたらく短時間労働者以外の一般労働者のこと)

雇用形態は、障害者の賃金に大きく影響していると考えられます。無期契約の正社員としてはたらく障害者は、身体障害者が53.2%、知的障害者が17.3%、精神障害者が29.5%となっています。平均賃金が最も高い身体障害者は正社員の割合が高くなっていますが、全体的に無期契約または有期契約の契約社員の比率のほうが高いことが、一般労働者との賃金差の要因の一つになっています。

障害者雇用と一般雇用の賃金(給料)の違い

一般雇用と障害者雇用の賃金体系を単純比較すると、一般労働(雇用)者の賃金の方が高い傾向があります。その背景には「障害者は賃金が上がりにくい業務に従事することが多い」「正社員比率が低く、有期契約者ではたらく人が多い」といった要因が挙げられます。

障害者の賃金は、原則として同一労働同一賃金が基準となり、同じ配置部署・職種であれば同じ賃金体系が適用されます。 ただし、同一職種であっても、障害の状況によって、以下のようなケースが生じる可能性があります。

  • 担当できる業務が限定される
  • 他の社員と比べて習熟に時間を要する
  • 体調管理や特性に応じて働き方の調整が必要になる

このような場合、賃金が一般雇用より低く設定されることもあります。しかし、長期的には職務遂行能力を伸ばし、昇給につながるよう支援していくことが重要です。

障害者の給料は安いというイメージについて

前述のとおり、障害者の賃金は一般労働者と比べて低い傾向があり、「給料が安い」というイメージにつながりやすいと言われています。この背景には、契約社員の割合が高いことに加えて、従事する業種や職種が偏りやすいことも影響しています。

たとえば、身体障害のある方は事務職、知的障害のある方は生産工程、精神障害のある方はサービス職、といったように職種の傾向があり、結果として職種ごとの賃金(給与)水準の違いがあります。

障害者の賃金や給与水準を決める条件とは

では、具体的にはどのように賃金を決定していくのでしょうか。

基本的な流れ

障害者雇用の賃金は、基本的には一般労働者と同じく、同一労働同一賃金です。企業の賃金体系を軸にしながら、労働条件や担当業務に応じ、適切な水準を設定していきます。

  1. 雇用形態
    正社員、嘱託、期間雇い、パートタイム雇用など
  2. 労働条件
    所定労働時間、業務内容、勤務場所、勤務体系、合理的配慮の提供内容、社会保険の加入、企業年金・退職金、賞与
  3. 最低賃金
    障害者雇用でも、最低賃金を遵守する必要がある

上記以外にも、すでに雇用している障害者との賃金や、他企業の障害者の賃金との均衡なども、賃金を決定する上では重要な目線となります。また、短期的および長期的な生産性の算出、生産性にあった査定や評価する仕組みなどにも取り組まなければならないでしょう。障害基礎年金など、就労以外の収入についても把握し、就労者が生計を立てていけるのかなども留意する必要があります。

このように、障害者の賃金体系はさまざまな側面から検討する必要があります。自社が持つ従来の賃金体系をもとに、上にあげた条件と照らし合わせて決定していくとよいでしょう。

処遇や評価に関して差別を防ぐため、参考となる記事を確認したい方はこちらもご覧ください。

求職者の志向性は

パーソルダイバースがはたらく障害者を対象に実施した独自調査では、障害者の「はたらく志向性」は多様化しており、「安定・定着」だけでなく「成長・活躍」を望む人も多いことが明らかになっています。特に障害者雇用枠では、この「成長・活躍志向」が相対的に高く、成長を志向する人ほど自身が成長できる環境整備や、成果に応じた適正な賃金を求める傾向が強いことが浮き彫りになっています。
こうした志向の実態を踏まえると、障害者の採用力を高めるうえでも、長期的な就業継続と活躍を見据えた賃金制度の設計を検討していくことが重要だと言えます。

事例:パーソルダイバースの賃金体系と人事評価制度について

ここで、当社の賃金体系と、その基となる人事評価制度について、少しだけご紹介します。
当社パーソルダイバースはパーソルグループの特例子会社として、障害者のある人もはたらきやすい環境づくりの一環として、当社の事業内容や社員特性に合わせた独自の人事評価制度・賃金体系を、ミッショングレード制をベースにし設計しています。

“グレード”とは社員に求める人材要件(役職・処遇・はたらき方)を定義したものです。
従業員の職務遂行能力によって、大きくは「幅広い基幹業務や管理的業務を担当する層」「特定分野の基幹業務や反復定型的な作業が必要な層」にカテゴライズしています。


職務は「PG/PSGグレード」「BG/BSGグレード」というコースを用意しています。障害の有無を問わず一般人材として処遇されスキルアップ・企業貢献していきたい人は「PG/PSGグレード」コース、特定分野の基幹業務を担当、または反復定型を中心に能力発揮範囲を拡大していきたい人は「BG/BSGグレード」で採用しています。

どの職群でも、グレードにあわせて基本給・手当が設計され、成果と業績に基づいた賞与が支給されます。半期に一度、成果や行動に関する評価を行い、グレード・賃金が決定します。なお、評価は各グレードやお任せする職務内容に応じて相対評価または絶対評価の2つを使い分けています。基幹業務や管理的業務を担当する層には同じグレード内での相対評価を用い、業務の切出し・創出が必要な層は主に、就業基本姿勢や対人行動・業務遂行力といった能力伸長度合いを絶対評価を用いて評価しています。

賃金の額はグレードによって差がありますが、戦略的人材から配慮が必要な人材まで多様な障害者にマッチする制度として設計されていること、職務遂行能力の変化や業績評価および本人の意思により職群間の相互異動ができるようになっているのが特徴です。

当社が転職を支援する障害者からは、企業を選ぶ際に「雇用初期の給与の高さより、昇給の可能性や人事評価制度があるかを重視している」という声を多く耳にします。今後、多様な障害者から選ばれるためには、賃金の額だけでなく、柔軟な人事評価制度を設計できるかがポイントではないかと考えています。

当社が転職を支援する障害者からは、企業を選ぶ際に「雇用初期の給与の高さより、昇給の可能性や人事評価制度があるかを重視している」という声を多く耳にします。今後、多様な障害者から選ばれるためには、賃金の額だけでなく、柔軟な人事評価制度を設計できるかがポイントではないかと考えています。

障害者雇用の最低賃金は

一般雇用の賃金を考える上で「最低賃金」の目安は欠かせない要件の一つとなっていますが、それは障害者雇用においても同じことが言えます。最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、事業主はその金額以上の賃金を労働者に支払わなくてはならない制度です。雇用の対象者が障害者である場合でも、企業と「雇用関係」が生じていれば最低賃金制度が適用されます。

最低賃金には、各都道府県に1つずつ定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。地域別最低賃金及び特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、事業主は高い方の最低賃金額以上を支払わなければなりません。

1. 最低賃金の減額を許可される特例制度

障害者を雇用する場合でも最低賃金制度が適用されることをお伝えしましたが、障害の程度などにより最低賃金の減額を許可されるケースもあります。それは最低賃金法7条に基づく「最低賃金額の減額特例措置」です。身体または精神の障害によって一般の労働者より労働能力が著しく異なる障害者が、最低賃金を一律に適用することで雇用機会を狭めてしまう場合に、都道府県労働局長の許可により、最低賃金法の賃金より低い賃金で雇用することが認められるという制度です。

次の1~5に当てはまる労働者は、企業が都道府県労働局長の許可を受けることを条件に、最低賃金の減額の特例が認められます。

  1. 精神または身体の障害により著しく労働能力が低い方
  2. 試用期間中の方
  3. 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
  4. 軽易な業務に従事する方
  5. 断続的労働に従事する方

特例制度は、全ての障害者に適用されるわけではありません。障害者一人ひとりの労働能力や職務状況によって個別で判断する必要があります。許可には有効期限があり、期限内に労働能力が向上しないなどの理由で許可を延長したい場合は、再度労働局に申請します。

2. 申請の条件や注意点

最低賃金額の減額特例許可を申請する場合は、所轄の労働基準監督署経由で都道府県労働基準局長に申請書を提出します。厚生労働省のウェブサイトからも申請書類をダウンロードすることが可能です。申請書には障害や、業務の種類、特例許可が必要な理由を詳細に記入する必要があります。申請する場合は以下について整理しておきましょう。

<申請の条件や注意点>

  • 対象となる労働者の障害は、業務遂行にあたって
    直接的に著しい支障をきたしているか否か
  • 障害に対する客観的な資料はあるか
    (障害者手帳や、障害特性に関する書類のコピー)
  • 賃金の減額率は、労働能率の程度に応じ、
    職務内容などを勘案したものになっているか

3. 減額率や賃金額の設定方法

障害者雇用における減額率や支払おうとする賃金額の設定は、減額できる率の上限となる数値の算出、減額率の設定、支払おうとする賃金額の設定という順序で行うことができます。ここでは減額率と賃金額の算出について詳しく紹介します。

減額できる率の上限となる数値の算出

減額できる率の上限となる数値を算出するには、まず、比較対象となる労働者の選定が必要です。比較対象労働者の選定方法は、同じ事業所内ではたらいており、減額対象労働者と同一または類似した業務に従事している、かつ、最低賃金と同程度以上の賃金が支払われている方が比較対象者となります。また、同条件の比較対象者が複数名いる場合は、最低位の能力の方が比較対象者となります。

上記の様に比較対象者を選出後、減額対象者と比較対象者の労働能率を比較し、減額できる率の上限となる数値を算出します。算出例は、以下の通りです。

【減額できる率の上限となる数値の算出例】
比較対象労働者の労働率を100分の100とした場合、減額対象労働者の労働能率が100分の70であるときは、減額できる率の上限は30.0%となる。
  • 100.0-70.0=30.0
    ※小数点以下が生じた場合は、小数点第2位以下を切り捨てる。

減額率の設定方法

減額できる率の上限が算出されたら、減額対象労働者の職務内容、成果、能力、経験などを総合的に勘案して減額率を定めます。
※総合して勘案した結果でも、減額できる率の上限を上回る減額率を定めることは出来ません。

支払おうとする賃金額の設定方法

最低賃金と上で算出した減額率から、支払う賃金額を設定します。賃金額の設定例は次の通りです。

【支払おうとする賃金額の設定例】
  • 最低賃金額が1,118円、減額率が20%の場合
  1. 減額する額の算出:1,118円×20%=223.6円
    ※1円未満の端数は、切上げる事で減額率の20%を超えてしまうため、切り捨てする必要がある
  2. 支払おうとする賃金額の算出:1,118円-223円=895 円

上記の賃金額の設定は最低賃金法第4条第3項に規定される賃金(臨時に支払われる賃金及び一月を超える期間ごとに支払われる賃金、時間外手当、休日労働手当、深夜手当、精皆勤手当、家族手当など)は算入できないので注意が必要です。

まとめ:障害者に選ばれる賃金体系・評価制度を用意する

障害者の賃金も一般雇用と同様、人事評価制度や賃金体系、労働条件に基づき決定します。障害者が行っている業務状況や成果を算定する事も忘れないようにします。また、最低賃金の減額が許可される特例制度など、障害者の賃金の決定に必要な制度なども事前に把握しておきましょう。

賃金を決める上で重要なのが人事評価制度になります。配慮を得ながら安定的に長くはたらいていきたい人や、能力を活かして活躍していきたい人など、様々な障害者の目標や成果に応じて評価し、給与も連動する制度や教育研修の機会があることは、雇用後の定着や戦力化にもつながります。障害者に選ばれる会社、定着・活躍を促すための人事評価制度と、それにあわせた賃金設計を検討してみてはいかがでしょうか。

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監修者 パーソルダイバース株式会社 法人マーケティンググループマネジャー  安原 徹

パーソルダイバース株式会社
法人マーケティンググループマネジャー
安原 徹

◆経歴 

新卒でベンチャー系コールセンター会社に入社し、営業およびスーパーバイザー業務に従事。その後、株式会社エス・エム・エスにて看護師の人材紹介業務および医療・社会福祉法人の営業を担当。2016年にパーソルダイバース株式会社に入社し、キャリアアドバイザーおよびリクルーティングアドバイザー(RA)として勤務。関西エリアにおける精神障害のある方のご支援先の開拓に注力。2021年に関西RAマネジャーに着任。2023年より中部・西日本RAマネジャーを経て、現在は法人マーケティンググループのマネジャーとして勤務。